スポンサーを獲得する「アマチュアeスポーツ」

「プレイヤーとしての参加の敷居の低さ」もeスポーツの重要な特徴だといえます。野球やサッカーのようなスポーツは、ある程度の基礎練習をしなければ実際の試合をするのは難しいですし、ケガのリスクもあります。その点、eスポーツは(ゲームにもよりますが)比較的誰でも参加しやすく、ケガをしたり体を傷めたりする心配もあまりありません。

 

そういう点で、「アマチュアによるeスポーツ」にも大きな可能性があるといえるでしょう。上で挙げた野球やサッカーでも、各種のアマチュアの大会は盛んですが、eスポーツでは参加できる人口が多い分、さらに盛り上がるアマチュア・シーンが形成される見込みがあります。ただ、現在のところ、日本では多くの人の身近なところでは「アマチュアのeスポーツシーン」はまだ発展してないといえます。(そもそもプロシーンもまだ発展途上ですし、プロとアマの境界がはっきりしないところが多いためでもありますが…)

 

さて、eスポーツが成熟しつつある米国では「アマチュアによるeスポーツシーンに着目したSuper League Gaming(スーパーリーグゲーミング)という企業が今年に入って新興企業向け株式市場であるNASDAQに上場し、大きな注目を浴びています。

 

Super League Gamingはeスポーツの「興行専門会社」として上場した初のケースと言われています。主に映画会社などと協業して、映画館に人を集め、そこでeスポーツ大会を開催しています。タイトルは「リーグ・オブ・レジェンド」「フォートナイト」「クラッシュロワイヤル」「マインクラフト」と、アメリカのゲーマーにとってはおなじみのラインナップで、サードパーティーとして各パブリッシャーの協力を得ながら、アメリカの16の都市が参加するリーグ戦を、アマチュア都市対抗戦という形で開催しています。ソニー・ピクチャーズエンタテインメントと協業した際には、「マインクラフト」の「スパイダーマン」コラボスキンを用いた大会を催し、映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の宣伝につなげるということもやっていました。

 

 

2017年までは、Super League Gamingのメインの収益は参加者からとる「参加料」であり、地方で人を集めてゲーム大会を開催して参加料をもらう、という非常に「シンプルで」「地味な」ビジネスだったといえます。そんなSuper League Gamingが上場に成功したのは、将来的な成長性が評価されたのに加え、収益の柱である参加料とスポンサー収入が順調に増加していることが要因として考えられます。特に注目すべきはスポンサー収入で、2017年は11.4万ドルだったスポンサー収入が、2018年には第三四半期の時点で、サムスン、レッドブルがスポンサードしたことにより、54.7万ドルという大幅な増加を見せました。

 

Super League Gamingがグローバル企業のスポンサーを相次いで獲得した背景として、彼らが「eスポーツのリトルリーグを目指す」と標榜していることがあります。主催大会の多くで参加者は「子供」です。映画館などの大きな会場で子供が一生懸命ゲームに取り組む様を、親が後ろで見守っている、という「絵」が、スポンサーの決断を大きく後押ししたのかもしれません。

 

先日、eスポーツに対してスポンサーする業界の幅が、従来のゲーム関連業界からゲームと直接関係のない業界にまで広がっている現状を紹介しましたが、「スポンサーされる側」のほうも、第一線で活躍するプロチームやプロ選手、「ナンバーワン」を決める大会などが中心だったのが、アマチュアや地方、子供たちなどと大きな広がりを見せているといえます。