皆さんがゲームを遊ぶ際にはどんな操作デバイスを使用しているでしょうか。PCゲームをメインに遊ぶ方はマウスとキーボードで、あるいは、最近ならタッチ入力ができるモバイル端末を利用するケースも増えているでしょう。コンシューマ機のシェアが高い日本ではゲーム専用のコントローラーに触れて育ったという方も少なくないと思われます。
コンシューマ機の操作デバイスは取扱説明書に「コントローラー」の名称で書かれているため私たちもそう呼ぶことが多いですが、「コントローラー」とは入力デバイスの総称であり、ゲーム専用のものは「ゲームパッド」という名前で区別されます。
遊んだことのあるゲーム機によって誰しも、馴染みの操作デバイスがあるかと思います。昨今、シューティングゲームジャンルの操作で「キーボード&マウスとゲームパッド、どちらの方が優れているのか」という議論が巻き起こることがあります。
今回はそんな「マウス・ゲームパッド論争」について考えたいと思います。
FPSやTPSなど、銃撃戦をモチーフとするシューティングゲームは現在も対戦競技「eスポーツ」として人気の高いジャンルですが、オンライン対戦が盛んになる以前からさまざまなタイトルがリリースされてきました。
当初は特定のプラットフォーム向けにリリースされてきたタイトルも人気が拡大すると共にPCとコンシューマのどちらでもプレイ出来るよう開発されるケースが目立ち、当然それぞれのプラットフォームに適した操作、つまりPC版はマウスでの、コンシューマ版はゲームパッドでの操作に対応した環境が作られてきました。
ここで覚えておきたいのが、シューティングゲームで重要になる「敵を狙って打つ」という“エイム操作”はゲームパッドよりもマウスの方が有利であるとの認識が一般的であることです。理由としては指一本でスティックを操作するゲームパッドよりも手全体で操作するマウスの方が精密に動かしやすいことが挙げられ、動かせるスペースに制限のないマウスは設定を細かく調整できることもメリットとされています。
そのためシューティングゲームのジャンルでは、コンシューマ版にのみ「エイムアシスト」という機能が追加されることが通例となっています。これは敵の付近へと狙いを定めると自動で照準が標的を追いかける補助効果であり、コンシューマとPCで同様のゲームを快適にプレイ可能にするための工夫になっています。
しかし近年、コンシューマ機のスペックやゲームメーカーの開発技術が向上したことにより、異なるハードウェア間でのクロスプレイ機能が登場しています。これによって異なる操作のプレイヤー同士が対戦することが可能になり、マウス操作のプレイヤーから「ゲームパッドのエイムアシストが強力すぎるのではないか?」との声があがるようになった、というのが大まかな議論の背景になります。
確かにエイムアシストは使い方によっては強力な効果を発揮する機能で、強く補正のかかるシーンでは全くスティック入力をしていなくても照準が敵を追尾してくれることもあるので、マウス操作のプレイヤーが理不尽に感じるのも間違いではありません。
特に相手とすれ違うような超接近戦では素早く大きく、それでいて的確にマウスを振らなければいけないので非常に難易度の高い操作が要求されます。そこでアシスト機能を使っている相手に負けてしまうと不公平感に繋がるのは十分に理解できる状況と言えるでしょう。
ただ、ゲームパッドを使用しているプレイヤーが一方的に有利かと言えば、もちろんそんなことはありません。前述の通りゲームパッドでは精密な操作が難しく、撃ち合いの上達には高い練度が要求されます。しかも人気バトルロイヤルゲーム「Apex Legends」では遠距離狙撃用のスコープではエイムアシストが発生しないようになっているなど、全ての場面でエイムアシストに頼ることができるわけでもないのです。
なので、「どちらが有利」と断言することはできず、どちらにもメリットがあります。特定の状況下では一方が有利と感じられるケースもあるので、もしどちらでプレイしようか迷っている場合は自分の好きなプレイスタイルに応じて選択してみるのも良いでしょう。
最近では操作しているキャラクターを上手く動かす技術も相手からの被弾を減らすテクニックとして注目されていますが、これもキーボード&マウスでの入力が有利であるとの見方が強くなっています。今後のデバイス選びにはエイム以外の要素が大きなウェイトを占めるようになる可能性も考えられます。
操作デバイスについては非常に多様な考え方があり、マウスやゲームパッドそれぞれの中でもボタンの割り当てや好ましい形状などプレイヤーによって個性が現れる要素です。特に細かな入力で相手を射撃するシューティングゲームではこだわりたいポイントと考えているプレイヤーも多いでしょう。
前述の「Apex Legends」では「序盤だけキーボートとマウスで素早く操作してから終盤の接近戦に向けてゲームパッドに切り替える」という個性的なスタイルのプレイヤーも存在します。こうした自分なりの新しいデバイス活用術を模索するのも、ゲームや大会のルールに反しない範疇であれば面白い遊び方です。
コンシューマ機に違法なデバイスを介してマウスを接続することでエイムアシストの恩恵を受けながらマウスで操作しようとする悪質なプレイヤーの存在がシューティングゲーム界では常々問題となっています。こうした「ハードウェアチート」と呼ばれる問題も、デバイスを語る上では知っておきたい事情のひとつでしょう。
ゲームをプレイする上ではルールの遵守が基本であり、ゲームパッドの使用に対応していないタイトルもあれば、クロスプレイではエイムアシストが無効になるタイトルもあり、事情はさまざまです。
こだわりを持って操作するのも勿論素晴らしいことですが、少しでも違うデバイスが気になるのであれば一度プレイしてみると感覚の違いを認識することができて、理解を深めることにも繋がります。プロ選手の中にもどちらかのデバイスから「転向」して活動しているプレイヤーも存在しており、その違いが注目されている今がそのチャンスではないでしょうか。