eスポーツの1年を振り返る

2018年日本eスポーツ界の5大トピック!

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2018年は日本のeスポーツ元年と呼ばれている――と書くと、「もう毎年ずっとそう呼ばれているじゃないか」という揶揄が聞こえてきそうです。しかし一方で「今年こそ元年と呼ぶにふさわしい一年だった」という感触を得た関係者も少なくなかったのではないでしょうか。Gzブレインは2018年のeスポーツ市場規模が昨年の13倍になったと発表しました。体感的にも、eスポーツという言葉をメディア等で目にする機会は相当増えたと感じている人が少なくないでしょう。

 

そんな2018年の日本のeスポーツ業界の中でも、特に重要なトピックは何だったでしょうか? 独断ではありますが、ここに5つ選んでみました。

 

 

1.日本eスポーツ連合(JeSU)の発足

2月、これまであったeスポーツに関する3つの団体を統合する形で、日本eスポーツ連合(JeSU)が発足しました。大手ゲーム会社が正会員として名を連ね、多くの国産ゲームを含むeスポーツタイトルを「認定タイトル」とし、各ゲームのプレイヤーに対して「プロ認定ライセンス」を発行してプロ選手としてオーソライズしていきました。この「プロ認定」は、「プロゲーマー」という職業・存在についてピンとこない多くの人々に、彼らが立派なプロフェッショナルであり、アスリートであるということを印象づけたように思います。

 

さらにJeSU自体にもKDDIやローソン、ビックカメラなどの大手企業がスポンサーについたことは、「eスポーツにスポンサーする」ことの規模を拡大し、その流れを加速させているように思われます。冒頭でeスポーツの市場規模が13倍になったことを紹介しましたが、増加分のおよそ8割が「スポンサー収入」によるものです。

 

JeSUは「eSPORTS国際チャレンジカップ」などの大会開催や地方支部の設立など、国内eスポーツのさらなる拡大のための施策を用意しているようです。

 

2. 国内初となる優勝賞金1億円大会の開催

日本のeスポーツをめぐり、以前まで「法規制があるために高額賞金大会が開催できない」と言われていました。実際にeスポーツ大会が摘発されたり行政処分を受けたりしたことはないようですが、規制の存在のために多くの企業が大会の開催に及び腰になっていました。また、eスポーツの今後の成長性や企業のマーケティング手段としての有効性についても、誰もが確信を持っていたわけではないことも、高額賞金を出しづらい一因となっていたでしょう。

 

しかし、2017年ごろから、市場の目に見える成長という後押しもあり、「法的に問題なく大会を開ける」条件が広く共有され、企業も及び腰ではなくなりました。今では多くのゲームで「高額賞金大会」が活発に開催されています。

 

そんな中、今年12月の「Shadowverse World Grand Prix 2018」(主催:Cygames)で、優勝者のふぇぐ選手(よしもとLibalent)が国内で開催されたeスポーツ大会としては過去最高となる賞金100万ドル(現在のレートで約1億1千万円)を獲得しました。数年前には「海外で盛り上がるeスポーツ、ゲーム大会で優勝して賞金は100万ドル!」というような見出しがよく各種メディアで見られたものですが、とうとう日本でも100万ドルの大台に達する大会が出現したという点で象徴的な出来事といえます。

 

3. アジア競技大会でのeスポーツ採用、日本人選手の金メダル獲得

8月に開催されたアジア競技大会ジャカルタ大会で、eスポーツが種目として採用されたことが話題になりました。大規模な国際総合スポーツ大会でeスポーツが採用されたのは、eスポーツが従来のスポーツと肩を並べつつあることの象徴といえるでしょう。「ウイニングイレブン 2018」、「クラッシュ・ロワイヤル」、「StarCraft II: Legacy of the Void」、「ハースストーン」、「リーグ・オブ・レジェンド」、「Arena of Valor」の6つのゲームが「種目」として選ばれ、日本は「Arena of Valor」を除く5種目に選手を送り込みました。その中で「ウイニングイレブン」に出場したSOFIA選手とレバ選手は見事金メダルを獲得。eスポーツにとって重要なマイルストーンとなった大会に見事つめ跡を残しました。

 

一方で、ちょうどこの大会の開催中に国際オリンピック委員会のバッハ会長が「eスポーツがオリンピックの種目になることはありえない」と発言したことで、「近い将来の五輪採用は絶望的」ととらえられるようになりました。eスポーツが従来のスポーツとどれくらいの距離を保ちながら発展していくのかは、2019年の注目ポイントのひとつでしょう。ひとつ言えるのは、日本も含めて世界中で多くの既存スポーツ組織がeスポーツに参入した今、eスポーツと従来スポーツがまったく別個の道をたどることはないということです。

 

4. 日本野球機構(NPB)がeスポーツ進出

上述の通り、ここ数年で世界中のスポーツ組織やチームがeスポーツ参入を明らかにしていますが、2018年の日本にとって最も象徴的だったのは日本野球機構(NPB)の参入です。言うまでもなく、国内で最大の人気と伝統を誇るスポーツ、野球の統括を行う団体です。その採用ゲームはもちろん国内有数の野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」、なのですがさらに、野球とは特に関連のなさそうな「スプラトゥーン」の大会も主催することを発表し、世間を驚かせました。「パワプロ」「スプラトゥーン」ともに12球団それぞれが選手を獲得し、プロ野球さながらにリーグ戦、さらには日本シリーズを争うということです。

 

12月現在、1年目の「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018」がちょうど大詰めを迎えており、来年1月にはセ・パ両リーグの代表が激突する「e日本シリーズ」が開催されます。スプラトゥーンに関しては来年5月に「本戦」が行われ、そのときには「広島カープ」や「ソフトバンクホークス」の看板を背負った「スプラトゥーン」の選手を応援することになるのでしょう。

 

5. 世界のメジャーeスポーツタイトルにおける日本チームの活躍

国内のeスポーツのさまざまな動きを見てきましたが、肝心なのは「結局、日本人はeスポーツで世界と戦えるのか」ということです。国際舞台で勝てなければスポンサーもつきませんし、見ている人が盛り上がることもありません。

 

これまで日本のプロゲーマーは格闘ゲームや「ウイニングイレブン」「シャドウバース」などの国産タイトルで高い実績を誇っていたものの、eスポーツの2大ジャンルといえる「MOBA」(Multiplayer Online Battle Arena、見下ろし型マップで2つのチームが相手の拠点破壊を目指してぶつかり合うゲーム)と「FPS」(First Person Shooter、一人称視点での銃撃戦を行うゲーム)では実績を残すことができずにいました。それがファンの間でも「日本人はeスポーツに向いていない」とささやかれ続けていた理由です。

 

ところが今年、そんな日本のeスポーツファンの「自虐的な」空気を一変させるできごとが立て続けに二つ起こります。ひとつは、韓国ソウルで開かれたMOBAの代表的ゲームである「リーグ・オブ・レジェンド」の最大の世界大会「ワールド・チャンピオンシップ・シリーズ」で「DFM(DetonatioN FocusMe)」が日本代表チームとして初めて、「プレイイン・ステージ」のグループリーグ突破を成し遂げました。このことはファンの間で、日本が1997年にサッカーのワールドカップアジア最終予選を始めて突破したときの「ジョホールバルの歓喜」になぞらえて「ソウルの歓喜」と呼ばれています

 

もうひとつは、FPSの代表的ゲームのひとつ「レインボーシックス・シージ」のやはり年次最大の世界大会で、「野良連合」がやはり日本代表チームとして初となる「準決勝進出」を成し遂げました。これは日本代表として初どころか、アジア太平洋地域のチームとしても過去最高の実績です。eスポーツが盛んで強豪国の多いアジアですが、FPSは欧米に遅れをとっている分野だと思われていました。それもあって今回の「野良連合」の健闘は「アジアはFPSは強くない」という印象さえも覆すものでした。

 

これら二つのメジャータイトルでの、日本人の国際舞台での活躍はまさに「eスポーツ元年」を象徴するにふさわしい出来事であったといえるでしょう。

 

 

2018年日本eスポーツ界の5大トピック、いかがだったでしょうか。どれも非常に大きな意味のあるできごとで、個人的には、この中のどれか一つしか起こらなかったとしても2018年は「eスポーツ元年」として刻まれていただろうと思います。ここに挙げられなかった重要なできごともいくつもありますし、時間の経過で初めて重要性がわかる出来事もあるでしょう。ともあれ、今年築かれた基礎をもとに2019年の日本のeスポーツはさらに発展していくものと思われます。