VR eスポーツはありえるのか?

次の元号が「令和」と発表され、今年五月から「令和元年」となることが決まりました。「元年」という言葉を聞くとeスポーツ関係者はどうしても、さんざん言われ続けた「eスポーツ元年」を連想します。

 

一方、eスポーツと同じ時期に「元年」と盛んに言われたのがVRです。VR元年は2016年ということになっているようですが、VR4年(?)になった今でも、VRが身近なものになった実感はあまりありません。あの大きなヘッドセットを被って動き回るのは大変そうなイメージがありますし(実際準備も含めてけっこう大変です)、酔いそうですし(実際酔います)、「VRのゲーム」と聞いてタイトルを複数思いつく人もあまりいないでしょう。

 

 

Valve社によると、2018年の時点で、世界最大のPCゲームプラットフォームであるSteamのユーザーのうち、VRのヘッドセットを持っている人は0.8%だそうです。コアゲーマーの集団でこの割合ですから、VRの普及はeスポーツの普及よりもさらに先の話になりそうです。ちなみに、VRのeスポーツ大会自体は既にあり、世界最大のeスポーツリーグ運営企業であるESLも大会を主催していますが、そのゲームタイトル「Onward」や「Echo Combat」はゲーマーにもあまり知られていません。

 

しかし、VRはeスポーツにとっても非常に大きな可能性を秘めています。

 

VRは、特にFPSのようなリアリティの強いゲームと相性抜群です。FPS、つまり一人称視点のシューティングゲームは、ゲーム画面の映像をプレイヤーが現実の戦場に立ったときに見える景色に近づけるという発想で作られています。そうなると、VRを利用して「現実の戦場」の没入感を強めるのはFPSの必然的進化だと思われます。VRのシューティングゲームでは、実際に銃で撃たれたときの痛み以外はほとんどすべて再現できてしまうかもしれません。

 

また、格闘ゲームとの相性もよいかもしれません。格闘ゲームは相手の動きに対応し、それを上回る動きがどれだけできるかというのが勝敗を分けますが、VRであれば相手の動きがよりリアルになり、それに対する自分の動きもリアルな身体を用いた全身的なものになります。

 

 

上記のように、大きな可能性を秘めたVR eスポーツですが、大きなボトルネックがあります。それは「観戦の難しさ」です。

 

eスポーツと動画配信サービスの相性のよさはこれまで何度か述べてきましたが、現在動画配信サービスはVR非対応です。よってVRをVRとして配信することはできません。VR eスポーツ大会の配信自体は行われていますが、選手が没入しているVRの世界と観客が観ている画面とが質的に大きく異なってしまうのが、観客を集められない要因になっているかもしれません。

 

また、仮にそれができるようになったとしても、観客が選手と同じようにVRの世界を歩き回りながら観戦する、というのも難しそうです。スポーツでもeスポーツでも同じですが、観るべきポイントにカメラを合わせ、ズームインしたりズームアウトしたりするのは、映像の提供側が当然やるべきことと考えられています。VRの世界に観客を案内して「自由に観戦してください」とやっても、観戦の満足度はむしろ減ってしまうでしょう。

 

とはいえ、VR eスポーツの観戦が絶対に無理だとは思いません。「VRによる観戦」は、実はeスポーツよりもバスケットボールのNBAやサッカーのチャンピオンズリーグなどで先行して提供されています。これは選手と同じようにコートやフィールドに立った視点で観戦できるというわけでなく(今後そういうものが出る可能性もありますが)、あくまでも従来と同じ俯瞰する視点での観戦ですが、それでもリアリティという点で、従来の二次元の中継とは違った観戦体験を提供できているようです。

 

eスポーツのVR観戦が、どのような形でやるのがベストなのか、まだまだ試行錯誤を繰り返す段階ですが、近年のうちにさまざまな回答が出てくるのではないかと期待しています。

 

【参考記事】

The Road Ahead for VR Esports

Why aren’t we watching AR and VR esports?

 

 

 

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