話題の「Chat GPT」が世の中に与える影響とは

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米Open AIが手がける、大規模言語モデル「Chat GPT」。人が与えた問いかけに自然言語で回答する対話型AIで、今までにないほど自然かつ正確な回答が得られると話題になっています。

 

2022年11月に公開されて以降、ユーザー数は増え続けており、2023年1月には月間アクティブユーザー数が約1億人に達したと推測されました。史上最も急成長したアプリケーションとなったとされ、各分野から大きな反響がでています。

 

今後、Chat GPTはさまざまな場面でポジティブかつ大きな影響を与えるものと考えられます。しかし、不正確な情報を回答したり、悪意をもったソースコードの生成に利用される可能性も指摘されています。

 

ここでは、今後Chat GPTが世の中に与える影響について詳しくみていきます。

 

Chat GPTとは?

 

Chat GPTは、米国の「Open AI」によって開発された大規模言語モデルです。

 

Open AIは、人工知能に関する研究や、人工知能を利用した製品やサービスの開発を行っている団体で、2015年に設立されました。イーロン・マスクが創設メンバーとして名を連ねていることでも知られ、画像生成AI「DALL・E」でも有名です。

 

GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、その名の通り、大量のデータを事前学習してから自然言語生成タスクを行うエンジンであることを示しています。

 

Chat GPTのバージョン

Chat GPTは、2018年の登場以降、定期的にアップデートを行ってきました。2023年2月時点での代表的なバージョンは以下の4つです。これには、Microsoftのサービス及び製品に搭載されたバージョンも含みます。

 

・GPT-1:2018年に発表された最初のモデル。1.5億のパラメータを持ち、多くの自然言語処理タスクで良好な性能を発揮した。

 

・GPT-2:2019年に発表された、より大規模なモデル。13億のパラメータを持ち、文章生成や文章の補完などのタスクで驚異的な成果を収めた。

 

・GPT-3:2020年に発表され、後にGPT-3.5 へ進化し、Chat GPTに搭載されている。1.75兆のパラメータを持ち、文章生成、文章補完、質問への応答、翻訳などのタスクにおいて、人間とほぼ同等の精度を実現している。

 

・GPT-4:2023年2月にMicrosoftのBingおよびEdgeに搭載され、プレビュー版として発表された最新バージョン。Prometheusとも呼ばれる。Chat GPTより速度が向上しており、より質問に対して的を得た回答ができるよう進化したとされている。

 

マイクロソフトとのパートナーシップでも話題に

マイクロソフトは、人工知能(AI)の研究や開発を推進するために、2016年からOpen AIへの投資を開始しました。2019年にはすでに10億ドルの投資を行っていますが、2023年1月には100億ドルの超大型投資が行われることも明らかになりました。

 

こうした一連の投資により、マイクロソフトとOpen AIのパートナーシップは強化され、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」とWebブラウザ「Edge」に、Open AIの次世代大型言語モデルが採用されることになりました。

 

検索エンジンにOpen AIのモデルが採用されることで、従来の検索エンジンよりユーザーの求める結果が導き出しやすくなり、また、検索結果そのものの正確さも増したとされています。

 

マイクロソフトにとってOpen AIへの投資は、Googleに後塵を拝し続けた検索エンジン事業の起死回生の一手となる可能性があり、その動向が注目されています。

 

そもそも大規模言語モデルとは?

そもそも大規模言語モデルとはどのようなものなのでしょうか。

 

大規模言語モデルとは、大量の自然言語テキストデータを事前学習したニューラルネットワークモデルのことをいいます。ニューラルネットワークモデルは、人間の脳構造を模倣して設計された機械学習アルゴリズムのことで、複数の入力値から複雑な関数を学習し、その関数を用いて新しい入力に対する予測や分類を行うことができるものです。

 

これらのモデルは、自然言語、つまり人々が日常的に使用する言語を処理するために使用され、文章の生成や質問応答のほか、文章の要約や翻訳も可能です。自然言語処理技術は、検索エンジンやチャットボット、音声認識システムや機械翻訳システム、スパムメールのフィルタリングなどに用いられており、すでに幅広い分野で活躍しています。

 

大規模言語モデルは、過去の大量の自然言語データを使って訓練されているため、言語のルールや文法を学習しており、自然な文章の生成や処理が可能です。例えば、「GPT-3」および「GPT-4」では、多くの自然言語タスクにおいて極めて高い精度を持っており、まるで人間が作成したかのように自然な文章の生成が可能となっています。

 

Chat GPTが世の中に与える影響

 

 

Chat GPTでは、これまでにないレベルでの文章作成が可能となりました。より高精度なチャットボットとして機能するほか、ソースコードの生成も可能であることがわかっていますが、一方で悪意をもったコンピュータプログラムの生成もすでに試みられたといわれています。

 

今後、より多くの人が、さまざまな分野でChat GPTを活用することで、世界にもたらす影響は多層的で複雑なものとなっていくと考えられますが、現時点では以下のような影響が起こることが予想されています。

 

検索エンジンの変化

Chat GPTは、人工知能を用いて高速かつ正確な情報を提供することができます。そのため、GoogleやBingに代表される従来の検索エンジンがChat GPTのようなAIに置き換わる可能性があると指摘されています。

 

これまでは、利用者が検索したいキーワードを検索欄に入力し、表示されたウェブサイトの中から自身の求めている回答がありそうなウェブサイトを探す必要がありました。しかし、Chat GPTのような対話型AIが組み込まれた検索エンジンでは、検索エンジンに組み込まれたAIが、利用者に回答を提示する可能性があります。

 

2023年2月には、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」に、Open AIの大規模言語モデルが組み込まれ、プレビュー版として利用できるようになりました。このAIはChat GPTと完全に同じものではありませんが、準じた内容となっており、しかも従来のバージョンより強力です。

 

こうした動きを受け、Googleも同様のAIである「Bard」を検索エンジンに組み込むことを発表しました。今後のAIの進化によっては、Google一強だった検索エンジン業界に大きな変化が訪れる可能性があります。

 

業務効率化の可能性

Chat GPTを用いて文書生成や翻訳などを行うことで、さまざまな業務の効率化が可能になると考えられています。業務効率化の代表例と考えられるのは以下の3つです。

 

 

文章生成の自動化

Chat GPTを活用することで、レポートやマニュアル、契約書などのドキュメントが、今までよりずっと少ない労力で生成できるようになります。

 

これにより業務スピードが向上し、コストが削減される可能性があります。業務負担が軽減されることは確実で、同じ業務量であればより短い労働時間で済むようになり、人員の削減も可能になるでしょう。 

 

カスタマーサポートの自動化

Chat GPTを活用することで、顧客からの問い合わせに対して、自動的に回答を生成することができるようになります。これまでチャットボットでは対応しきれなかった範囲の質問まで対応できるようになり、人が対応する必要はほとんどなくなるかもしれません。

 

これにより、カスタマーサポート担当者の負荷が軽減され、電話窓口を大幅に縮小できるようになります。顧客にとってもこれはメリットで、複雑かつイレギュラーな問い合わせでない限り、長い順番待ちの列に並ぶ必要がなくなるでしょう。

 

ソースコードの生成

Chat GPTによって、一定レベルのプログラムコードを生成できることがわかっています。もちろん、現在のChat GPTが生成するコードは必ずしも機能的とは限りませんし、コードの品質や最適化の観点からは改善の余地もありますが、今までにない大きな変化です。

 

Chat GPTにソースコードの作成をすべて任せるのではなく、生成したいコードのヒントやアイデアとして活用し、人間が適切に改良して実際に利用する動きがはじまっているようです。これにより、今後より少ない労力でコンピュータプログラムを作成することができるようになると考えられます。

 

Chat GPTの普及によって生まれる懸念とは

Chat GPTや他のAI技術の急速な発展により、いくつかの懸念や課題も浮上しています。代表的な例は以下の3つです。

 

偽の情報を生成してしまうことがある

Chat GPTは、人が作成したかのような自然な文章を生成することができます。しかし、その内容が必ずしも真実であるとは限りません。不正確な情報や嘘の情報が含まれていることがあり、それらが深刻な問題につながる可能性がないとはいえません。

 

差別と偏見を助長する可能性もある

Chat GPTは、大量のデータを事前学習して自然言語生成タスクを行います。そのため、インターネット上にある、偏見を含んだ内容も学習してしまいます。その結果、生成した文章に人種や性別、性的指向などに基づく偏見が含まれ、社会的問題を引き起こす可能性も考えられます。

 

詐欺のために利用されることも

Chat GPTや他のAI技術を、悪意を持った第三者が使用することもあるでしょう。具体的には、スパムメールの作成や、マルウェア(コンピューターウイルス)の作成です。

 

真偽の程が定かでない部分もありますが、すでに、マルウェアのコードをChat GPTによって書かせたり、ランサムウェアのコア部分がChat GPTによって作られたという話も聞かれます。

 

Chat GPTには人間が作成したような自然な文章が書けるだけでなく、ソースコードを書く能力もあるため、今後スパムメールの作成や、マルウェアの作成などの用途で積極的に活用されてしまうことがあっても不思議ではありません。

 

まとめ

今までにないレベルでの実用が可能になったChat GPT。これにより、人々の仕事の取り組み方、インターネットでの検索行動に大きな影響を与える可能性があります。

 

また、Chat GPTを活用することで、文章や書類の作成が飛躍的にスピーディーになるだけでなく、働き方やカスタマーセンターの構造にも影響を与えることでしょう。

 

一方で、不正確な情報や誤解を含んだ文章を生成し、社会に影響を与えてしまう可能性もあります。今後しばらくは、Chat GPTを全面的に信頼した使い方ではなく、常に情報の正確性を確認しながら利用することが大切になるといえるかもしれません。

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