代理人や「サラリーキャップ」制度も登場!eスポーツ界の移籍市場の現在

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スポーツの世界では冬がオフシーズンにあたる競技が多く、選手の移籍が活発に行われる季節と言えます。プロ野球などではこの期間における選手の争奪戦を「ストーブリーグ」と表現することもあり、次のシーズンに向けての戦いは既に始まっていることを意味しています。

 

そして、eスポーツの競技シーンでも冬がオフシーズンとなっているタイトルは多く、年末になると新たな選手獲得のニュースに加え、退団や引退の発表も飛び交います。

 

今回は、この時期ホットなeスポーツ界の移籍や契約事情について確認していきましょう。

 

 

エージェントや「サラリーキャップ」の導入が進む

 

一部のタイトルでは国内向けに「プロライセンス」が導入されていますが、その他の多くのタイトルではチームと契約することが「プロであること」を公に認められるためのひとつの大きな条件と言えます。

 

また、ライセンス保持者もライセンスの定期更新を繰り返すことで「プロ選手」と公式に認定され続けることは可能ですが、海外への遠征や大会参加以外の活動を行う場合はチームからのサポートが不可欠であり、現在は実質的に「チームとの契約の有無」がプロゲーマーとしての認定要件になっていると言えます。

 

黎明期にはSNSを通じて選手と直接契約のやり取りをすることも珍しくなかったそうですが、現在はしっかりとルールが整備されており、既にチームに所属している選手に対してチームを介さず直接移籍などの勧誘・交渉を行うことは「タンパリング」と呼ばれる禁止行為になっています。

 

そんな選手とチームの契約ですが、プロスポーツと同様に個人事業主としての委託契約になり、条件交渉もあれば、より良い条件を出すチームへの移籍も発生します。誰もがアマチュアからスタートするため契約交渉についての金額の感覚や専門知識を得る機会はなく、昨今はそうしたギャップを補うため、eスポーツ選手もスポーツ界と同様に交渉を専門とする代理人(エージェント)を立てるケースも多くなっています。

 

代理人はチームとの契約で間に入って条件交渉を行ってくれる存在です。トップ選手の代理人は複数のチームからのオファーを天秤にかけながらより良い条件を引き出す駆け引きを行うこともあり、対してアマチュア選手の代理人がチームへの「売り込み」も代行することもあるなど、選手の契約周りの幅広い分野を担当する専門職と言えます。

 

 

しかし、代理人の報酬は契約内容によるインセンティブが設定されていることもあり、選手の価値を出来るだけ高めようと、どうしても選手を欲しているチームの足元を見た高額な条件を設定するなどの「釣り上げ」が起こり、マネーゲームへと発展する可能性もはらんでいます。

 

資金力のあるチームだけが一方的に良い選手を獲得できるような状況にならないよう、契約交渉の過熱を制限するための制度が「サラリーキャップ」です。これはチームが契約している選手のサラリー(給料)総額に上限を設けることで平等な競争を促すもので、高額な選手を何人も抱えることは出来ず、自然と若い選手がチームに迎えられることも多くなるよう考えられたシステムです。

 

中には一定期間の在籍を条件にサラリーキャップの対象から外すなど、継続してチームに貢献した選手を守るための例外措置も設けられているケースもあります。これは「何年も在籍している人気ベテラン選手の年俸がネックになり放出せざるを得ない」といった事態を避けるためで、競技のための平等な競争とファン心理のバランスを取るための措置と言えるでしょう。

 

育成から契約金ビジネスに発展する可能性も?

 

選手の退団や加入を「移籍市場」と表現することもあるように、ここでビジネスが発生しているのは選手だけではありません。

 

チームも選手と契約を結びながら「この額を支払えば契約期間中の移籍を認めます」という「移籍金」を設定することが可能です。これによって選手の引き抜きを牽制しつつ、それでも移籍する場合はチームに資金が入るため、次の選手獲得に繋げられるという構図です。

 

eスポーツ界ではまだまだ単年契約の選手も多く、契約満了でフリーの立場になってから移籍することが多いため、移籍金が発生するケースはそこまで多くないと予想されますが、スポーツ界では若い選手をより上位のチームへと移籍させる「移籍金ビジネス」も主流になりつつあります。

 

「将来有望な若手選手を主力に育て上げ、他のチームへの移籍で移籍金を得る」というのは資本力の低いチームやTeir1のリーグに在籍していないチームにもチャンスのあるビジネスモデルと言えます。

 

 

特にeスポーツ界はまだまだアマチュアプレイヤーからプロへの門戸が広く開かれている状態であり、一般公募でテストする「トライアウト」や、直接のスカウトで若手選手が発掘されるケースもまだまだ多く見られます。昨今はプロチームが「ユース」や「アカデミー」の名称で育成機関を構え、10代のプレイヤーと契約しつつ、年齢規定や学業との兼ね合いがクリアされてからトップチームへと「昇格」させる仕組みが生まれています。

 

 

アカデミーや控えに有力な選手を数多く抱えているチームは「レンタル移籍」として期間限定で別チームで活動させる例も増えており、最終的にレンタル先のチームにフィットすることでそのまま完全な移籍へと移行することもあります。

 

人材の流動性や育成組織の存在などを考えると、eスポーツのプロ化・移籍に関する仕組みはプロサッカー界が近しいと言えます。そんなサッカーの世界には、選手が国際移籍する際に発生した移籍金の一部を、その選手が10代の頃に所属していたチームや学校などに還元するルールも存在します。選手の移籍金が何百億円という規模になるサッカー界だからこそのシステムではありますが、eスポーツの世界でも選手を発掘し育て上げたチームにメリットとして還元される仕組みがあれば、さらに健全な発展を目指せるのではないでしょうか。

 

 

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