見逃せない存在感

eスポーツの世界にも押し寄せるVtuberの大波

#eスポーツ

近年はタレントやスポーツ選手も参加するほどの人気コンテンツになりつつある「ゲーム配信」の文化。その中でもひときわ存在感を発揮しているのが、バーチャルなキャラクターの姿で配信する「バーチャルYouTuber(Vtuber)」と呼ばれる人達です。

 

今回はゲーム界、そしてeスポーツにも強い影響力を見せているVtuberについて、今後の更なる可能性を考えます。

 

バーチャルキャラとゲームコンテンツの親和性

 

バーチャルYouTuberという存在については2016年頃から動画共有サイト「YouTube」上で活動をスタートしたキズナアイさんがその先駆けとされ、数年の間に巻き起こった大きなブームは今なお勢いが衰える気配がありません。現在はアイドルやタレントのように事務所やユニットに所属しての活動も珍しくなく、プラットフォームや国内外を問わず一万人以上が活動を行っているとされています。

 

Vtuber黎明期は一般的な動画クリエイター「YouTuber」と同様に数十分の動画を編集・公開する活動内容が中心でした。しかし、次第にキャラクター性という強みを最大限に生かすために視聴者とリアルタイムなコミュニケーションが可能な生放送を行う傾向が多くなりました。そこで着目されたのがゲーム実況です。

 

 

バーチャルキャラクターを映している画面でも違和感なく溶け込み、それでいて配信のために必要なPC上で起動できるゲームはシステム面での相性の良さがあります。加えて主な視聴者層と考えられるキャラクターコンテンツを好きな人達にとっては、アニメや漫画と並んでゲームも関心の高いコンテンツだというケースも多かったのではないでしょうか。こうした背景から「Vtuber×ゲーム配信」の組み合わせは魅力的なコンテンツとして、今では当たり前の文化へと成長しています。

 

ゲームメーカーの著作物であるゲームを利用しての配信については権利関係もひとつのハードルですが、Vtuberが所属する事務所とメーカーが包括許諾契約を締結する例も増加しており、配信者とクリエイターサイドとの良好な関係性も築かれつつあります。こうした縁をきっかけにプロモーション活動に参加する例や、時にはゲーム内への出演を果たすVtuberも現れるなど、人気Vtuberのインフルエンサーとしての影響力は既にゲーム業界にとっても非常に大きな存在となっています。

 

eスポーツ大会」を浸透させる存在に

 

Vtuberによるゲーム実況が増加するにつれ、次第に「ゲームに真剣に取り組むこと」や「ゲ―ムの熟練度」を長所とする配信者も現れ始めました。中でもバトルロイヤルゲーム「Apex Legends」の盛り上がりは顕著で、Vtuberのみが参加できるコミュニティ大会も開かれているほどです。同タイトルのコミュニティ大会として国内最大の規模を誇る「Crazy Raccoonカップ(CRカップ)」には限られたインフルエンサーのみが出場できますが、その参加者にもタレントやプロゲーマーに混ざって数多くのVtuberが名を連ねています。

 

こうした有志で開催される大会も紛れもないeスポーツのひとつであり、もちろん「エンジョイ」と称されるカジュアルな大会とハイレベルな競技シーンとを比較すれば違いは幾つもありますが、好きな参加者を応援することはeスポーツ、ひいてはあらゆる競技大会を観戦する際の共通の醍醐味です。それをVtuberの大会参加を通じて身近に体験し、徐々に「ゲームの大会を観戦する」習慣が浸透すれば今後のeスポーツ界にも大きなプラスになることでしょう。

 

ハイレベルなプレイをアピールポイントとする配信では、既に元プロ選手の「ストリーマー」と呼ばれる配信活動者も数多く存在しゲームファンからの支持を獲得しています。ですが、全く新しい層へリーチし裾野を拡大していくという観点では、Vtuberに限らず各業界のインフルエンサーが持つポテンシャルは計り知れず、今後もその活躍に期待せずにはいられません。

 

競技シーンへの進出はあるか

 

Vtuberの中にはプレイヤーとしての実力・姿勢を認められ、大規模な大会にコメンテーターやゲストとして出演する姿も見られます。今後更にレベルの高いプレイヤーが活動し、eスポーツ大会の規模も拡大していくと仮定すると、いずれは競技シーンの大会へ出場するVtuberが出現することも自然と期待されるのではないでしょうか。

 

現在でもトップ層のプレイヤーは非常にレベルが高く、実力的に考えれば不可能な話ではありません。ただ、いざ大会に出場するとなればバーチャルな存在であることが大きなハードルになることが予想されます。競技シーンにおいては通信ラグがなく一括で設備や選手を管理しやすいオフライン形式が一般的であり、そこにバーチャルキャラクターが参加する場合には特別な設備や対応が求められることでしょう。

 

これまでも、Vtuberがオフラインのイベントに参加する際には設置されたモニター上で出演するなどしてキャラクターのイメージを壊さないよう配慮が進められてきました。ただ、競技シーンにおいてはプレイする選手のリアルな表情や試合後のインタビュー対応が見られることを楽しみにしているファンも多く、本来選手が座る場所にモニターが置かれた対戦風景が実現したとしても違和感は拭えないでしょう。

 

あくまで出場することだけを実現させるのであれば「バーチャルキャラクターの姿を借りず、Vtuberとしての活動を隠して出場すれば良い」というのが妥当なアイデアになるかも知れません。ですがゲームのプレイスタイルや声などの情報から「特定」に繋がる恐れもあり、一件でもそうした話題が持ちあがればその他のプレイヤーにも穿った視線が向けられることに繋がりかねません。

 

理想は、やはりVtuberがVtuberとしてのアイデンティティを保ったまま参加できる形式が編み出されること。特別扱いのようにも感じられるかもしれませんが、これが成立し、視聴者にも受け入れられるような空気感を作ることができれば、傷病など特別な事情で通常の参加方式が難しいプレイヤーにとっても「大会に出場できる」と感じられる環境を作ることに繋がる可能性もあります。

 

 

奇しくも、コロナ禍では殆ど全ての大会がオンライン大会やリモート出演で実施され、そのノウハウが蓄積されています。今後はバーチャルな世界との融合がeスポーツの新たな風景となっていくかも知れません。

 

 

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