日本MOBAシーン拡大へ

Switch版リリース開始の『Pokémon UNITE』にかかる期待

#eスポーツ

2021年、Nintendo Switch向けタイトル『Pokémon UNITE(ポケモンユナイト)』がリリース開始されました。本作は世界的な人気を誇るIP「ポケモン」のキャラクターが登場するチーム戦略バトルゲームであり、ゲームジャンルとしては「MOBA」に位置づけられます。

 

今回は新たなブームの予感を到来させると『ポケモンユナイト』と、日本ではまだ馴染みの薄いMOBAジャンルの仕組みについて紹介いたします。

 

MOBAの特徴と「将棋のような」難しさ

まず最初に「MOBA」ジャンルについて簡単に説明いたします。

 

MOBAとは「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ」の略語であり、その名の通り複数のプレイヤーがリアルタイムで対戦するゲームジャンルを指す言葉です。細かなゲームルールはタイトルによって異なりますが、その殆どは2チームに分かれてマップ上を攻め合いながら「最終的に敵陣まで攻め入って相手の拠点を破壊すること」を勝利条件としています。

 

対戦ゲームではあるので当然相手プレイヤーとのバトルは存在しますが、敵を倒したことによって得られる優位性が決して勝敗には直結しないのが格闘ゲームやシューティングゲームとの違いであり、その分ゲーム理解度や戦略性によって戦況が大きく左右されることがMOBAの特徴です。

 

このゲーム性によって生み出される奥深い駆け引きや多彩な試合展開が多くのプレイヤーに愛されており、世界的なeスポーツ人気を誇る『League of Legends(LoL)』や『Dota 2』は同ジャンルの代表的なタイトルとして数多くのユーザーを獲得しています。『LoL』の競技人口が1億人にも上るという計算からも、その人気が伺えます。

 

ただ、日本ではこれらのタイトルも海外ほど圧倒的な人気を博しているとは言えません。その原因には様々な理由が考えられていますが、日本ではソロプレイ向けのゲーム文化が盛んであることや、多数の競合タイトルがリリースされていることで「ジャンルそのものに馴染みが薄い」という人も少なくないのではないでしょうか。人気が得られていないのではなく、知名度が足りていないと言い換えても良いでしょう。

 

そして、馴染みが薄い人にとって大きなハードルとなるのが「覚えなければいけないことの多さ」です。駒の動かし方を知らずに将棋を楽しむのが難しいように、MOBAも最初にキャラクターの特徴や戦術のセオリーを学ぶ必要があるのです。将棋なら初心者同士で手軽にプレイしてみることもできますが、5vs5や4vs4など多人数でのプレイが前提のMOBAではそれも難しいのが現状です。

 

 

将棋もMOBAも駆け引きや戦略が魅力であり、複雑なルールを理解すれば楽しめるものの、知らなければ全くその凄さが伝わらないという点では似ています。「日本でMOBAが海外ほど浸透していない」のは「海外で将棋が日本ほど浸透していない」状況をイメージして貰えれば、理解しやすくなるのではないでしょうか。

 

『ポケモンユナイト』は原作を巧みに活用したデザインに

 

冒頭でも説明した通りに『ポケモンユナイト』もMOBAであり、ここまで紹介したタイトルと同様に各チーム5人のプレイヤーによるチーム戦です。それぞれが特徴の異なるポケモンを操り、制限時間内に相手陣地へ攻め入ることで「ゴール」した得点を競います。

 

本作は株式会社ポケモンとTiMi Studioによる共同開発タイトルですが、このTiMi Studioは前述の『LoL』を開発しているRiot Gamesの親会社であるテンセントゲームズの傘下なので、類似した内容となるのも頷ける背景です。

 

では、やはり日本でも『ポケモンユナイト』が人気を獲得するのは難しいのかと言えば、実はそうでもないのかも知れません。日本での『ポケモン』シリーズはもはや説明不要なほどの知名度を誇るタイトルであり、作品の発表時から大きな話題を呼びました。普及に向けての課題のひとつである「知名度が足りない」部分をクリアして、既に注目を集めることには成功しているのです。

 

これだけでは「あくまでポケモンが有名なだけであって、MOBAの親しみやすさには繋がらないのでは?」と思われるかもしれません。ですが、本作はクリアを目指して冒険していくRPG作品である原作シリーズの「ポケモンを育てて強くする」要素を上手くMOBAのゲーム性にアレンジしており、異なるジャンルから上手く共通点を作り出している構造が特徴的です。

 

MOBAでは自分の操作するキャラを試合中にどんどん強化していくことが重要なのですが、これは「レベルを上げたポケモンの方がバトルに強い」仕組みの原作をプレイした人にとっては理解しやすいでしょう。序盤よりも終盤戦で本領を発揮する性能を持っているキャラも、レベルアップによって進化するポケモンを採用することで「進化する前より、進化した後のポケモンの方が強い」という仕組みと共通点を持たせています。

 

『LoL』や『Dota2』と比較するとマップが非常にコンパクトであったり、制限時間制によって1試合が短時間に収まるように設計されていたりと手軽にプレイしやすい環境で初心者を取り込みやすいデザインも魅力です。加えて、手軽さという観点ではMOBAジャンルでは珍しいコンシューマ機でのリリースとなったことも注目です。

 

代表的なMOBAタイトルの『LoL』や『Dota2』はPCゲームであり、他にもモバイル向けの『#コンパス』や、アーケードゲームの『Wonderland Wars』や『LORD of VERMILION III』といったタイトルは国内でもプレイされてきました。

 

対してコンシューマ機ではゲームパット、いわゆるコントローラーでの操作がMOBAでは難しいことなどからあまりターゲットとされて来ませんでしたが、『ポケモンユナイト』はモバイルとニンテンドースイッチのマルチタイトルとなっています。アシスト機能で操作しやすいように工夫されており、日本では特にシェア率の高いコンシューマ機でプレイ出来るという意味でも「親しみやすい」タイトルと言えるでしょう。

 

 

 

『ポケモンユナイト』から他のMOBAを巻き込んだブームに出来るか

 

『ポケモンユナイト』は2021年7月に先行してSwitch版がリリースされましたが、既に数多くのユーザーを獲得しており上々のスタートを切っています。しかし、このタイトルがそのままeスポーツタイトルとしての地位を確立していくかは不透明です。カジュアルで気楽にプレイ出来るように設計されていることの裏返しとして、まだ競技として腕を競うには発展を期待したい部分が多いからです。

 

試合展開やバランス面などは、現時点ではキャラクターの種類がまだ多くないので同じような展開になりがちであり、強いキャラも限られている状況です。試合時間が短いために終盤のワンチャンスで試合全体が決してしまうことや、アイテムの性能がレベルアップで変化することの不平等さが、戦略的な駆け引きを好むプレイヤーにとっては大味に感じられるという意見もあります。

 

とは言え、『ポケモンユナイト』はまだまだ始まったばかり。今後は観戦機能やキャラクターの追加、そしてバランス調整のアップデートにモバイル版のリリースを経て更に盛り上がっていくことが予想されます。コミュニティ大会が開催されるようになれば、チームとして活動するプレイヤーも増えていくのではないでしょうか。

 

何よりも本作の登場で、今まで全くMOBAについて知らなかったという人にもある程度のゲーム性や勝敗の付け方、戦況の優劣というプレイと観戦に役立つポイントへの認知が高まったことは、日本MOBA競技シーンにとっては非常に大きいと考えられます。

 

『LoL』でも『Dota2』でも日本代表は国際大会で結果を残していますがまだまだスポットが当たるケースは少なく、競技人口の増加によってそのレベルと地位が向上していくことが望まれています。世界的に人気で賞金規模も大きく、eスポーツの中でも特に夢のあるジャンルとされているMOBA。国民的キャラクターであるポケモンをきっかけに、国内で大きなムーブメントを作っていくことができるでしょうか。今後の展開に注目です。

 

 

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