農機メーカーがこぞってスポンサーするeスポーツリーグとは?

「ファーミングシミュレーター」というゲームシリーズをご存知でしょうか。2008年に第一作が初登場し、その後おおむね2年に1度の割合で新作が出ているシリーズで、最新版は昨年出た「ファーミングシミュレーター 19」です。

 

ゲームはタイトルそのままの「農業シミュレーション」です。ゲームは主に一人称視点で操作し、農場で農機を運転し、作物を植え、収穫します。経営シミュレーションの要素も強く、土地や農機購入のための借入をし、栽培する作物を選択しながら、利益をあげていくというゲームでもあります。また、農機や作物、経営の(いろんな意味での)リアリティの高さも特徴で、臨場感あるトラクターの操作を楽しめたり、いろんなものに非常にお金がかかって農業の大変さを知れるというのがゲームのウリになっています。

 

 

さて、この「ファーミングシミュレーター」が昨年突然「eスポーツタイトルとしてリーグ運営を行う」と宣言したことが話題になりました。このゲームを知る人々は、いったいどこに競技性があるのかと戸惑いながら続報を待っていたのですが、その後発表されたトレーラー(予告動画)などで、本編とはかなりゲーム性が異なりそうに見えるものの、本格的なeスポーツになりそうだと納得したのでした。

 

このゲームのeスポーツ版では、農機を動かしながら小麦の束を運び、倉庫にうまく収納するというのをスコア化して競います。本編にあった経営要素はないのですが、農機の性能や操作について熟知していなければならないという点は引き継いでいます。プレイヤーはゲームの初めで農機を選択し、かつ相手に使って欲しくない農機をバン(使用禁止)します。つまり農機が格ゲーにおける使用キャラにあたります。

 

このできたばかりの「ファーミングシミュレーター」eスポーツは、興行としても既にeスポーツリーグとして構想されており、賞金総額25万ドルのリーグ戦を1年ほどかけて行う予定です。すでにいくつかの出場チームとスポンサーとが集まっており、おもしろいことに、ある意味では当たり前ですが、その多くが農業機器のメーカーです。

 

ドイツの農機メーカーAMAZONEは、19世紀から存在する老舗企業ですが、「チームスポンサー」として参入し、自社の社員を選手としてリーグに参加させることにしました。その他にもやはりドイツの老舗メーカーGrimme、米イリノイ州のメーカーJohn Deere、オーストリアのトラクター会社Lindnerなど、世界各国の業界では知られた大手企業がリーグ参加チームのスポンサーとして名を連ねています。おそらく、ほとんどの企業はeスポーツにスポンサーするのが初めてなのではないでしょうか。

 

農業シミュレーションであるファーミングシミュレーターがeスポーツ化され、それによって農業関連機器の企業のスポンサーを多く獲得したことは、eスポーツのもう一つの可能性を示しています。つまり、ある分野をテーマにしたゲームでeスポーツタイトルを作れば、その分野の業界のスポンサーを得られるということです。たとえば、鉄道シミュレーションをeスポーツ化してリーグを作れば鉄道会社がそろってスポンサーするかもしれません。都市経営シミュレーションをeスポーツ化すれば、自治体からスポンサーを得られるかもしれません。これらは安直な思いつきにすぎませんが、eスポーツはゲームのテーマを工夫することによって、さまざまな分野の企業のPRやブランディングに貢献できる可能性を秘めているといえるでしょう。

 

【参考記事】

AMAZONE, Grimme to Sponsor Farming Simulator League Teams