モダナイゼーションとは? 意味や手法、マイグレーションとの違いをわかりやすく解説

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DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、AI、クラウドといった技術革新が加速する現代において、企業のITシステムは大きな変革期を迎えています。しかし、長年使ってきた古いシステムが、その変革の足かせとなっている企業は少なくありません。

 

そこで注目されているのが「モダナイゼーション」という取り組みです。

 

ここでは、モダナイゼーションの基本的な意味や、なぜ今それが必要とされるのか、また、混同されがちなマイグレーションとの違い、そして具体的な手法などをわかりやすく解説します。

 

モダナイゼーションとは?

最初にモダナイゼーションや、その対象となるレガシーシステムの基本を整理しておきましょう。

 

モダナイゼーションの意味

モダナイゼーション(Modernization)とは、もともと「近代化」「現代化」を意味する言葉です。古いものを現代の状況に合わせて新しくする、といったニュアンスで使われます。

 

ITの分野におけるモダナイゼーションは、企業が長年使用し老朽化した既存のコンピューターシステム(レガシーシステム)を、最新の技術やプラットフォーム、ビジネス環境に適応した形に最適化・刷新することを指します。

 

重要なのは、これが単なる「システムの総入れ替え」だけを指すわけではないことです。モダナイゼーションは、既存のシステムやデータといった「IT資産」を可能な限り活用しつつ、現在のビジネス要件に合わせて価値を最大化する取り組みといえます。

 

刷新の対象となる「レガシーシステム」とは?

レガシー(Legacy)は日本語で「遺産」と訳しますが、IT分野では多くの場合「時代遅れの技術や仕組みで構築された古いシステム」といった、ややネガティブな意味合いで使われます。

 

具体的には、1980年代~90年代に導入されたメインフレームや、COBOLなどの古い言語で開発された基幹システムなどが該当します。また、導入は比較的新しくても、長年の運用によりシステム内部が複雑化・ブラックボックス化してしまったものをレガシーシステムと呼ぶことがあります。

 

これらのシステムは、かつては企業の基幹業務を支えてきました。しかし、現代のビジネススピードや技術革新には対応しきれず、さまざまな課題を抱える原因となっています。

 

なぜ今モダナイゼーションが必要? 放置するリスクと「2025年の崖」

なぜ今、多くの企業がモダナイゼーションに取り組む必要があるのでしょうか。それは、レガシーシステムを使い続けることが、企業の競争力にとって重大なリスクとなり得るからです。

 

経営課題となる「2025年の崖」

モダナイゼーションの重要性が広く認識されるきっかけとなったのが、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」です。

 

このレポートは、多くの企業がレガシーシステムの課題を克服できない場合、DXの推進が困難になるだけでなく、2025年以降に年間で最大12兆円にも上る経済的な損失が発生する恐れがあることを示しました。この問題を「2025年の崖」と呼びます。

 

レポートでは、2025年頃までに複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、理解のあるベテラン技術者が次々と引退すること、システムのサポート終了も重なることなどが指摘されており、それらがコスト急増の原因になることが示唆されています。

 

モダナイゼーションは、この「2025年の崖」を克服し、企業がDXを推進するための不可欠な戦略として位置づけられています。

 

出典:DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜|経済産業省

 

レガシーシステムを放置するリスク(セキュリティ・コスト・競争力)

レガシーシステムを放置することには、数多くのリスクが潜んでいます。

 

第一に、セキュリティリスクの増大が懸念されます。サポートが終了した古いOSやミドルウェアを使い続けると、セキュリティ上の脆弱性(セキュリティホール)が発見されても修正プログラムが提供されません。

 

この結果、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクにさらされ続けることになり、企業の信頼失墜に直結する深刻な問題となり得ます。

 

第二に、運用・保守コストの増加が挙げられます。老朽化したシステムは障害の発生頻度が高くなる傾向があり、その維持・保守に多額の費用がかかります。また、COBOLなどの言語に詳しい技術者の高齢化や引退が進んでおり、人材の確保も難しくなっています。

 

結果として、IT予算の多くがシステムの維持・保守といった「守り」に費やされ、新しい価値を生み出す「攻め」の新規開発に投資できなくなってしまうのです。

 

そして第三の問題が、競争力の低下です。古いシステムは、新しいサービスや機能の追加が困難なことが多く、AI、IoT、ビッグデータ解析といった最新技術を活用することが難しくなります。その結果、市場の変化に応じた迅速なサービス改善にも対応できず、他社との競争で後れを取る恐れがあるのです。

 

モダナイゼーションと類似用語との違い

ここでは、モダナイゼーションと混同されがちな「マイグレーション」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」との違いについて解説します。

 

「モダナイゼーション」と「マイグレーション」の違い

モダナイゼーションとマイグレーションは、どちらも既存のシステムを扱う取り組みです。しかし、「目的」と「焦点」が異なります。

 

「マイグレーション(Migration)」は日本語では「移行」を意味し、システムやデータをオンプレミスなどの古い環境から、クラウドなどの新しい環境に移すことを指します。ハードウェアの老朽化対応やコスト削減が主な目的で、既存の機能やシステム構造は原則として維持されます。

 

一方の「モダナイゼーション(Modernization)」は「近代化」を意味し、既存の資産を活用しつつ、システムやアプリケーションを最新の技術で最適化・刷新するものです。パフォーマンスの向上や新技術への対応による柔軟性確保が主な目的となり、アーキテクチャーの再設計や機能そのものの向上も含まれます。

 

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」との関係性

もう一つ、DX(デジタルトランスフォーメーション)との関係性です。

 

DXの目的は、データとデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセス、さらには企業文化や組織全体を根本から変革し、競争上の優位性を確立することにあります。単なるIT技術の導入(デジタル化)ではないのです。

 

そして、DX推進の足かせとなっていたのがレガシーシステムでした。したがって、モダナイゼーションはDXを推進するための基盤整備とも言えるのです。

 

モダナイゼーションがもたらす価値とは? 主な導入効果

モダナイゼーションは単にリスクを回避する守りの施策ではありません。企業の成長を加速させる「攻め」の側面について見ていきます。

 

俊敏性の向上とデータ活用の促進

モダナイゼーションによってシステムの柔軟性が改善されると、時代の変化に迅速に対応できるようになります。

 

例えば、古いシステムでは数ヶ月かかっていた新機能の追加や仕様変更が数週間、あるいは数日単位で可能になるため、競合他社に先んじて新しいサービスを市場に投入することも可能になるでしょう。

 

レガシーシステムでは部門ごとに分断されがちだったデータの連携・統合もしやすくなります。全社的なデータ分析やAI活用が進むことで、データに基づいた意思決定や、新たなビジネスモデルの創出がしやすくなります。

 

パフォーマンスとセキュリティの強化

最新の技術やプラットフォームへ刷新することで、システム全体の処理速度が向上し、応答時間が短縮されます。これにより、顧客体験(UX)の向上や、業務効率の改善などが期待できるでしょう。

 

また、セキュリティの根本的な強化にもつながります。サポートを受けられる最新の技術基盤に移行することで、脆弱性に迅速に対応できるようになり、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクを大幅に軽減できます。

 

運用・保守コストの削減

モダナイゼーションを行うことで、レガシーシステムを維持するためのハードウェア保守費用や、古い言語を扱える専門技術者の人件費など、高止まりしていた運用コストを大幅に削減できます。

 

特に最新のクラウドサービスをうまく活用すれば、サーバーの構築や運用管理、障害対応といったインフラ面のオペレーションが自動化・効率化できます。

 

これにより、インフラ担当者の負担が軽減されるだけでなく、削減したコストを新しい価値を生み出すための投資に回せます。

 

モダナイゼーションの主な「手法」

モダナイゼーションを実現するための具体的なアプローチについて、代表的な5つの手法を紹介します。

 

リホスト(Re-host)

「リフト&シフト」とも呼ばれる基本的な手法です。既存のアプリケーションのコードや設計に手を加えず、そのまま新しいインフラストラクチャー(主にクラウド環境)に移行し、運用します。

 

迅速かつ低コストで実施できることがメリットで、老朽化したハードウェアから脱却したい場合に適しています。ただし、アプリケーション自体の古い設計や問題点はそのまま引き継がれるため、根本的な課題解決をしたい場合は向かない可能性があります。

 

リライト(Re-write)

既存システムの古いプログラミング言語を、JavaやPythonなどの新しい言語で書き換える手法です。

 

メリットはコードが統一され、保守性や将来的な拡張性が大幅に向上することです。自動変換ツールを活用することもありますが、その場合、元のシステムの設計を分析する必要があるため、時間と技術力が求められる場合があります。

 

リファクター(Refactor)

外部から見たアプリケーションの機能や振る舞いは変えず、内部のコード構造やアーキテクチャーをクリーンアップして再構築する手法です。

 

リライトとは異なり、使用する言語はそのままであることが多くなっています。主な目的はコードの可読性や保守性を高め、将来の機能追加やバグを修正しやすくすることです。

 

リビルド(Re-build)

既存システムの仕様をベースにしつつ、コードは流用せずにゼロベースで新システムを作り上げる手法です。

 

最新技術のメリットを享受でき、柔軟なカスタマイズが可能になる反面、他の手法と比較すると設計・開発のコストや工数が大きくなる傾向があります。

 

リプレース(Replace)

既存のシステムを全面的に廃棄し、新しいパッケージソフトウェアやSaaSなどのクラウドサービスに置き換える手法です。

 

システム刷新と同時に業務プロセス自体の大幅な見直しを行えるため、DX推進に大きな効果が見込めます。その一方、初期コストや新しい業務フローへ移行するための現場の負担が大きくなりがちです。

 

モダナイゼーションで失敗しないために押さえるべきポイント

モダナイゼーションは大規模なプロジェクトになることが多く、慎重な計画が求められます。ここでは、プロジェクトを成功させるためのポイントを紹介します。

 

既存システムの詳細な分析と課題の明確化

モダナイゼーションを進める上で最初に行うべきことは、現状の正確な把握です。

 

まずは、システムの内部構造や採用している技術をはじめ、データの流れや他システムとの連携状況などを洗い出し、全体像を可視化します。

 

この分析を通じて、現行システムの強みと弱みを評価し、「刷新が必須な領域」「維持すべき領域」などを明確に切り分けることが、モダナイゼーションを成功させるための第一歩となります。

 

ビジネス要件の明確化と現場との合意形成

「なぜモダナイゼーションを行うのか」という目的意識を、明確に共有することが重要です。目的がコスト削減なのか、新サービス開発のスピードアップなのかによって選ぶ手法は変わります。

 

また、システムを刷新する際は、実際にシステムを利用する現場担当者との密なコミュニケーションが欠かせません。現場から「これまで通りの機能や仕様でないと困る」といった声が上がることも考えられますが、古い業務のやり方を単に残すのではなく、非効率な業務プロセスを変革していく視点も大切です。

 

綿密なデータ移行計画と徹底的なテスト

業務の根幹を支える「データ」の移行は、モダナイゼーションにおいて失敗が許されないプロセスの一つです。

 

新システムへ移す前にデータの不備や重複を整理(クレンジング)し、どのような形式で移行するかというプランを詳細に策定する必要があります。

 

また、新しいシステムが求められる要件を確実に満たしているか、移行したデータが正しく処理されるかを保証するため、徹底的なテストと検証も不可欠です。

 

可能な限り実際の業務環境やデータを再現したテストを行い、移行後のトラブルを最小限に抑えることが重要です。

 

まとめ

モダナイゼーションは、単なる古いシステムの更新作業ではありません。DXを推進し、企業の競争力を将来にわたって維持・強化するための戦略的な投資といえます。

 

また、単にモダナイゼーションといってもいくつかの手法があるため、どの手法が適しているかを丁寧に検討し、慎重に準備を進めることが成功に不可欠となります。

 

多くの企業がレガシーシステムの課題に直面している今、ITシステムの現状をあらためて見直し、将来を見据えた戦略的な一歩を踏み出すことが求められているといえるでしょう。

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