二人三脚で挑戦。
家族で楽しめる子ども向けゲーム『バン!バン!バンディッツ』開発秘話

#グループ会社

日本コロムビアより販売された「バン!バン!バンディッツ」は、ポップな世界観とシンプルな操作が魅力のNintendo Switch™用ガンシューティングゲームです。この「バン!バン!バンディッツ」の企画開発を担当したのが、エクストリームグループのエス・エー・エス株式会社。今回は「バン!バン!バンディッツ」の発売を記念して、日本コロムビアの島田氏とエス・エー・エス株式会社の篠﨑氏の特別対談をお届けします。「バン!バン!バンディッツ」の開発の経緯やコンセプト、両社のお付き合いのきっかけなど様々なお話を伺いました。

子ども向けゲーム開発における強力なパートナーシップ

 

 

‐ 両社の事業内容を教えてください。

 

島田「日本コロムビア株式会社は、日本最古のレコード会社として知られています。長年にわたって音楽ビジネスを続けてきた会社でして、美空ひばりさんに代表される演歌やJ-POP、アニメソング、最近ではK-POPなども手掛けております。伝統的な日本文化を伝承するような純邦楽のコンテンツも扱っています。

 

私が担当しているゲーム事業は、元々はTDKの子会社である、TDKコア株式会社の事業でした。2010年にTDKコアのソフト事業部門がすべて日本コロムビア傘下に入ったことで、現在は日本コロムビアのゲーム部門として活動しています。

 

私はTDKコア以前からずっと、ゲーム業界一筋で働いてます。ゲームソフトと音楽は、無形コンテンツという共通点がある一方、ゲームソフト制作は投資額が非常に大きいことや、販売形態が音楽と異なるため、日本コロムビアの中でもゲーム部門は特殊な存在だと言えると思います。」

 

篠﨑エス・エー・エス株式会社(以下、sAs)はハードウェア・ファームウェア開発をメインに行うシステムソリューション事業とコンシューマーやスマートフォンゲーム開発、さらにはアーケードゲームやアミューズメント施設向け筐体開発などを行うエンターテインメント事業を行っています。双方の事業に共通するのが『ソフトもハードも開発できる』『受託だけではなく、企画立案から対応できる』こちらの2点がsAsの強みでもあり特徴です。」

 

‐代表的なゲームタイトルや、得意な領域はありますか。

 

日本コロムビア株式会社

ゲーム事業部長 島田 良尚 氏

 

島田「弊社は、長らく低年齢層の子ども向けタイトルに注力して取り組んできました。代表的なものでは『こびとづかん』というキャラクターのゲームがあります。このキャラクター絵本がブレイクしたタイミングでいち早くゲーム化に取り組み、3DSでヒットを記録しました。最近では『すみっコぐらし』というキャラクターを手掛けており、ラインナップも多数あります。また、sAsさんと共同で取り組んだ『もしかして?おばけの射的屋』というゲームも順調に販売できています。

 

子ども向けタイトルの特徴として、子ども自身がお金を出してゲームを購入するというよりも、両親や祖父母が購入して子どもが遊ぶ、つまり購入者とプレイヤーが違うという点が大きな特徴です。そのため、子どもが『ぜひ欲しい』と思える商品を作る一方で、大人の目線を持つ必要もあります。大人は、そのゲームが子どもにとって安全で健全であるか、安心して遊ばせることができるかを重視します。また、せっかく子どもにゲームを買ってあげても、すぐに飽きられてしまっては意味がありません。しっかり遊びごたえがあるかという視点も大切なポイントです。これが、一般的な青少年向けのゲームと比べて難しい点であり、独自のアプローチが求められる部分です。」

 

エス・エー・エス株式会社

エンターテイメント事業部 ディレクター

篠﨑 準 氏

 

篠﨑「sAsは、子ども向けゲームのほか、リズムゲームの開発実績が多い会社です。子ども向けゲームにおいては、操作性も大切な要素だと考えています。実際『バン!バン!バンディッツ』の開発では、この点に対して非常に気を遣いました。」

 

島田「また、ゲームそのものについても、操作説明をせずとも遊び始められる内容にしておかなければなりません。最近は大人でもマニュアルを読まずに操作を始める時代ですが、子どもはなおさら、コントローラーを握った瞬間に遊びたがります。

さらに、文字表記にも気をつけています。漢字ばかりでは子どもが読めない一方、ひらがなばかりでは大人が読みづらくなってしまいます。そのため、漢字を適度に使いつつ、ルビを振ることで、子どもにも大人にも読みやすく、意味がしっかり伝わるように工夫しています。青少年向けゲームと比較すると、注意すべき点が多いですね。」

島田「 他に難しいポイントとしては、ゲームの難易度設定もあります。ゲームを開発するスタッフは大人ですが、5、6歳の子どもでも楽しめる難易度を探らなければなりません。あまりにも簡単すぎるとすぐに飽きられてしまう一方、難しすぎると、途中で匙を投げられてしまうかもしれません。開発スタッフはゲームが好きなので、作っているうちに、難易度を上げていってしまいがちです。そこは意識的にブレーキをかけて、適度な難易度を保ち、試行錯誤しながら調整するようにしています。」

 

篠﨑「今回は、開発したゲームを実際に遊んでもらうために、エクストリームスタッフのお子さま達を対象にした試遊会を開催しました。対象年齢のお子様がどれくらいのことができるのかを理解するために、実際に試してもらい、その後の開発に活かせたデータが取れました。」

‐日本コロムビア様とsAsのお付き合いはいつ頃から始まったのでしょうか。

 

島田「10年ほど前に、共通の知り合いからsAsの梅木社長をご紹介いただいたことがきっかけです。当時日本コロムビアでは、新商品の開発を検討しており、機関車トーマスのゲーム開発をsAsにご相談させていただきました。

 

その後、Nintendo 3DS向けのゲームソフトとして『あこがれガールズコレクション』という、女児向けの職業体験アドベンチャーゲームをいくつか開発いただき、そこから何タイトルかを経て、現在のNintendo Switch向けのゲーム開発に至ります。

 

長いお付き合いの中で、sAsのスタッフには非常に前向きで真面目に開発に取り組んでいただいていると思います。日本コロムビアは年間に複数タイトルをリリースするため、私自身も個別タイトルの細部までを管理することは難しいです。sAsのスタッフは共通して『いいゲーム、面白いゲームを作ろう』という同じ目線を持ってくれているため、安心して開発をお任せすることができます。

 

世の中には数多くのゲーム開発会社がありますが、プロジェクトが立ち上がる度に『このゲームはこういうビジョンで、こういう風に進めていきたい』と説明していくのは大変です。そのため、最初から阿吽の呼吸で進めてくれるsAsのような開発会社はとてもありがたい存在です。sAsには、担当いただいたタイトルの売上の結果に左右されすぎることなく、日本コロムビアの一開発部門の感覚でお付き合いをしています。」

 

篠﨑「sAsにとっても、日本コロムビア様は非常に協業しやすい会社だと感じています。プロジェクト初期に大きな方向性を決めていただき、定期的にズレがないかをチェックしていただく形で進めていますので、ある程度自由に開発させていただいているからです。

 

また会社単位としてだけではなく、個々のスタッフとしても『開発を任されている』という感覚が持てていると思います。責任を感じますし、その分『みんなで考えてベストを尽くそう』という意識が自然と湧いてきます。もちろん、日本コロムビア様の方から「こうしてほしい」という指示がまったくないわけではありません、しかし、sAs側の考えと違う点があった場合、必ず話し合ってすり合わせをするようにしていますので、意見の食い違いによって作業に手戻りが発生するようなことはほぼありません。」

 

ターゲットに合わせたシンプルで楽しいゲーム体験

 

 

‐『バン!バン!バンディッツ』の開発は、どのように始められたのでしょうか。

 

島田「sAsが以前開発された『おばけの射的屋』がきっかけです。アーケードゲームですが、大変面白いゲームだと思いました。そこで、家庭用ゲーム機であるNintendo Switchに移植してみようということになりました。Switchのゲームソフトとして発売後はロングセラーとなり、対外的にもヒットしたと言えるタイトルのひとつになったと感じています。

 

ただ、『おばけの射的屋」はゲーム内のキャラクターも、ろくろ首やひとつ目小僧といった、いわゆる日本のおばけが多く登場し、全体的に日本文化の要素が強いゲームになっています。今後のグローバル展開を考えた時に、よりポップでカジュアルなゲームの方が広く親しまれるのではないか思い、『バン!バン!バンディッツ』の開発がスタートしました。

 

また、アーケードゲームではメダルをどれだけ稼ぐか、という仕組みが必要です。そのためゲームシステムにも制約がありましたが、家庭用ゲームであればより自由な発想で開発が可能になると考え、特定のIPを利用せず、独自のキャラクターを作り、完全オリジナルで開発を進めようという方針を立てました。」

 

篠﨑「開発体制としては、sAs側で、企画、デザイン、プログラミングのチームを組み進めることにしました。開発ボリュームが多かったので、グラフィックに関しては協力会社にも手伝っていただきました。」

 

 

‐コンセプトやターゲットについてはどのようにお考えになりましたか。

 

 

篠﨑「最初にお話をいただいてから、骨組みができるまでに3ヶ月ほどブレインストーミングを重ねました。 IPを利用したゲームであれば、そのIPの性質に沿ってある程度コンセプトを決めることができますが、今回はオリジナルキャラクターを使用するので、ある意味『なんでもあり』の状態です。そのため、何を軸にプランニングしていくか、どんな方向で開発を進めていくのかという部分について、初期段階でかなり検討を重ねました。

 

ブレインストーミングの中では、ストーリーモードやキャラクターの追加、また3Dのマップ上でキャラクターを自由に操作できるようにする、といった案も出ていました。しかし、ターゲット層の年齢を考慮した場合、どうしても難しくなってしまうという結論に至り、結果として、一本道を進みながら、その中で的を撃つことに集中できるようにしようという方向性が定まりました。

 

実は、ゲームの中でお金を貯め、ショップで武器をカスタマイズするという案も考えていたのですが、島田さんから「それはちょっと複雑すぎるね」と言われまして(笑)。やはり、友達が家に遊びに来たときに、みんなですぐに遊べるようなゲームの方がいいという助言をいただきました。そのため、アイテムは獲得後にすぐに発動できるようにし、ショップやカスタマイズ要素は敢えて入れないことになりました。」

 

 

島田「『バン!バン!バンディッツ』はガンシューティングゲームというジャンルに分類されるものの、誰でもすぐに遊べるパーティーゲームを目指したかったのです。パーティーゲームなのに、ゲーム内でキャラクターを強くする要素を加えてしまうと、レベルを上げようとしたり武器をカスタマイズしたりすることが重視され、「みんなで遊ぶ」というところが薄くなってしまうリスクがあります。それよりも、1ステージでも多く遊べる場所を増やしたいという話をさせていただいたのです。ゲームに登場するキャラクターにもそれぞれに固有のバックストーリーを考えていただいていたのですが最終的にはそれもほぼすべて省略し、登場したキャラクターを撃つことだけに集中してもらえるようにしました。」

 

‐デザインや仕様のこだわりはありますか。

 

 

篠﨑「最初に日本コロムビア様の方から『ユーザーは男の子が多いと思うけれど、女の子も一緒に遊べるデザインにしてほしい』との要望がありました。その要望に即したデザインになるよう、デザイナーと話し合い、最終的には、キャラクターは丸みを帯びていて、顔があり、お腹に的があるという現在のデザインとなりました。また、色はピンク、黄色、水色などポップな色使いにし、手の長さや足の長さなどの細かい部分にも工夫を凝らしています。またキャラクターの色ごとに攻撃パターンが決まっており、パターンを理解すれば倒せる、という仕組みにしています。」

 

島田「現在、このゲームのプロモーションも兼ねて、都内近郊の量販店で体験会を行っているのですが、特に小学低学年くらいの女の子たちが楽しそうにプレイしてくれています。また以前、コロコロコミックさんのイベントに出展した際には、家族で遊んでいただく場面がよく見られました。特にお母さんたちが楽しんでくださっているのが印象的でしたね。

 

ガンシューティングといえば、戦争ものやゾンビをテーマにしたものが多い中で、このゲームは本当に男女関係なく楽しめると感じてもらえたようです。女の子やお母さんも、こういったゲームを案外遊びたいんだなと実感しています。

 

キャラクターデザインでいうと、特にこの『グーミン』というキャラクターは、性別や年齢に関係なく、怖くも悪そうでもないけど、なんだか撃ちたくなるキャラクターに仕上がったと思います。デザインしてくれたスタッフには本当に感謝しています。」

 

▲お腹の的とポップなカラーが可愛いらしいデザインの「グーミン」たち

 

島田「また、漫画のテイストを参考にしており、全体的に子ども向けの王道感を失わないようにしているつもりです。大人から見れば少しバカバカしく感じるかもしれませんが、子どもたちにはしっかり刺さる要素になっているかと思います。」

 

グーミンが可愛い『バン!バン!バンディッツ』のサイトはこちら

 

バン!バン!バンディッツの展望

 

‐発売に向けての目標や、今後の展望を教えてください。

 

島田「『バン!バン!バンディッツ』は2024年11月28日に発売されました。年末に向けて、この時期にはゲーム各社が名だたるビッグネームを投入してくるため、厳しい市場になるだろうと思います。しかし、このソフトは絶対に面白いという自信はあるので、魅力をしっかりとアピールしていきたいです。

 

今後はグローバル展開も視野に入れており、海外でも楽しんでいただけるようにしていく予定です。まずは日本市場での反応を見て、戦略を固めていきたいと思います。」

 

篠﨑「任天堂さんのガンシューティングゲームは、Wii世代でよく販売されていたものの、Nintendo Switchの発売後は多くリリースされていません。『バン!バン!バンディッツ』のようなゲームを待っていた人も多いと思います。ユーザーの方にはとにかく一度遊んでもらって、その楽しさを実感してもらいたいですね。」

 

 

是非一度、子どもも大人も楽しめる、パーティーゲーム系シューティング『バン!バン!バンディッツ』をお楽しみください!

 

『バン!バン!バンディッツ』のサイトはこちら

 

※本インタビューは2024年11月に実施されました。本文中の情報は取材当時のものになります。

※Nintendo Switch™は任天堂の商標です。

 

 

 

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