皆さんの「利き手」はどちらでしょうか。生まれつき左利きの人の割合は10%前後という説もあるようにほとんどの方は右利きであり、左利きの方は日常生活で不便さを感じる瞬間が多いという話もよく聞かれます。
しかしスポーツの世界になってみると事情は異なり、野球で左投げの投手が重宝されたり、サッカーで左足が得意な選手が利き足に合わせたポジションで起用されたりと、その珍しさがプラスに働くケースも少なくありません。
では、ゲーム対戦競技の「eスポーツ」においては利き手によって有利不利があるのでしょうか。いろいろなジャンルから、その特性について考えてみます。
PCは右利きの人なら、右手でマウス、左手でキーボードを操作するのが一般的だと考えられます。PCゲームでもやはり右利きの人を想定した設定が主流であり、キャラクターを移動させる操作は上下左右がそれぞれ「W」「S」「A」「D」キー、ジャンプ機能がスペースキーと「左手のキーボード操作で自然に押しやすい配置」に割り振られおり、対してマウスにはFPSで敵に狙いをつける“エイム”のような細かな操作が割り振られている例がほとんどです。
ただ、PCゲームはキーの割り当てを設定で自由に変更できることも多く、PC側の設定から、右クリックと左クリックを入れ替えることも可能です。こうした利き手に配慮したアクセシビリティ設定の浸透により、左利きの人も左手でマウス操作をしながら右手で操作しやすいキーボード設定を組めるようになりつつあります。
未だに利き手による影響が考えられるのはデバイス面で、特に左右非対称で握りやすさを追求したマウスは右利き用がほとんどです。設定や慣れによって差のない操作感を生み出すことはできても、少し左利きの人にはデバイスの選択肢が狭いと言える状況になっています。
では、ゲームパッドを使用するコンシューマ機はどうでしょうか。FPSジャンルを見てみると、PCゲームと同様に左手で操作するボタンに移動機能、右手に照準操作が割り振られている時代が長く、右利きが有利と考えられてきましたが、やはり近年は設定によって解消されつつあります。
他のジャンルにも目を向けてみると、野球ゲームでの打撃操作やパズルゲームで駒を動かす操作など、細かな入力は左手側のスティックに設定されている例が多くなっています。これはファミリーコンピューターのゲームパッドなど、過去のハードウェアのデバイスでは左側にしか方向入力を設定できないデザインのものが多かったため、自然とそうした設定の慣例ができあがったものと考えられます。
そうしたジャンルでは左利きの人の方が利き手で細かな入力ができるので優位性があるように見えますが、右利きの人にとっても初めてそのゲームに触れた時から左手での操作に慣れているため、不便さを感じないことも多いようです。
格闘ゲームジャンルなどでお馴染みのアーケードゲーム筐体における事情も同様で、左側にスティックが配置されたデザインは左利きが優位に感じられる要素かもしれませんが、中にはボタンを押すタイミングの重要性を重く見て右利きの方が便利なデザインだとする意見もあり、どちらが優位とは言い切れない状況です。
このように、デバイスのデザインによって多少の差はありつつも、自分の感覚に沿った設定が自由にできるシステムの構築とプレイヤーの慣れと感覚によって、eスポーツにおいては「利き手」は大きな差を生む要素ではなくなりつつあると言えるでしょう。
そして、右利きも左利きも同様にプレイできるような工夫がなされているのは「利き手」だけではありません。最近はゲーム内の表示を「利き目」によって入れ替えられる仕組みも取り入れられつつあります。
利き目は正式名称を「優位眼」といい、視力に関わらず人間の脳が左右どちらの目で見た情報を優先的に処理しているかを指す言葉です。普段から両目で見ることに慣れているため、利き手ほど「こちらの目で見る方が見やすい」とは感じづらいものですが、ダーツで狙いを定めるときには必ず利き目で的を見た方が良いとされるほど、運動などのパフォーマンスに影響を与える要素だと考えられています。
ゲームでは常に両目で画面を見ているので影響は少ないと思われるかもしれませんが、画面の中でも利き目側の方が間接視野で対象を捉えやすく、素早く正確な反応ができるとされているため、ゲーム内の設定を活用することでパフォーマンス向上に繋げられる可能性があります。
例えばFPSではキャラクターが構えている銃が画面内にも映り込みますが、これが右利きをイメージして画面の右側に表示されている場合、利き目が右目の人にとっては利き目側の視野が少し狭くなっている状態であり、左利きをイメージした表示にした方が視野を確保できると考えられます。
他にも対戦ゲームで全体の情報を表示する小さなマップや試合内の情報が流れるログ機能は、利き目側の端に配置されている方が間接視野で確認しやすくなるので、プレイしているゲームで位置が変更できるか、チェックしてみると良いでしょう。
利き目は利き手ほどの変化を感じられるものではありませんが、モニターの真正面に効き目が来るように座り方を変えるなど、少し気にかけるだけでパフォーマンスや目の疲労感に影響がある要素として注目を集めつつあります。利き目はその場で簡単に調べられるものであり、設定を自由にカスタマイズできるゲームも増えているので、自分の利き手と利き目に適した設定を探してみてはいかがでしょうか。
掲載日:2024年3月7日