「eスポーツ市場」を構成する5項目

7月末に行われたFortnite World Cupにおいて、弱冠16歳の少年が、一度の大会で一人のプレイヤーが獲得する賞金としては史上最高となる300万ドルを獲得したことが話題となりました。eスポーツ市場の成長性を象徴するできことだったといえます。

 

この機会に改めて、eスポーツが「どうやって稼いでいるのか」を確認することとしましょう。下記の画像はオランダの調査会社、ニューズー社の発表している「2019年 eスポーツ業界の収益源(全世界)」です。項目ごとの棒グラフが5本並んでおり、合計すると11億ドルになります。それぞれについて見ていきましょう。

 

データ出典:Newzoo: Global Esports Economy Will Top $1 Billion for the First Time in 2019

 

最も重要な収益はやはり「スポンサー料」で、これが4億5,600万ドルで全体の4割以上を占めます。また成長率も34.3%と非常に高く、新規にスポンサーとしてeスポーツに参入する企業が続々登場していることをうかがわせます。これまでの記事で見てきたとおり、eスポーツのスポンサーはゲームやPC関連企業ばかりでなく、自動車や飲料メーカー、アパレルブランドなど、「若者」に対してブランディングしたいあらゆる企業が登場しています。

 

次に大きいのは「放映権料」で、これが2億5,100万ドルと2割強を占めます。放映権といえば、従来のスポーツですと大手テレビ局などが獲得するものですが、eスポーツにおいてはやはり「動画配信プラットフォーム」の存在感が大きいといえます。たとえば、アマゾンが運営するゲーム動画配信専門プラットフォームとして有名なTwitchは、9,000万ドルで世界最大のeスポーツリーグのひとつである「オーバーウオッチ・リーグ」の放映権を購入しました。

 

放映権料については、41.8%とこの中で最も成長率が高いことにも注目すべきです。これはeスポーツの成長にあわせて、その主要な放送媒体である動画配信プラットフォームの勢いが増していることを示しているのではないでしょうか。

 

3番目は「広告料」で、1億8,900万ドルです。スポンサーが大会やチーム・プレイヤーを利用した総合的なブランディングだとすれば、広告は比較的限定的な場所・時間で企業から消費者にメッセージを伝えるものといえるでしょう。eスポーツではスポンサーとあわせて広告の規模も大きく成長しており、スポンサーと広告を二つあわせればeスポーツ市場の65%を占めることになります。

 

 

4番目は「チケット・グッズ販売」で、1億300万ドルです。他の項目に比べて金額は見劣りしますが、「eスポーツ市場」において唯一、消費者であるファンが直接お金を出す項目です。成長率も22.4%と高く、入場料を払って会場に足を運んだり選手のグッズを買ったりするような熱心なeスポーツファンがどれだけ増えているかということを見る上で重要な指標といえます。

 

5番目はゲーム会社に対する「ゲーム使用料」で、9,500万ドルです。大会の主催者などがゲームの権利者に対してライセンス料として支払うお金です。このライセンスの考え方は難しいところがあり、「使用料」とはいえ、大会自体がゲームの「広告」になるという側面がありますので、ゲーム会社からすれば無料で許諾することも可能です。今後もゲーム会社と大会主催者によってさまざまな取り決めが行われるでしょうから、この金額の増減でeスポーツ市場の様子を伺うのは難しそうです。

 

以上の5項目が「eスポーツ市場」を構成していますが、注意したいのは、ここでいう「eスポーツ市場」があくまで、eスポーツ大会開催とその放送に関わることに限定されているという点です。ゲームとしてのeスポーツタイトルそのものの売上や、YouTubeやTwitchで人気プレイヤーが得る広告収入、また視聴者がプレイヤーに「応援」として「寄付」したお金、つまりいわゆる投げ銭(これも全世界で相当な金額になるといわれています)などは、ここでいう「eスポーツ市場」に含まれていません。こういった分野も「eスポーツ市場」とともに今後大きく成長していくことが予想されるため、広い意味での「eスポーツ市場」全体の把握のためには注目しておくべきでしょう。