エンジニアが知っておくべきECサイト構築のイロハ

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新型コロナウイルスが社会に与えた変化は多々ありますが、物理的な移動の制限による消費の仕方の変化が大きくECサイトへの注目・需要の高まりもその一つです。

そこで、複数回にわたり、今後も引き続き成長し、開発案件も増えていくと見込まれている、ECサイトをテーマに取り上げたいと思います。第一目の今回は、「ECサイト構築のイロハ」をご紹介したいと思います。

 

■EC市場の推移について

まずは簡単に日本におけるECの経緯を振り返ってみましょう。日本でEC事業が本格的に始まったのは1990年代後半です。楽天市場は1997年に公開され、Amazonの日本語サイトは2000年に開始となりました。「Windows 95」が日本で発売が開始されたのが、製品名通り1995年だということを考えると、インターネットの歴史とほぼ同じということになります。その後PCの一般化やスマートフォンの普及によって、性別・年代を問わずインターネットユーザーが増加し、日本のECの市場規模は年々拡大しています。
これまでの日本では、諸外国と比べてEC化率が低い傾向にありましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、今後あらゆる産業でEC化が進むことが考えられます。日本でもECの利便性が広まった今、コロナ禍が収まった後も、ユーザー・事業者はこれまで以上にECの利用頻度を高めることが予想されますので、エンジニアにとってもこの流れは気に留めておくべきでしょう。

 

 

■EC構築方法の種類について

現在、エンジニアが把握すべきECの構築方法には、クラウドサービス、オープンソースと有償のパッケージ、スクラッチ開発があり、それぞれ導入のしやすさやコスト、開発工数、汎用性、拡張性などが異なってきますので、要件によって適切な選択が必要になります。

 

■クラウドサービス
ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)とも呼ばれ、ECサイトとしての機能をインターネット経由で利用するサービスです。
・既に構築済みの汎用的なECシステムを利用するため、手間をかけずに用意することができる
・サーバーなどインフラ調達が不要なため、導入コストが安い
・機能カスタマイズがほぼ出来ない
・デザインに縛りがあるケースが多く自由度は低い
・基幹システムとの連携が難しいケースも多いため大規模ECサイト構築には向いてない
【主なサービス】
・MakeShop for クラウド
・カラーミーショップ
・BASE
・futureshop

 

■オープンソース
一般向けに無償で公開されているソフトウェアであり、ECサイト構築の技術さえあれば誰でも利用することができるものです。
・構築技術さえあればECサイト構築の自由度は高く、色々な機能や好きなデザインを実装可能
・有償のパッケージと違い、自前で構築技術さえあればインストール費用等は発生しない
・オープンソースは基本的にサポートされていないソフトウェアなため、システム上の問題が発生した場合もすべて自己責任となる
【主なサービス】
・EC-CUBE
・magento(世界シェア1位のオープンソースECパッケージ)
・WordPress+WelCart(プラグイン)

 

■パッケージ
ECサイトとしてある程度フレームワークが完成しているソフトウェアを購入し、独自なカスタマイズを加えて構築する方法です。
・パッケージ内で柔軟なカスタマイズが可能であり、かつデザイン面などでも自由度が高いため、大規模なECサイト構築に向いている
・インフラ環境や構築の仕方によっては、トラフィックの大幅な増減に耐えることも可能
・構築費用が比較的高め
・年間保守費用やメンテナンス費用などランニングコストも多く発生する
【主なサービス】
・ECbing
・Orange EC
・STAR SERIES
・ebisumart
・コマース21

 

■スクラッチ開発
パッケージや既存システムを利用せず、ゼロベースでオリジナルのECサイトを構築する方法です。
・パッケージ以上にECサイト構築の自由度が高く、カスタマイズにより要件を完全に
満たすことができる
・外部との連携も比較的自由にできる
・スクラッチ開発は構築費用が最もかかる傾向があり、構築期間も最も多く発生する

 

■その他 – 構築において意識すべき決済サービスの選定 –
エンジニアがお客様と要件定義、設計段階で決済まわりの検討をする際に、お客様やその先のユーザーにとって条件の良い決済サービスや要望に沿うサービスと連携できるかどうかは重要です。また、最近は決済手段が多様化しており、どの決済サービスがどの程度まで対応しており、構築したECシステムと連携できるかどうかを把握しておくことは、エンジニアにとっても大事なポイントとなります。
代表的なものには以下のようなサービスがあります。
・EC-CUBEペイメント
・SBペイメントサービス
・楽天Pay
・GMOペイメントゲートウェイ
・ソニーペイメントサービス
・ヤマトクレジットファイナンス
・Paypal
・STORESターミナル(旧コイニー)

 

 

■ECサイト構築のための必要スキル

開発方法ごとに必要なスキルの種類やレベルは変動しますが、主には下記のようなスキルがあります。

■クライアントサイド言語
HTML、CSS、JavaScriptなどユーザー側のパソコンやスマホなどで処理されるプログラムに必要な言語

■サーバーサイド言語
カート機能やユーザーログイン機能などの構築に必要な言語
「EC-CUBE」などPHPで作られているサービスは多く、細かいカスタマイズのためにはPHPを使用することになります。スクラッチ開発にはPHPの他、JavaやRuby・Pythonなどが使用されます。

■サーバー知識/データベース知識
オープンソースを利用する場合は、Linuxサーバーを選択することが多いため、Linux OSに対する知識や、操作するコマンドなどの知識・スキルが必要です。また、データベースのためにインストールする「MySQL」や「PostgreSQL」などの知識も必要になります。

 

 

■越境ECを中心とした新たな流れ

日本におけるECは基本的に国内での売買を前提としていましたが、新型コロナウイルスによって受けた影響により、以前のように観光で日本に来ていた海外の方に対して、渡航制限のある中、いかに日本の製品を買ってもらうか、という課題が生まれており、もともとあった海外需要にも目を向ける流れが生まれつつあります。
そのような背景において、越境EC構築で注目されているサービスについて、一例をご紹介します。

 

■shopify
https://www.shopify.jp/
全世界175カ国で展開しており、100万店舗以上のストアで利用されている世界最大のECプラットフォームで、グローバルでの流通総額は10兆円にものぼります。ベーシックプランは月額29ドルと非常に安価なサブスクリプションモデルのEC構築向けクラウドサービスです。

 

■magento(マジェント)
https://magento.com/
magentoはオープンソースのECプラットフォームとして世界シェアでトップを誇っています。
日本企業(特に中小企業)が会社のコーポレートサイト等を作る際によく、WordPressを選択するような感覚で、欧米圏やオセアニア地域では、ECサイトを運営する場合はまずはMagentoを選択するというケースが多いくらい、海外では非常に有名なソフトウェアです。
Magentoはオープンソースプロジェクトとして公開されているということもあり、今後エンジニアとしてどのようなスキルの強みを持っていくか、という視点では今のうちから知識を蓄え始めることも今後のためには良いと思われます。

 

■Instagram(Shop Now)
画像投稿型SNSとして有名なInstagramですが、2018年にInstagram内で購入が完結できるようになり若者を中心にショッピング機能の利用者が増えてきています。マーケティング視点では、ソーシャルでのエンゲージメントの醸成〜実購買までを通関で行える土壌ができたことは非常に有効です。EC-CUBEなど他のサービスとの連携も可能になってきていますので、今後も非常に注目です。

 

■まとめ

新型コロナウイルスの影響によって、日本でもデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは加速しています。地理的な壁を乗り越えるデジタルソリューションの進化を担うIT業界では常に新しい技術やサービスが登場しています。物理的な移動の制約が発生した今だからこそ、逆にデジタル領域では日本と海外との垣根は無くなったと言えるでしょう。今後も成長を続けるであろうEC領域において、今までの知識の習得だけではなく、新しい情報も吸収し、エンジニアとしてのスキルアップを目指していただけたらと思います。

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