新ブランド「INZONE」の特徴と狙いとは

ソニーの「PCゲーマー向け」ゲーミングギアが登場

#eスポーツ

2022年6月、ソニーのゲーミングギア新ブランド「INZONE(インゾーン)」が誕生しました。

 

 

ソニーと言えばテレビやオーディオ機器、そして何よりも「PlayStation(R)5」などの家庭用ゲーム機で知られるメーカーです。しかし、今回発表された「INZONE」ではPCゲームユーザーを明確なターゲットとして打ち出しており、新たなマーケットの開拓を目指しています。

 

「大手家庭用ゲーム機メーカーがPCゲーム市場へ参入」と大きな話題を呼んだこの新ブランドはどのような経緯で生まれたのか。ソニー広報への取材から「INZONE」の特徴や背景に迫ります。

 

知見を生かし、更なる相乗効果を

まず伺ったのは新ブランド「INZONE」発足の経緯について。以下のような回答が得られました。

 

『全体としては、ゲームの世界がコンソールからeスポーツのようにイベント化して間口が広がったと認識しています。テクノロジーの進化に伴い、クリエイターの創造性やコンテンツの表現力も進化し、よりリッチなゲーム体験を届けることが可能になりました。その中でソニーの独自技術を搭載し高画質・高音質を追求したINZONEの参入は、 ゲームコンテンツの魅力やプレイヤーのパフォーマンスを最大化でき、ゲーミングカルチャーへ貢献ができるものと考えました』

 

ゲーム業界全体の流れを汲み生まれた「INZONE」。『プレイヤーの感覚を研ぎ澄まし、最大限のパフォーマンスを発揮するためのゲーミングギアを充実させていくことで、新たな没入と勝利の体験を提供します。手持ちのゲームシステムのアップグレードを検討しているプレイヤーにとって新たな選択肢となります』とのコメントの通り、ハイパフォーマンスに繋げるためのハイエンドなデバイスとして位置付けられています。

 

その狙いは『一流のアスリートが極限の集中状態に入り高いパフォーマンスを発揮する「ゾーンに入る(in the zone)」という表現から着想を得た』というブランド名「INZONE」のネーミングにも込められており、『ゲームがスポーツのように自己表現の場として認識されるようになっている中、よりゲームに集中・没入し最高のプレイパフォーマンスを発揮するのを支援したい』という想いから名付けられています。

 

続いて伺ったのは、ゲーミングモニター2機種にヘッドセット3機種という初期ラインナップについて。こちらはソニーが培ってきた技術を生かせる分野であることが理由に挙げられると、以下のような回答がありました。

 

 

『モニターについては、ゲーム機器のハードウェアの進化により、グラフィック品質が大幅に向上しフレームレートも高くなりよりリアリティのある映像が実現されるようになりました。ここでソニーがディスプレイ機器で培った技術を活用することで、より臨場感のある滑らかな映像でのゲームプレイ体験を提供できると考えました』

 

『ヘッドセットについては、市場に立体音響ゲームも数多く登場してきており、クリエイターの意図した音をよりリアルに臨場感高く再現するゲーム用ヘッドセット向け立体音響技術を開発しました。加えて、音楽用ヘッドホンで培ったノイズキャンセリング技術や長時間装着の為の快適設計もゲームギアとして活用できると考えました』

 

これまで多彩な製品を手掛けてきたソニーのノウハウが詰め込まれた「INZONE」ですが、『プロ仕様のゲーミングモニターやヘッドセットの商品開発で得た知見を、家庭用テレビやヘッドホンにいかすことができれば、相乗効果になると考えます』との回答もあり、まさに「ソニーならでは」の発展を見込んでいます。

 

ゲーム文化の更なる発展を支援し、ユーザーへ訴求していく

 

もちろんPCだけでなくコンシューマ機にも強みを持つソニーならではの機能も搭載されています。それが「PlayStation 5」との連携機能です。

 

モニターは、オートHDRトーンマッピング(モニターの特性に合わせたHDR設定の自動調整)やコンテンツ連動画質モード(モニターがPS5から出力するコンテンツを判別し画質モードを自動で切り替える機能)により、映像に合わせた画質でゲームを楽しめる仕組みとなっています。また、ヘッドセットは立体音響表現を追求した音づくりを施したPS5の「Tempest 3Dオーディオ」の臨場感あふれるゲームサウンドが体験可能。

 

そしてラインナップの中には「Perfect for PlayStation 5」対象モデルが設定されており、モニターの『INZONE M9』とヘッドセットの『INZONE H9』と『INZONE H7』が該当します。モニターでは4K/120Hzの入力に対応した臨場感のある滑らかな映像でゲームプレイ体験が楽しめ、ヘッドセットでは設定のステータスを画面上の表示で視覚的に確認できるほか、本体のボタンでゲームとボイスチャットの音量バランスを簡単に操作できます。

 

この連携機能「Perfect for PlayStation 5」は2021年以降に発売された4K有機EL/液晶テレビ「ブラビア」にも搭載されており、ソニー製品を使用して家庭用ゲームをプレイするユーザーにとって快適な環境づくりをサポートしています。

 

気になるのは今後のラインナップですが、当該の質問については『今後の商品展開についてのコメントは差し控えさせていただきます』と前置きした上で『これからもゲーマーのニーズにこたえるゲーミングギアを検討してまいります』と、更なる商品展開の可能性も感じられる回答を頂きました。

 

家庭用ゲーム機ユーザーにとっては「Perfect for PlayStation 5」機能が多いに活用できる「INZONE」は大きな魅力がありますが、PCゲームでも「ゲーミングデバイスのメーカーを統一したい」と考えるユーザーは多いと考えられ、今後の多方面での展開にも期待がかかります。

 

ゲーミングデバイスとしては後発ブランドという立ち位置になる「INZONE」ですが、ターゲット層にリーチしていくための戦略も始まっており、世界的なeスポーツリーグであるEvolution Championship Series(Evo)2022/2023、PGL DOTA2 Arlington Major 2022、VALORANT Champions Tourとのスポンサーシップ契約を締結しています。

 

マーケティングについても『INZONEは、プレイヤーの勝利とゲーム文化の更なる発展を支援します。オンラインでの周知や、インフルエンサーを通じたコミュニケーションにも取り組みます。また、大きなゲームイベントへの協賛や、会場にブースを設置して来場者に実際にギアを体験してもらうことも実施しています』と、新たなターゲットへ訴求する施策が進められている模様です。

 

まとめ

 

近年はPCと家庭用ゲーム機でマルチ展開されるゲームも多く、PCゲームを家庭用ゲーム機のコントローラーを使用してプレイするユーザーも珍しくありません。これまで家庭用ゲーム機の大手として業界を牽引してきたソニーの新ブランド「INZONE」の登場は、マーケットのミックス化が更に進んでいく一助となるかも知れません。

 

 

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