メタバース開発でエンジニアに求められるスキルとは?

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近年、メタバースが世界中で注目を集めています。今後、市場規模は広がり続け、2026年には日本国内だけでも1兆円規模の市場になると予想されており、さまざまな企業が資金や人材を投入しています。

 

メタバース関連産業はまだ新しく、メタバースをつくりあげる側のエンジニアやクリエイターもまだ多くありません。現在は親和性の高さからゲーム業界のエンジニアやクリエイターが活躍していますが、今後メタバースに特化した職種も登場するものと考えられます。

 

ここでは、メタバースを構成する要素を解説するとともに、現在、関連しているエンジニアやクリエイターの職種や求められるスキルについて詳しく紹介します。さらに、メタバースの今後の展望について触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

メタバースを構成する3つの要素

 

メタバースの基本的な構成要素を理解することで、エンジニアやクリエイターに何が求められるかがみえてきます。まずは、メタバースを構成する代表的な3つの要素を紹介します。

 

1.仮想空間

メタバースでは、ユーザーが仮想空間にアクセスし、そこでイベントやゲーム、買い物などを楽しみ、他のユーザーとの交流も行います。

 

その仮想空間は、インターネット上に構築された2Dもしくは3Dの空間です。そのため、メタバースに携わるエンジニアやクリエイターには、この仮想空間をつくりあげるスキルが求められます。

 

仮想空間はメタバースの基本であり、なくてはならないものです。それがゲーム空間であれバーチャル会議室であれ、必ず必要になります。

 

2.プロップ

プロップとは、仮想空間に配置されるアイテムのことを指します。元々は舞台用語で道具を指す言葉です。プロップの作り込みがメタバース空間のリアリティを大きく左右するため、非常に重要な要素です。

 

メタバースにおける仮想空間では、多くのプロップが必要になります。建物を構成する窓や扉、屋根などのさまざまな要素や、部屋の中に置かれるテーブルや椅子などもプロップです。

 

また、メタバースで展示会を行うのであれば、展示物そのものもプロップであり、アバターが触れて試せるように設計する必要もあります。現実に存在するものをメタバース空間に再現する場合、制作難易度は高くなります。

 

3.アバター

アバターとは、メタバースでユーザーの代わりになるキャラクターのことで、いわばユーザーの分身です。人のかたちをしたアバターがほとんどですが、動物や宇宙人のようなかたちをしている場合もあります。

 

日本のメタバースプラットフォームでは、アバターをユーザーの好みにあわせて細かく設定できるものが多くなっています。一方、欧米ではアバターを簡略化することが多く、モデリングが荒いことや、上半身のみといったこともあります。

 

繊細な造形のアバターは、日本人の得意とするところです。そのため、今後、日本人エンジニアやクリエイターが活躍する場になると考えられています。

 

メタバースに関連するエンジニア・クリエイター

 

メタバースの開発にはさまざまな職種の人が関わります。ここでは、メタバースに関連する職種について紹介します。

 

ゲーム開発エンジニア

文字通りゲームの開発に携わるエンジニアのことで、以前はゲームプログラマーなどとも呼ばれていました。現在は、ゲーム制作に必要なスキルがプログラミングに限らなくなり、より広範なスキルが必要とされるようになったことから、このように呼ばれています。

 

なぜゲーム開発エンジニアがメタバース開発に関係するのかというと、技術面において3Dゲーム制作とほぼ変わらないためです。そのため、メタバース黎明期である現在は、ゲーム開発エンジニアが開発の中心的役割を担っています。

 

ゲーム開発エンジニアには以下のような職種があります。なお、これらの職種では、後述するUnityやUnreal Engineなどゲームエンジンに関するスキル、C++やJavaなどのプログラム言語の知識が必要になります。

 

【ゲーム開発エンジニアの職種】

・ゲームプログラマー

・サウンドプログラマー

・グラフィックプログラマー

・ネットワークプログラマー

 

 

サーバー開発エンジニア

メタバースを運営するためのネットワークやサーバーの設計・構築・保守管理を行うのが「サーバー開発エンジニア」です。メタバースにおける縁の下の力持ちともいえる存在です。

 

メタバースは、サービスが大きくなると何千人、何万人というユーザーが同時接続します。そのため、サーバーやネットワークへの負荷は非常に大きなものとなり、メタバースの運営には強力なネットワークとサーバーが必要になります。

 

サーバー開発エンジニアは、サーバーの性能・速度・コストなどの要素を考慮しながら、開発エンジニアと密接に連携して、最善の環境を整えていく必要があります。

 

メタバースのサービスがリリースされたあともサーバー開発エンジニアの仕事は続きます。サーバーの監視や環境の改善、バックアップ業務などを行い、万一サーバーに障害が発生したときは一刻も早く復旧させる必要があります。

 

AndroidiOSエンジニア

メタバースのサービスは、スマートフォン用アプリとして提供されることもあります。その際、開発にあたるのがAndroidエンジニア、もしくはiOSエンジニアです。

 

Androidエンジニア、iOSエンジニアの仕事は多岐にわたります。スマホ用アプリの各種機能の設計・開発はもちろんのこと、アプリをリリースしたあとのアップデートや修正作業にも携わります。

 

また、AndroidやiOSは定期的に最新版がリリースされるため、これらの仕様の確認も行わなくてはなりません。GoogleとAppleはどちらも米国企業のため、最新版の詳しい仕様に関しては英語でリリースされます。それらの翻訳作業が必要になることもあります。

 

3D/CGデザイナー

メタバースを構成する仮想空間やプロップ、そしてアバターのデザインやモデリングを行うのが3D/CGデザイナーです。どれも最初にユーザーの目に触れる部分のため、メタバースサービスの成功の鍵は3D/CGデザイナーが握っているといっても過言ではありません。

 

3D/CGデザイナーの業務として、3Dモデルのデザインやモデリング、アニメーションやエフェクトの作成などがあげられます。メタバースは3Dのものが主流となっているため、3DCGのモデリング技術はほとんど必須といってよいでしょう。

 

メタバース開発でエンジニアに求められるスキル

 

 

メタバース開発にはさまざまな職種のエンジニアやクリエイターが携わっていることがわかりました。では、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。

 

3Dフレームワーク(ゲームエンジン)の開発スキル

3Dフレームワークとは、3D環境の開発に必要な機能をまとめて提供するプログラムのことで、主にゲームの開発に用いられるため「ゲームエンジン」とも呼ばれています。

 

メタバースの開発に主に用いられるのは「Unity」と「Unreal Engine」です。VR・ARの開発や、スマートフォン向けアプリの開発も可能となっており、スマートフォンとPCなどクロスプラットフォームにも対応できます。

 

それ以外の3Dフレームワークも存在していますが、ほとんどのケースでこのどちらかが利用されています。そのため、メタバースのエンジニアを目指すなら、これらの3Dフレームワークを習得する必要があります。

 

なお、UnityとUnreal Engineを比較すると、Unreal Engineのほうが視覚要素が重要になるケースでより強みを発揮できます。そのため、VRの開発を目指すならUnreal Engineを選択したほうがよいものと考えられますが、機能が豊富なため学習には時間がかかります。

 

プログラミングスキル

メタバースの開発には複数のプログラミング言語が求められます。主に利用されるのは以下のような言語です。こうした主要なプログラミング言語についてのスキルがないと、メタバースを開発するエンジニアとしての活躍は難しくなります。

 

【メタバースの開発に用いられるプログラミング言語】

・C#

・C++

・JavaScript

・Python

・Solidity

・Rust

 

一般的なビジネススキル

メタバースは大規模なサービスのため、開発はエンジニアやクリエイターによるチーム作業となります。そのため、単独で動けることは基本的に少なく、コミュニケーション能力を中心とした一般的なビジネススキルが必須となります。

 

また、さまざまな職種・業務の人が関わるため、立場によってはマネジメント能力や企画力、マーケティングに関する知識も必要となるでしょう。

 

加えて、メタバースは世界的なプロジェクトも多いため、海外のエンジニアと働くことも多くなります。英語力があればより活躍できる範囲が広がり、エンジニアとしてのスキルアップも狙えるはずです。

 

メタバースエンジニアのこれから

ここでは、メタバースに関わるエンジニアの今後についてみていきましょう。

 

エンジニア需要はさらに高まる

現在、さまざまな企業がメタバースに注目しており、今後もその流れは続くものと考えられます。また、VR技術にブレイクスルーが起これば、爆発的に普及していく可能性があります。

 

それに伴いエンジニアの需要も高まると考えられますが、現在メタバースを専門としたエンジニアを名乗っている人は多くなく、ゲームエンジニアがメタバースの開発を行っていることがほとんどという状況です。

 

しかし、今後はメタバースを専門としたエンジニアの需要が高まると考えられ、早いうちから専門的な知識と技術を身につけることで、先駆者として活躍できる可能性があります。メタバース開発に携わりたいと考えているエンジニアにとって、大きなチャンスがあります。

 

新たなスキルを学ぶ姿勢が大切になる

メタバースは発展途上の分野です。そのため、今後新たな技術が次々と投入されるものと考えられます。

 

現在、メタバースの開発には「C++」や「JavaScript」などすでに実績のある言語も用いられていますが、今後、より新しい言語が主流になる可能性もあり、新しいスキルを習得し続ける姿勢が非常に重要になります。

 

今後必要になるスキルがどのようなものかは現時点ではわからないため、自分自身でアンテナを張り、新しい情報に耳を傾け続けることも大切です。海外メディアからの情報発信が多いため、英語習得も前提に、海外の情報に目を通すことも大切になるでしょう。

 

まとめ

メタバースはまだ歴史の浅い新しいサービスです。VRゴーグルを始めとしたデバイスの普及に時間がかかっていますが、技術的なブレイクスルーが起これば爆発的にサービスが拡大していく可能性があり、メタバースをつくりあげるエンジニアとして活躍したいのであれば、今がチャンスともいえます。

 

また、ゲーム開発経験のあるエンジニアは、すぐにでもメタバース開発で活躍できる可能性があります。メタバースが定着するかはまだ不透明な部分も大きいものの、メタバース開発で培ったスキルは汎用性が高いため、別分野への転職もしやすいと考えられます。興味があるなら、早めに飛び込んでみてはいかがでしょうか。

 

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