「魔の7歳」ケアへ『グランツーリスモ7』でパトカー運転を体験

株式会社Meta Osakaが手がけるeスポーツを用いた交通安全教室をレポート

#eスポーツ

2025年1月19日(日)、大阪府の柏原市役所にて、eスポーツを活用した子ども向けの交通安全イベント「交通安全教室&こども万博mini in 柏原」が開催されました。

 

今回は、本イベントの主催であるの「株式会社Meta Osaka」の代表取締役を務める毛利英氏へのインタビューとともに、“eスポーツ×交通安全”という取り組みを中心とするイベントの模様をお届けします。

 

従来の交通安全教室に『グランツーリスモ7』による運転体験をミックス

 

本取り組みの背景となっているのが「魔の7歳」と呼ばれるデータ。交通事故総合分析センターの発表によると、歩行中の交通事故死傷者数を年齢別で見た時に全年齢中で際立って多くなるのが7歳であり、小学校入学を機に自立した行動が増える時期でありながら交通安全に関する知識や判断能力が養われていないことが、こうした現象に繋がっていると考えられています。

 

そんな子どもたちにも道路における危険性を体感してもらうことを目的として実施されたのが今回の「eスポーツ×交通安全」イベントであり、レースゲームとしてeスポーツシーンも人気の本格ドライブシミュレーター『グランツーリスモ7』が用いられました。

 

今回はレースではなく市街地のようなコースを単独走行する形式で、サポートスタッフが基本的な操作をガイドしながら交通ルールの遵守を目指して3分程度の体験に。会場内には全3台の体験スペースが設けられましたが、いずれもハンドルコントローラーとシートが設置された本格的なセットでゲームをプレイできました。

 

 

保護者の方のサポートを受けるシーンも多く見られましたが、子どもたちの一生懸命にハンドルやブレーキを操作する姿が印象的で、会場は開始時刻前から大勢の来場者で賑わっていました。

 

また、イベント全体では『グランツーリスモ7』の体験だけではなく交通安全を呼びかけるパンフレットの配布や、景品として自転車用のヘルメットが当たる安全な自転車利用に関するクイズ大会、そして本物のパトカーの展示も実施。昔ながらの交通安全教室らしい催しにeスポーツタイトルが一体となる構図となっています。

 

 

同会場の2階では「こども万博mini」として輪投げやスーパーボールすくいなどの縁日イベントも併催されており、こちらも参加者の子供たちが店長として来場者への接客体験ができるユニークな試みも。

 

さらに人気eスポーツタイトルでありメタバースプラットフォームとしても注目を集める『Roblox』の世界で再現されたオリジナルワールドで消火ゲームを体験できるブースも併設され、交通安全教室やドライブ体験、こども万博miniを目当てに来場した大勢の家族にメタバースを大きくアピールする機会にもなっていると感じられました。

 

デジタル技術を活用して社会課題解決を担う「Meta Osaka」社代表にインタビュー

 

本イベントを主催する「株式会社Meta Osaka」から、代表取締役を務める毛利英昭氏にコメントをいただきました。

 

──今回のイベント実施の背景を教えてください。

 

私たちはeスポーツやメタバースなどのデジタル技術を活用した社会課題解決をミッションとしていますが、今回は柏原市長から「人身事故の死亡者数をゼロにしたい」という明確な目標をいただきました。

 

そこで『グランツーリスモ7』を用いて子どもたちに運転を実体験いただくイベントを提案し、市長からも「これをやりたい」と後押しをいただいて、実施に繋がりました。このイベントが子どもたちの命を救うきっかけになればと思っています。

 

──eスポーツタイトルを用いた運転体験の狙いはどのようなところにあるのでしょうか。

 

シミュレーターで「車は急には止まれない」ことやハンドル操作の難しさを実体験していただき、日常でも意識できるようになればと考えています。「魔の7歳」の交通事故は大半が飛び出しが原因というデータもあり、まずは「道路は危ない」という認識の手助けになればと。

 

──今回使用された『グランツーリスモ7』は特別仕様と伺いました。

 

今回は大阪府警の了解を得て、(柏原市で実際に使用されている)、大阪府警の車体表記、和泉ナンバーのパトカーが運転できるバージョンとなっています。実際に警察署から和泉ナンバーのパトカーも来ていただいて展示できたこともあり、強烈に印象づけられる機会になったのではないでしょうか。

 

△パトカーには実際に乗り込むことも可能で、写真撮影の行列ができるほどの人気に

 

──私たちが子どもの頃に体験したような「交通安全教室」とはかなり異なる、リアリティある体験ができているのではないでしょうか。

 

私も実際にシミュレーターをプレイしてみましたが、口でどれだけ言うよりも運転の難しさが伝わるのではないかと感じました。

 

──改めて「Meta Osaka」さんのミッションについてもご紹介お願いいたします。

 

弊社は「大阪を世界一おもろい都市(まち)にする」ことをミッションとしており、eスポーツやメタバースなどのデジタル技術やeスポーツを活用して社会課題解決に取り組んでいます。子どもたちの夢や希望を叶えるきっかけを提供するために行政や企業さんと連携した取り組み、そして地域住民の交流や世代間の交流を推進するイベントなども行っています。

 

我々は『Fortnite』や『Roblox』といったメタバース空間の受託開発も行っていますが、作るだけでなく今回のようなリアルイベントの企画運営を通じて「広めていく」ことにも注力しています。スマートフォンやタブレット端末からでもゲームやプラットフォームに触れることは可能ですので、インパクトある体験をきっかけに、家に帰った後にも「またやりたいな」と思っていただければと考えています。

 

──2025年は大阪万博も予定されており、大阪や関西でも今後はデジタル技術を活用した事業や施策の機運は高まっていくのではないでしょうか。

 

それは強く感じます。大阪ではeスポーツ推進を目指して府内の自治体や企業、教育機関などが協力する「大阪eスポーツラウンドテーブル(OeGG)」という団体も2024年末に設立されており、将来的なIRの開業も含めて街づくりの方向性における重要なタイミングを迎えているのではないでしょうか。

 

弊社は南海電鉄様が出資されている「eスタジアム株式会社」様との連携関係があり、今回の体験コーナーの設備やスタッフさんもeスタジアムさんのご協力があって実現できています。こうした施設や設備を用意できる強みも生かしながら、さらなる盛り上がりに貢献していきたいと思います。

 

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今回取材した「交通安全教室&こども万博mini in 柏原」は決して大規模なイベントではありませんが、休日に家族で市役所を訪れ、ゲームやメタバースに触れる機会を持ちながら交通安全について学べる機会となっており、来場者からの反響も上々でした。

 

ゲームコンテンツによる貴重な体験を通じて社会課題解決に取り組むアイデアとして、交通安全だけでなく他の領域にも広がっていく可能性を秘めたものであり、ゲームコンテンツの活用法のひとつとして今後さらに注目されるべきイベントと言えるのではないでしょうか。

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