eスポーツにみる人間とAIの共存

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2010年代は人工知能がさまざまな形で実用化され、また今後のさらなる発展について多くのことが語られた時代です。その一つの形として、「人工知能と人間の対決」に注目が集まりました。

 

特に日本では、2011年から12年ごろにかけて、将棋のトップ棋士とコンピューターの対決が注目を集めました。このときの一連の対局の結果は、コンピューターの完全勝利とはいえないまでも、かつては多くの棋士が「人間はコンピューターに永遠に負けない」と考えていた将棋において、コンピューターが人間の最強レベルを上回りつつあるということを多くの人に印象付けたといえるでしょう。

 

2016年、囲碁の世界で、Google傘下の人工知能開発企業であるDeepMindが開発した人工知能プログラムAlphaGoと、人間の当時最強と呼ばれていた棋士による対局が5局行われ、結果はAlphaGoの4勝1敗に終わりました。当時コンピューター囲碁については、「トップ棋士に勝てるようになるまであと10年から数十年かかる」と言われていたにも関わらず、最先端の人工知能技術はあっさりそれを覆してしまいました。

 

 

さて、囲碁で人間を上回ったDeepMindは、次の目標を「StarCfat IIで人間のトップに勝つこと」に設定しました。StarCraft IIはリアルタイムストラテジー(以下RTS、アクション性の強い戦略ゲーム)の代表的なタイトルであり、eスポーツの代表的タイトルでもあります。

 

eスポーツ、特にRTSは囲碁や将棋よりもはるかに複雑だと言われています。囲碁や将棋はターン制のゲームであり、一つ一つの局面においてルール上可能な手は多くても数百です。また自分の手番であれば、次の手を考えている間に局面が変化してしまうということもありません。一方でRTSにおいては、ほんの僅かな動きの差も含めれば、1秒、あるいはさらに小さい時間の単位ごとに、可能な「手」は無限に存在しますし、またほんのわずかな瞬間に局面は無限に変化します。

 

また囲碁将棋と違い、RTSでは対戦相手と「情報」をすべて共有しているわけではありません。将棋では相手の駒の配置や持ち駒がわからなくなることはありませんが、RTSでは「敵がどこに潜んでいるか」など隠された情報が大量に存在します。そのため、「相手が思いもよらなかった場所に潜んで急襲する」といった極めて「人間的な」作戦を駆使しなければ勝つことはできません。そういうわけで、eスポーツでは囲碁将棋以上に人工知能が人間に勝つのは難しいと言われていました。

 

ところが、囲碁での勝利から数年と経たないうちに、eスポーツでもAIは人間を打ち負かしてしまいました。2018年1月、やはりDeepMind社の人工知能プログラムAlphaStarは、StarCraft IIの世界ランク上位者、MaNa選手を5戦全勝の成績で破ったのです。さらに2018年8月には、RTSの5対5のチーム戦バージョンといえるMOBAの代表的タイトル・Dota2で、かのイーロン・マスクが設立したAI研究機関のプログラム「Open AI」が、プロレベルと言われるトッププレイヤーたちを破りました。機械学習を駆使した人工知能の圧倒的な有用性を誇示する結果となったといえます。

 

人工知能は囲碁や将棋、eスポーツといったゲーム全般に取り組むことによって、その性能を飛躍的に上げることができたといわれています。特にeスポーツのゲームは、「試行錯誤」を繰り返しながら「上達」するという必要があるという点で、人工知能の発達にとって格好の題材になります。「人間に勝ったか、負けたか」という点に世間の注目が集まりますが、本質的には人工知能自体がこれらの取り組みを通じてどれほど進歩できたかというのが重要なポイントです。

 

また、人間のプレイヤーも、AIが導き出した戦略を参考にしながら、プレイのレベルを上げていくことが期待できます。

 

人工知能とゲームというテーマでは、「人工知能と人間の対決」という点に注目が集まりやすいですが、むしろ両者がいかに「協力し合うか」ということのほうが、今後の人工知能やeスポーツを考えるうえでヒントの多いテーマかもしれません。

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