オフショア開発とは? 選ばれる理由、メリット・デメリット

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ITシステムの開発に関わっている担当者の方は、「オフショア開発」という言葉を聞く機会が多いことと思います。

 

オフショア開発は、海外の拠点に委託してシステムなどを開発することを指し、元々はコスト削減の一環として日本企業の間で広がりました。ところが近年、IT技術の進化やDX推進などでIT技術者の需要が増えたにも関わらず、日本国内の供給は不足していることから、人的リソース不足を解消するための定番の手段となりつつあります。

 

この記事では、オフショア開発とは何かという基本的なことから、オフショア開発が選ばれる理由、さらにメリット・デメリットについて解説していきます。

 

オフショア開発とは

 

オフショア開発(offshore development)とは、Webシステムやアプリケーションの開発業務を、海外企業や海外の現地法人などに委託する開発手法のことです。

 

日本企業におけるオフショア開発は、1970~1980年代から中国に進出した企業を中心に始まり、2000年代からはインドやベトナムへの委託が進みました。近年は日本企業のオフショア開発の半数以上がベトナムへの委託となっており、中東やアフリカへの委託もはじまっています。

 

日本企業がどのくらいの割合でオフショア開発を行っているかについてのデータは、少々古く2008年の調査まで遡りますが、その時点でほぼ半数の企業がオフショア開発を既に行っているか、もしくは導入予定としていました。その後のIT市場の伸びを考えれば、少なく見積もっても半数を超える企業がオフショア開発を行っていると考えられます。

 

出典:オフショアリングの進展とその影響に 関する調査研究|総務省

 

オフショア開発が選ばれる理由とは

 

元々、日本企業の多くは、コスト削減のためにオフショア開発を導入してきました。もちろん、オフショア開発によるコスト削減は現在でも可能で、人件費が日本の半分以下で済むケースも多々あるとされています。しかし、世界の主なオフショア開発地でのIT技術者の人件費は上昇しており、コスト削減効果は以前ほど得られなくなっています。

 

そのため、近年はそれ以上にリソースの確保にメリットを見出す企業が多くなっています。経済産業省の調査によれば、日本国内のIT人材は2021年時点ですでに20万人足りないとされており、国内のリソースだけでIT開発を行うことはすでに現実的ではないのです。

 

昨今の日本企業におけるシステムやアプリの開発では、コスト削減のためにわざわざオフショア開発を「選ぶ」のではなく、メインストリームとして「当然」の選択肢になっていると考えて支障はないでしょう。

 

オフショアで行われる開発案件とは

 

オフショア開発の最新動向をまとめた「オフショア開発白書(2021年版)」によると、オフショア開発で多いプロジェクトは以下のようにものになっています。

 

【オフショア開発案件別ランキング】

1位:WEBシステム/サービス(27%)

2位:スマホアプリ開発(27%)

3位:WEBシステム/業務(16%)

4位:サイト制作(13%)

5位:AI 開発(4%)

6位:IoT開発(4%)

7位:基幹系システム開発(4%)

8位:ソフトウェアテスト(2%)

9位:VR開発(1%)

10位:ブロックチェーン(1%)

 

出典:オフショア開発白書(2021年版)|オフショア開発.com

 

Webサービスのシステム開発と、スマホアプリ開発がそれぞれ27%ともっとも多くなっていますが、難易度の高い基幹系システム開発や、最先端のAI開発なども一定数(4%)受託しています。

 

これは、日本と海外の技術力の差がほとんどなくなっていることや、Slackやチャットなどでオンライン会議が簡単にできるようになったこと、GitHubなどの登場でソースコード管理が容易になったことなども影響していると考えられます。実際、大手企業では、アジアやヨーロッパ、北米など複数の国に跨る開発拠点で、高度な開発も同時に進めることができるようになっているのです。

 

オフショア開発のメリット・デメリット

 

 

メリット:人的リソースの不足を解消できる

日本国内のIT技術者は、需要に対して不足しています。一方で、日本企業のオフショア開発先として人気の高いアジア各国では、IT業界の成長が著しく、労働力不足の問題も起きていないため、優秀なIT技術者が豊富です。そのため、プロジェクトの内容や規模に応じて、最適な人材を確保しやすくなっています。

 

近年は、日本国内の人材だけで進めようとすると、エンジニアがいないためにプロジェクトが動きだせない場合も出てきています。オフショア開発であれば、他国の優秀な人材で開発を進められるため、人材不足に悩むこともなくなり、プロジェクトを計画的に進められるようになるのです。

 

 

メリット:開発コストを削減できる

日本は国内のIT技術者が不足しており、人件費が高騰している状況です。それに伴って、国内の開発ベンダのコストも高騰しており、企業に大きな費用負担が発生しています。下記の調査データでは、国内の開発ベンダに対して、「価格」を課題と考えている発注企業が圧倒的に多いことがわかります。

 

出典:オフショア開発白書(2021年版)|オフショア開発.com

 

オフショア開発先の人件費も上昇傾向にあるものの、特に人気の高いアジア各国は依然として日本より物価が安いため、人件費も安価です。それでいて、日本のIT技術者とのスキルレベルの差はほぼなくなっており、成果物の品質を落とさずにコストを削減できます。

 

ソフトウェア開発は、特に人件費が膨らみやすく、開発期間が長くなるほど高額になります。そのため、日本よりも人件費の安い海外の開発ベンダに依頼すれば、人件費の分コストが抑えられ、大きなプロジェクトほど費用を大幅に圧縮できるのです。

 

デメリット:コミュニケーションコストが発生する

オフショア開発における最大のデメリットは、コミュニケーションの問題です。日本向けのオフショア開発に従事する現地エンジニアは、日本語が堪能な人材も多いものの、細かなニュアンスまでは伝えるのは難しいかもしれません。その結果、ミスコミュニケーションが起き、プロジェクトが失敗するケースもあります。

 

また、国によって時差があり、文化や商習慣、働くことへの意識にもギャップがあります。そのため、システム障害など緊急時の対応に時間がかかる可能性があることは、リスクとし織り込んでおく必要があるでしょう。

 

デメリット:進捗管理が難しく、品質管理の難易度も高まる

物理的に遠く離れているため、プロジェクトの進捗状況が見えづらく、品質管理の難易度も高くなります。要件や仕様の認識の相違も起こり得るため、進捗が問題ないと報告を受けていても、実際には問題が生じていた、というケースもあります。

 

また、日本で常態化している仕事のスタイルが受け入れられないこともよくあることです。例えば、納期が迫っているにも関わらず進捗がおもわしくない状況で、間に合わせるために残業をするような日本式のやり方は、海外では基本的に通用しないものと考えましょう。オフショア開発を行う際は、そういった要素も加味した上で計画を立てる必要があり、そのためには相互理解が必要になります。

 

オフショア開発が失敗する原因と成功させるヒント

 

オフショア開発が失敗する主な原因は、納期の遅れや、品質の低さ、仕様の勘違いなどが挙げられます。こうした失敗は国内でも起こり得ることですが、海外での開発を行うオフショア開発では、こうした問題が起こる確率は高くなります。

 

その原因は、言葉の違いによるコミュニケーションの問題や、文化の違いによる仕事上の問題意識の違いなど、日本人にとって当たり前のことが通用しないという点にあります。そのため、オフショア開発では、こうしたことを前提にプロジェクトを組み立てる必要があります。

 

これらを克服するために、発注企業とオフショア先の間に立って両者をつなげる「ブリッジSE」の活躍が重要になります。日本とオフショア委託先、双方の技術や仕様を把握し、現地の言語や習慣、価値観などを理解することが重要です。両者がお互いを理解し合い、良好な関係性を築くことができれば、オフショア開発が成功する可能性は高くなるでしょう。

 

また、注意したいのは「暗黙の了解」が通じないことです。とくに、システム開発にあたっての仕様は、最初にできるだけ明確化しましょう。日本では当たり前のことでも、オフショア開発先では、仕様書に書かれていないことは原則として実装されないと考える必要があります。

 

ウィズコロナがオフショア開発にもたらした良い変化

 

新型コロナウイルス感染症の流行は、日本人の働き方に新たな可能性をもたらしました。進みの遅かった「働き方改革」が大きく前進し、今やテレワークは新たな働き方のスタイルとして広く認知されています。

 

こうした変化は、オフショア開発にも良い影響をもたらしました。メンバーそれぞれが離れて仕事をするようになったことで、国内とオフショア先の違いが限りなく小さくなったのです。また、自宅でのテレワーク環境が整ったことで、仕事の連絡も取りやすくなり、時差によるコミュニケーションの障壁も低くなりました。

 

現在は、オフショア開発をフルに活用できる下地が今までになく整っており、今後、さらにオフショア開発の利用が加速するものと思われます。

 

まとめ

 

オフショア開発が選ばれる理由や、メリットとデメリット、失敗する原因と成功させるヒントなどについて解説してきました。

 

かつて、オフショア開発はコスト削減のために有効な手段でしたが、現在では、人的リソースの確保のための有効な手段として、その捉え方が変わりつつあります。人気のオフショア開発先の国や地域は、労働人口が減っていく日本とは違って人材が豊富で、IT技術者のレベルそのものも日本に比肩しつつあります。

 

オンラインミーティングや、チャットなど、コミュニケーション手段が発達したことで、今後オフショア開発を行う企業は、さらに増えることが予想されます。そのためにも、ブリッジSEだけに頼らず、世界中のIT技術者間で通用するよう、日頃から「暗黙の了解」をできるだけ排除していくことも大切になるかもしれません。

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