「バトルロイヤルゲーム」の競技シーンではどのように勝者を決めるのか

スポーツでは多くの場合、それぞれの試合は1人対1人の戦い、あるいは1チーム対1チームの戦いです。野球もカーリングも将棋もそうです。あるいは徒競走やフィギュアスケートのような「個人や1チームが自分の力を出し切り、採点結果や記録で競う」競技もありますが、3チーム以上が同じ試合の中で互いに攻防し、駆け引きを行う競技というのはイメージがわかない人も多いでしょう。

 

しかし、eスポーツの「バトルロイヤルゲーム」では、最大100人ものプレイヤー、あるいは最大25ものチームが同一フィールドに登場し、競い合います。通常イメージするようなリーグ戦やトーナメント戦とは異なりますが、れっきとしたプロシーンが存在し、プロや上級プレイヤーがしのぎを削っています。

 

1対1が基本となる競技の場合、リーグ戦ならば勝ち数を積み重ねて順位を上げる、トーナメント戦ならば敗北するまで戦い続けるというように、どのように大会ごと、シーズンごとの総合勝敗を決していくのかイメージがわくと思いますが、毎回最大100人、あるいは最大25チームで戦う「バトルロイヤルゲーム」の競技シーンではいったいどのように総合順位が決められていくのでしょうか。

 

「バトルロイヤルゲーム」の基本的なルールは、最大100人で同一フィールド上(たいてい「無人島」という設定です)に降り立ち、銃などの武器を用いて他のプレイヤーを倒し(倒されたプレイヤーは原則そこで敗退となります)、最後に残った一人が「勝者」となります。チーム戦の場合は、3~4名で構成される16~25チームほどが同様にして最後の1チームになるまで戦い続けます。

 

そのゲームの性質から、バトルロイヤルゲームのプレイヤーや関係者からも当初「バトルロイヤルゲームはeスポーツ種目にはなりえない」という声がありました。冒頭で述べたとおり、普段目にするスポーツ競技のほとんどが1対1で争うものであることを考えると、そう思うのは無理もないでしょう。しかし、現在バトルロイヤルゲームはeスポーツとして立派に成立しています。どのように成立しているのか、バトルロイヤルゲームの代表格、PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUND (PUBG) の日本における最大の競技シーンであるPUBG JAPAN SERIES(PJS)を例にとって見ていきましょう。

 

 

PJSは4人で構成されるチームが計16チーム参加するリーグです。バトルロイヤルゲームなので毎回の試合で16チームすべてが参加し、1位から16位までの順位を決めます。野球観戦ですと自分が観戦しているチームの試合と同時進行で行われる別チームの試合が気になったりしますが、全チームが全試合に出場しているPJSではそういうことは起こりません。

 

さて、本来PUBGでは、毎回の試合の最後まで残った1チームのみが「勝者」であり、2位以下は全員「敗者」なのです。しかし競技シーンでは、何十ものチームが参加して1試合(30分ほどかかります)で1チームしか「勝者」が出ないということは、たとえば「先に3勝したチームの優勝」などというルールにすると、圧倒的に強いチームが存在する場合をのぞき、何試合やっても優勝者が決まらないということになりかねません。

 

そこで、PJSでは各ゲームの「勝者」のみならず「ラスト8チームまで生き残ったチーム」に「ポイント」を付与するというシステムにしています。1位が10ポイント、2位が6ポイントというように割り振られます。

 

試合はシーズンごとに前半と後半に分かれ、それぞれ1日4ゲームを3日間、合計12ゲーム行います。そしてすべてのゲームが終わったときに、獲得したポイントの合計で総合優勝が決まるシステムになっています。つまり、ゲームを規定の試合数プレイし、1回ごとのゲームで少しでも多くのポイントを取りに行くというのが基本になります。

 

ただし、総合的な勝敗を決める要素は各ゲームの順位だけではありません。ポイントで並んだ場合に、各ゲームでチームが取った「キル数」、つまり敵を倒した数も考慮されます。バトルロイヤルゲームは「生き残ったものが勝ち」という性質上、たとえ何十人も敵を倒しても自分が倒されてしまえばそのゲームはそこで敗北になります。極力敵と戦わず、「漁夫の利」を狙うのも立派な戦略ですが、リスクをとってキルを取りにいくプレイヤーを評価する仕組みもやはり必要です。

 

また、ゲームの勝敗とは別に「モストキルプレイヤー」つまり最も多くのキルを取ったプレイヤーを表彰する仕組みもあります。「モストキルプレイヤー」は野球でいえばホームラン王のようなもので、スター選手であることの証といえます。

 

 

以上がバトルロイヤルゲームである「PUBG」の競技シーンにおける基本的な仕組みです。16ものチームが三すくみならぬ16すくみするという状況は、非常に複雑な駆け引きを生み出します。たとえば、総合ポイントで2位のチームが、1位のチームにとってのリスクを大きくするために、あえて下位チームを倒さずに生かしておくという戦略もありえるでしょう。(ただし当然ながら、談合すると反則になります) もちろんそうすれば自分が倒されるリスクも増えます。

 

他の競技ではあまり見られない、複雑で高度な駆け引きがバトルロイヤルゲームの魅力です。ほとんどの人は1対1の競技観戦に慣れているため、最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、基本的な仕組みを理解したとき、新しい「観戦の楽しみ」の世界が開かれるでしょう。