ゲームを用いた対戦競技であるeスポーツと、実際のスポーツ。仮想と現実という異なる舞台での競技ではありますが、近年はプロスポーツチームのeスポーツ参入も多くなり、親和性が見いだされつつあります。
そんな中でも日本プロ野球球団である福岡ソフトバンクホークスは、日本野球機構(以下、NPB)が主催するeスポーツリーグへの参加だけに留まらず、複数のタイトルに跨るゲーミングチーム「福岡ソフトバンクホークス ゲーミング」(以下、SHG)を設立し、新たな挑戦を続けています。
その活動には一体どのような狙いがあるのか、福岡ソフトバンクホークスのeスポーツ推進課に勤め、自身もプレイヤーとして活動している三好航太郎様にお話を伺いました。
──本日はよろしくお願いいたします。
三好航太郎氏(以下、三好):よろしくお願いいたします。
──早速ですが、プロ野球チームである福岡ソフトバンクホークス(以下、ホークス)がeスポーツチームを発足させたきっかけや、その狙いについて教えて頂けますか。
三好:前提として、eスポーツは視聴のメインとなる層が10代から20代前半だという事実があります。プロ野球のファン層が徐々に高齢化していることはホークスとしても感じており、若年層向けのブランディングとしてeスポーツを活用できるのではないか、と考えたことがきっかけになります。またゲームという題材も、野球とは違った角度からのファン獲得へのアプローチとして良いのではないかという理由もあります。
──現在はeスポーツに参入するプロスポーツチームも多いですが、その中でもホークスはNPB主催のタイトル以外にも、SHGとして『League of Legends』(以下、『LoL』)と『シャドウバース』というタイトルに挑戦されています。なぜこれらのタイトルが選ばれたのでしょうか。
三好:『LoL』は世界的に人気のタイトルであり、日本で結果を残せば世界へと進出していけるという点が大きな魅力です。というのも、ソフトバンクホークス創設当初から「めざせ世界一!」を球団スローガンに掲げており、現在は世界一のエンターテイメント企業になれるよう野球以外にも様々な取り組みを行っています。その中でeスポーツチームとして世界的に人気のタイトルに挑戦することには大きな意義があり、国内で大きな人気を誇っている『シャドウバース』も同様です。
──これまでにNPB主催のリーグに参加した『実況パワフルプロ野球』と『スプラトゥーン2』の2タイトルを含め、計4タイトルでの活動を行ってきています。それぞれの部門について、現状での活動をどのように評価されていますか?
三好:やはりどのタイトルでも、プロシーンの厳しさを感じているのが正直な所です。ホークスはプロ野球では常に日本一を争う立場にある球団ですから、これまでの各部門は満足いく成績とは言えません。
──特に『LoL』と『シャドウバース』では既存のリーグに参戦するという形となりました。その難しさはあるかと思います。
三好:『パワプロ』では使用できる選手が強力ですし、『スプラトゥーン2』でも実績あるプレイヤーを獲得出来たことを考えると、もっと良い成績を残せたはずだという想いはあります。逆に、既に発足しているリーグに途中から参戦したタイトルでは、トップレベルの選手に立ち向かうことになるので難しさは想定していました。
──反響などは如何でしょう。
三好:印象的だったのは、『LoL』への参戦を発表した時ですね。SNS上でも多くのリアクションを頂きましたし、弊社のeスポーツサイトはアクセスが集中したことでサーバーダウンしてしまいました。これは社内のシステム管理部署からも驚いたという声が聞かれました。
──ちなみに、今後取り扱うタイトルを増やす可能性はあるのでしょうか?
三好:今は、既に設立している部門でしっかりとした結果を残す段階だと考えています。ですから現時点ではタイトル増というのは考えていませんが、将来的にホークスのブランド価値を高められるような、世界へ進出できるタイトルが現れた場合には部門が増えることもあるかもしれません。
──なるほど。では、その現在ある部門の強化についてはどのようなビジョンをお持ちですか?
三好:チームを強化する、という観点においてはプロ野球と同じで「自前の選手を育成する」「選手を補強する」「環境を整備する」の3つのポイントがあると考えています。特にホークスはプロ野球12球団の中でもそうしたノウハウを持っているチームだと自負しておりますので、施設をそのまま活用できるケースは少ないと思いますが、野球で培ったノウハウをeスポーツにも活かせると感じています。
──少し話題を広げまして、「eスポーツ」というコンテンツの現状と今後にはどのような展望を持たれていますか?
三好:そうですね、eスポーツ界全てを展望することは出来ませんが、ひとつ感じていることはモバイルの成長です。現状eスポーツタイトルで使用されるデバイスはPCが多いですが、日本ではモバイルの市場の方が大きいですし、中国でも今はモバイルの面が非常に伸びています。
今後はモバイルもeスポーツシーンの主流になってくると思いますし、5Gの高速通信も利用可能になります。そうなれば、通信会社として更なる親和性も発揮できるのではないでしょうか。
──では、SHGというeスポーツチームが活躍することで、球団にどのように還元されていくと考えていますか?
三好:SHGは野球チームそのものへと言うよりも、我々の「世界一のエンターテイメント企業へ」という理念に基づいた活動への還元が起こればと思います。
──ちなみに、そのエンターテイメント企業としての取り組みではeスポーツ以外にどのような活動を行っているのでしょうか?
三好:既に行っている取り組みでは、ホークスの本拠地である福岡PayPayドームの隣に「E・ZO FUKUOKA(イーゾフクオカ)」という施設を作っている最中です。施設内にはアミューズメントパークや、ミュージアムなどが入る予定で、ホークスファンや九州にお住いの皆様はもちろん、インバウンドの方も楽しめるような施策を考えています。
──本日は、ありがとうございました。
三好:ありがとうございました。
掲載日:2020年5月12日