ライブ配信の有料化も始まる!持続性あるeスポーツのエコシステム構築に向けた取り組みの数々

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かつてスポーツ観戦と言えば地上波中継が当たり前でしたが、近年は配信サービスでの有料視聴も一般化しており、プロ野球やJリーグであってもテレビで気軽に観戦できる機会は段々と減少しつつあります。

 

 

その背景にあるのが大会主催者にとっても貴重な収入源となる「放映権」の存在で、昨今は各配信サービスが新規顧客獲得のため、あらゆるスポーツの放映権を争う状況となり「放映権ビジネス」は過熱。2026年に開催される野球の世界大会「World Baseball Classic(WBC)」では、150億円前後と推定される日本国内向けの放映権を大手配信サービスの「Netflix」が購入し、独占配信を行うことも話題となっています。

 

そして、こうした「有料視聴」の波は、少しずつeスポーツの世界にも押し寄せつつあります。無料配信が当たり前だったeスポーツ大会に起こっている変化とその背景、そして収益構造と特徴について紹介します。

 

脱「スポンサー依存」へ、有料ライブ配信も

 

近年急激に競技として、そして興行として注目を集めるeスポーツですが、ゲーム大会として誰もが無料でオンライン視聴できる文化が根付いている点は大きな特徴であり、今もなおその風潮は強く残っています。

 

無料配信は広告収入やサブスクライブ、「投げ銭」などによって収益は得られるものの、それだけで大規模な賞金や運営費のすべてを賄うことは出来ません。多くの公式大会は、IPホルダーが自社タイトルの人気を高めるための「宣伝広告費」として出資する状況にあり、eスポーツ市場に関する統計データでも、市場における収入の過半数はスポンサー料が占めているという「スポンサー頼み」の状況が続いています。

 

スポンサー収入の多さはeスポーツ業界への注目度の高さが表れていると考えられる長所でもありますが、同時に単体での黒字化が達成できておらず、長期的な安定性に欠くビジネスモデルになっていると指摘されることも少なくありません。

 

 

こうした状況を変えるため、ここ数年で大会視聴の有料化を行うケースも見られるようになってきています。日本国内で代表的と言える例が人気対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」の競技シーンです。国内公式プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP」ではレギュラーシーズンは無料配信となっているもののプレイオフ以降は有料配信となり、約1ヶ月後に無料でアーカイブが公開される仕組みが2024年度のシーズンから導入されています。

 

そして2026年3月に日本の両国国技館で開催される世界大会「CAPCOM CUP 12」について、決勝戦のライブ視聴有料化を発表。同大会は昨年まで全日程が無料でライブ配信されていましたが、この有料化については発表の際に「eスポーツ事業を中長期的に持続可能な形で推進し、参加選手/チームをはじめ、関係パートナーの皆様や関連事業分野への再投資を通じて、国際的に競争力のある大会へ成長させていくためである」と述べられています。

 

視聴料によって大会運営が支えられる形式はファンが直接シーンを支えるという点でスポーツやエンターテイメントに近く合理的なモデルではある一方、「視聴料はどの程度が妥当か」という価格観はまだ定まっておらず、無料視聴が当然だったファンに広く受け入れられるためには時間と努力を要するのは想像に難くありません。

 

また、こうした視聴有料化は既存ファン層しか参加しない構造であり、新規ファン層の獲得に繋がらないことも既にスポーツ界では課題とされています。eスポーツについても「有料化は時期尚早ではないか」と指摘されることもありますが、国内外で一部の大会・イベントを有料配信化するケースは見られるようになってきており、将来を見据えてチャレンジされ始める段階になってきているというのが、近年のeスポーツ界の情勢と言えるでしょう。

 

賞金だけでなくeスポーツ関連コンテンツの「分配金」で持続させていく

 

有料配信以外にもスポンサーや広告料に頼らない形でeスポーツのエコシステム(収益構造)を支えるための取り組みはいくつか存在しており、その代表的な例が、グッズやコンテンツの売上です。

 

しかし「ゲームそのものやコンテンツの売上は、あくまでもゲームの開発・運営に充てられる」というのがeスポーツ以前にゲーム開発におけるエコシステムの大前提であり、eスポーツに関心のない人も購入している可能性のある売上を大会の賞金や運営費に回すことはできません。

 

そこで近年登場しているのが、ゲーム内におけるeスポーツ関連デジタルコンテンツの販売です。公式大会に参加しているチームのロゴやイメージカラーを反映したスキンを制作して販売し、その売上数に応じた金額をチームに還元することで、賞金とは別の形で参加チームの持続性を高める狙いが持たれています。

 

 

 

こうしたコンテンツは販売の際に「売上の〇%がeスポーツ事業に活用されます」「売上に応じてチームに還元します」と明記されており、ファンにとってもゲーム内で好きなチームをアピール・応援できるという点で人気のある取り組みです。

 

世界的にプレイされているMOBAタイトル『League of Legends(LoL)』を開発するRiot Gamesも「エコシステムの現代化」として、2026年からeスポーツにおける賞金制度を刷新。一部公式リーグにおける順位賞金を撤廃して、コンテンツ売上などによる分配金を主体とするシステムへと変更しており、タイトルの注目度を高めるような人気チームや中位下位のチームにも収益が行き渡るよう工夫しつつ、国際大会での賞金制度は維持することで、トップチームが一層大きな金額を手にするチャンスも残しています。

 

eスポーツを持続性のあるものにしていくためにはIPホルダーが安定した収益を確保しつつ参加チームへ収益分配できるエコシステムが不可欠です。余裕あるシステムが構築できれば賞金額の引き上げも可能になり、さらに新たなチームの参入を呼び込める一層魅力的なシーンへと成長していくことも考えられます。

 

ゲームをプレイしていなくても、無料で誰もが観戦を楽しめるのがeスポーツの魅力のひとつではありますが、娯楽の選択肢が増えた現代で長期的な安全性を獲得するためには、有料での視聴やデジタルコンテンツの購入と言ったファンからのサポートが求められるようになっていくのは間違いないでしょう。

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