「ダブルエリミネーション」や「スイスドロー」って?
eスポーツのさまざまな大会形式

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トーナメントや総当たりのリーグ戦など、対戦競技における大会進行の方式はさまざまで、参加人数や1試合の長さ、大会期間などに応じて柔軟に使い分けられています。

 

特にeスポーツは1vs1に限らず同時に複数のチームが対戦することもあるなど、ゲームタイトルごとで対戦方式が大きく異なるため、多彩な形式が採用されています。

 

今回はeスポーツ大会で主流となっている対戦形式のルールとそのメリット・デメリットについて紹介します。

 

トーナメントは「ダブルエリミネーション」が主流

 

1位を決めるための大会と言えばトーナメント戦が代表的ですが、eスポーツにおいては一度までは試合に負けても敗者復活戦へと進める、“2度負けると敗退”の「ダブルエリミネーション」と呼ばれるルールでのトーナメントが主流です。

 

トーナメントは参加者が多い場合でも比較的少ない試合数で全体1位を決められる対戦形式ですが、対戦相手を抽選で決めると序盤で強豪選手同士の対戦が発生する可能性もあり、実力ある選手が早期に敗退してしまうケースも考えられます。

 

△敗退した選手は勝ち進んだ試合に応じて敗者側トーナメントに合流する

 

そこで採用されているのが「ダブルエリミネーション」形式です。このルールでは序盤で一度負けてしまったプレイヤーでも敗者復活から優勝や上位進出の可能性が残されるため、通常のトーナメントよりも「運要素が少なく、実力が順位に反映されやすい」と考えられ、

結果に納得感が求められる大規模な大会や、順位に応じた得点が加算される場合のような“順位付けの重要度の高い大会”でよく採用されています。

 

また、ダブルエリミネーションでは敗者復活のチャンスがある一方で、一度も負けることなく“勝者側”トーナメントで決勝戦まで進んだ選手だけはその恩恵を受けられません。そこで、公正さを保つために決勝戦では「リセット」のルールが採用されることもあります。

 

「リセット」ルールは「無敗で勝ち上がった選手は1勝で優勝となるが、敗者トーナメントを勝ち上がった選手は2勝しなければ優勝にならない」仕組みです。勝者側で勝ち上がった選手は本来なら一度敗れても敗者復活トーナメントへと進む権利を持っているため、敗者復活サイドはまず一度勝つことで相手の復活権利を使わせて、お互いに敗者復活状態となるよう条件を“リセット”してから再度勝たなければ平等ではないという考え方です。

 

ただ、これはあくまで考え方が分かれる部分であり、勝者側には試合数負担の少なさや「決勝の対戦相手を決める敗者側トーナメントを偵察できる」メリットがあるため、リセットルールを採用しないケースも珍しくはありません。

 

メリットも多いダブルエリミネーショントーナメントですが、ほぼ全員が参加するトーナメントをもうひとつ並行して運営しなければいけないやや複雑な形式ため、試合数が多く選手のスケジュールや運営負担が大きくなる点はデメリットと言えるでしょう。

 

幅広いシーンに対応した「スイスドロー」

 

参加者の力関係が見えやすい大会形式と言えば、全員が一度ずつマッチアップ「総当たり」戦です。eスポーツでもプロリーグのような長期戦で採用されることが多く、総当たりを1周する「シングルラウンドロビン」、2周する「ダブルラウンドロビン」のような呼び方が使われることもあります。

 

しかし総当たり戦もトーナメントも参加人数が増えるほど必要な試合数も大きく増加する大変さがあります。そうした人数が多い大会で採用されることが多いのが「1回戦は全参加者がランダムに対戦し、2回戦以降はそれまでの勝敗が同じ相手から対戦形式を選ぶ」という「スイスドロー」形式です。

 

スイスドローの特徴は決められた試合数が終わるまでは脱落がなく、3回戦まで0勝3敗だったとしても4回戦では同じく0勝3敗との対戦が組まれます。そのため実力が近い相手と対戦できる点や必ず一定の試合が行えるという点で初心者でも参加しやすく、カードゲームなど大規模なオープン大会に向いている大会形式です。

 

 

人数を問わず実力に応じた試合が組まれるメリットがあるスイスドローですが、その性質上「5回戦を終えて5勝0敗の選手が複数名」という状態になるため、最高成績の1名を決めるより、一定のラインで人数をふるいにかける予選のような場面に適しています。

 

それでも同じ勝敗の選手間で順位付けをしなければいけない場合は、それぞれが戦った相手の勝率によって優劣を付けます。同じ5勝0敗の中でも4勝1敗の選手に対して挙げた1勝の方が、0勝5敗の選手からの1勝より価値が重くなるように計算されており、これを「オポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージ (OMWP) 」と呼びます。

 

多人数対戦ならではのルールや組み合わせによる使い分けも

 

ここまで紹介したルールは1vs1での対戦となるタイトルであり、バトルロイヤルやオートチェスのような多人数同時対戦はまた違ったルールが必要です。

順位に応じた得点を加算していくだけでなく、一定のポイントを超えてから勝利することが求められる「マッチポイントルール」が定番になっており、バトルロイヤルFPS『Apex Legends』のポーランドで開催された大会で採用されて認知が広まったことから「ポーランドルール」と呼ぶユーザーも多くなっています。

 

また、eスポーツは1試合が短時間で終わるタイトルも多く、対戦ではいわゆる“一本勝負”ではなく、数マッチ先取で勝ちとなるルールを採用するのも一般的です。3本先取の場合は最大5試合になることから「Best of 5」を略した「Bo5」や、「First to 3」の略である「Ft3」と表記されます。

 

かなりのルールがあって複雑に感じられるかもしれませんが、それぞれゲームの特性や参加者の数、公式大会か否かによってこれらは使い分けられており、「予選段階はBO1のスイスドローで、決勝トーナメントからBO3のダブルエリミネーショントーナメント」といったハイブリッドな形式もよく見られます。

 

eスポーツに限らずプロが参加する大会では公平性の高さや選手の負担とならないスケジュールが求められる反面、興行としてはコンパクトに集まった日程で試合の長さも予想しやすい方が適しているとも考えられ、条件に合うよう多彩なルールが考案されています。

 

大きな大会のルールを見る場合や今後また新しいルールや大会形式が登場したケースでは、どのようなポイントを優先してその形式が採用されているのかを考えてみると、一段と観戦の理解が深まるきっかけになるのではないでしょうか。

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