日本におけるeスポーツの波は徐々に広がりを見せています。全国大会やIPホルダー主催の公式大会に限らず、ゲームイベントと称しているものも含め、首都圏と地方で様々なeスポーツのイベントがみられるようになっています。中でも刮目すべきは、地方の大会やコミュニティイベントです。
そこで今回は先日行われた二つのイベントを紹介します。いずれも地方で開催された大型のイベントですが、会場は自治体のホールやイベントスペースではなく、意外にも温泉施設に観光スポットだったのです。
福島ゲーミングDAY
<開催日>
2019年5月22日
<開催場所>
福島県eスポーツ協会
<開催場所>
磐梯熱海温泉 ホテル華の湯
<協賛企業>
会津中央乳業株式会社、会津農匠株式会社、医療法人 佐原病院、学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ A&D国際アート&デザイン大学校、株式会社大関警備、株式会社河京、株式会社キノコハウス、株式会社幸楽苑ホールディングス、株式会社バースランド、株式会社福島情報処理センター、磐梯熱海観光協会、有限会社デンヤ・クリエイティブ・ワークス、有限会社マダム・タカコ・カンパニー
<後援企業>
福島県県中地方振興局
福島民友新聞社
福島ゲーミングDAYは、福島県の特産品や温泉を楽しめる“リゾート型ゲーミングイベント”です。人気タイトルである『ストリートファイターV AE』『GUILTY GEAR Xrd REV 2』『餓狼 MARK OF THE WOLVES』『ぷよぷよeスポーツ』の大会が大規模な環境で実施されました。他にも『PUBG MOBILE』の交流会、来場者が自由に持ち込んだゲームで遊べるゲーミングパーティも開催されました。会場である『ホテル華の湯』を利用した人であれば誰でも入場可能で、参加者は400人を超えたとも言われています。来場者は無料で温泉に入浴できるということで、地域に特化したもう一つ他の楽しみが提供され、ここならではのイベントを楽しんでいるようでした。
夢みなとeスポーツDAY
<開催日>
2019年10月13日
<開催場所>
SANKO夢みなとタワー
鳥取県境港市竹内団地255-3
<主催>
鳥取県eスポーツ協会
<協賛企業>
株式会社MagicPlus、リユースショップ開放倉庫、ローソン山陰、焼肉かたおか(株式会社カタセイ)、C4 LAN
<後援企業>
鳥取県、境港市、山陰中央テレビジョン放送株式会社
ここでも複数のタイトルで大会が開催され、大きな反響を呼びました。
上記二つのイベントの特徴は、協賛企業が地元の企業を中心に構成されているということでしょう。会場も通常ゲームイベントが行われるような施設ではなく、その場所自体をゲームイベントと同時に認知してもらいたいという意図が窺えます。
ここで、首都圏のゲームイベントを想像してみてください。競技性に重点を置いた大規模なイベントやIPホルダーによる公式大会といった形で開催されるケースがほとんどです。『東京ゲームショウ2019』でも複数のブースで大会が開催されましたが、主催や協賛企業を見ると、一度は名前を耳にしたことのある企業がずらりと並んでいます。こういった大会は配信プラットフォームで放映されることもあり、配信チャンネルでは数千人〜数万人単位で視聴されるものもあるようです。
首都圏で開催される大規模なイベントや大会という場は、日本のeスポーツ選手が世界で戦うために非常に大切なものであることは間違いないでしょう。しかし、海外に対して遅れていると言われている日本において、eスポーツを「流行」ではなく「根付かせる」には地方のコミュニティイベントの継続・発展は不可欠であり、地元企業の理解と協力無くしては難しくなってきます。
ゲームイベントや大会というと、eスポーツ選手や招待された有名人が脚光を浴び、大会に出場するというようなイメージを受けますが、地方のコミュニティイベントには地元や隣県のプレイヤーが集まるなど、参加するにあたって敷居が比較的低く、気軽に足を運び、参加する人も増えていくことが予測されます。イベントに地元の企業が協賛や協力をすることで、首都圏ではあまり見かけない、地域の一体感を生み出しているようにも感じられます。
Twitterで『eスポーツ協会』と検索すると、上記のように協会(任意団体)が主導で大小様々なイベントを手掛けているアカウントもあれば、全く動いていないものもあります。eスポーツという言葉を何とか形にしようという動きにはまだまだバラツキがあるようですが、今後も各地でこのような地域の特徴を活かしたイベントが開催されていくでしょう。
eスポーツを日本で発展させていくには、一般企業のサポートがどうしても必要です。全国各地のゲームプレイヤーが地域で開催されるイベントに積極的に参加することで、協賛企業や協力企業、後援企業はeスポーツに強い関心を示すはずです。
ゲームメーカーやデバイスメーカー以外の企業がイベントで得られる高揚感や様々な効果を知り、競技としてのeスポーツやユーザのコミュニティへの理解を深め、そこに集うプレイヤーを認知し、eスポーツ界を後押しするようになる。それがこの日本に新たな潮流を生み、またそこに何が必要なのかを発信することとなるでしょう。