人気高まるゲーム対戦競技「eスポーツ」。昨今は毎週のようにeスポーツタイトルを使用したイベントが行われており、プロによるハイレベルな大会からカジュアルな大会、そして社内・学校内のレクリエーションまで幅広く親しまれています。
このブームを受け今後新たな大会やイベントも増加すると思われますが、そこで今後重要になりそうなポイントが、開催する日時や曜日です。イベントが盛んになり参加者や視聴者にとって選択肢が増加している今、さまざまな視点からベストなタイミングについて考えます。
イベントの開催曜日として最初に思い浮かぶのはやはり土日や祝日です。eスポーツに限らず、現在行われているイベントも多くが週末に固まっており定番となっていますが、それは同時に、新しくイベントを行う上で競合相手が多いことを意味しています。
全ての娯楽と重ならない日程にすることは現実的に不可能ですが、eスポーツでも他のカルチャーと同様に競合先を避けなければ多くの集客は望めません。
観戦を最大限に楽しむためにはある程度ルールや内容に詳しいことが理想ですが、テレビで放送されたり学校の体育で体験したりすることで既に身近になっているリアルなスポーツと違い、eスポーツはプレイ経験のないタイトルに詳しくなる機会があまりありません。そのため、eスポーツは参加者層と視聴者層がかなり重複していると考えられ、「他に見たい試合がある」ことが、そのまま「大会への参加者が減る」ことにも繋がりかねません。
また、違うタイトルであっても、同一ジャンルの人気タイトルでは、ターゲット層も重複することが考えられるので、こちらのビックイベントも出来れば避けたい対象です。ターゲット層の重複という観点では、eスポーツにおけるスポーツゲームは少し特殊で、モデルとなっている現実のスポーツの日程にも配慮が必要です。このように、eスポーツは非常に幅広い競合先をチェックする必要があるといえます。
イベントの日程が重なることは集客だけでなく企画内容にも影響があり、ゲストにプロ選手を招待して集客に繋げたいと考えていても、大会中や直前ではオファーを断られる可能性が高くなります。キャスターについても同様で、まだ選手以上に専門家の少ないeスポーツのキャスターは早い段階からスケジュールを抑えておく必要があるでしょう。
そこで昨今プロ選手が集まる大会やイベントで、少しずつ増えているのが、平日夜の開催です。平日なら既に行われている他の大会と重なることが少なく、ファンにとっても普段からゲームをプレイしたり配信を視聴したりしている「見やすい時間帯」でもあり、他のゲームタイトルのファンを招き入れられる可能性も広がります。実際に『League of Legends』の国内リーグ「LJL」では、2022年シーズンから試合日が水曜、金曜、日曜の週3日に分けて開催されています。
2000年代前半にはプロ野球のパシフィック・リーグで、原則休養日となっている月曜日に試合を行うことでセントラル・リーグのファンにも試合を視聴してもらうことを狙いとした「マンデーパ・リーグ」が開催されていましたが、eスポーツ界では今後こうした“空いている曜日を狙う”動きが活発化する可能性も考えられます。
ただ、平日開催もメリットばかりではありません。イベントはあくまでゲームを仕事として取り組むプロ選手やインフルエンサーが出場する場合だからこそ実現しているのであって、専業ではないプレイヤーを対象としたコミュニティ大会では継続して平日開催を維持していくことは難しいでしょう。プロを対象とした大会でも平日に試合が増えることによる過密日程の負担も懸念されています。
コロナ禍ではオンラインでのイベントが増えましたが、今後は徐々にオフラインイベントも復活していくと考えられます。自宅から気軽に参加・視聴できるオンラインイベントに比べ、移動を伴うオフラインイベントは事前にしっかり参加の意思を固めてもらう必要があり、よりターゲットを意識した日時の決め方が大事になります。
公式大会以外でも最近は主催団体のPRも兼ねて優勝賞品があったりプロ選手も参加していたりするハイレベルな大会が増えていますが、こうした大会がオフラインで開催されるとなると遠征してでも参加したいと考えているモチベーションの高いプレイヤーは意外と少なくありません。コロナ禍以前もそうした大会が数多く行われましたが、週末開催であっても終了時間が遅くなると遠方から参加しているプレイヤーがやむなく中座する姿が見られており、長時間続くようなスケジュールはハードルが高く感じられる可能性があります。そのため、大規模なコミュニティ大会は大型連休中に行われるケースも多くなっています。
対して、出場者の多さよりも見に来てくれる人が重要なイベントとしては、商業施設などでゲームやデバイスのプロモーションを目的として行われるデモンストレーション型のイベントもあります。こうしたイベントは既存のeスポーツファン層ではない人にも広くリーチするため、敢えて競合を意識せずに施設利用者が多い時間帯を考えることも重要でしょう。
ここ数年でかなり認知度も高まり、プレイ人口も増加しているeスポーツ。ターゲットの細分化も進んでおり、毎週末に行われている社会人チーム限定のリーグ戦もあれば、長期休暇期間にまとめてスケジュールを消化している学生大会も存在します。
新規参入も増加しており、eスポーツイベントは今後ますます増えていくと思われます。大会やイベントの開催にあたってはタイトルの使用許諾やデバイスの準備、会場とスタッフのスケジュールなど調整しなければいけない事項がたくさんありますが、力の入っているイベントこそ日程にもしっかりと配慮して、より多くの人へとリーチできるよう意識を向けていくべきではないでしょうか。