プロゲーマーのマネタイズ
今では日本でもすっかりおなじみの言葉になりつつある「プロゲーマー」。ここ数年は日本で大規模な世界大会を実施するタイトルも増え、一段とeスポーツ人気の高まりが感じられるようになりつつあります。
そんな日本のeスポーツシーンですが、国内でeスポーツという言葉が聞かれ始めた頃は「日本の法律では高額な大会賞金が出せない」と指摘されることもあり、プロゲーマーが活動していくための環境が整っていない国とも考えられていました。
しかし、現在はプロライセンス制の導入などもあり、プロゲーマーという職業が成立する仕組みが構築されています。今回は発展を続けるeスポーツ界における、プロゲーマーのマネタイズ事情を紹介します。

プロゲーマーの収入源として最初に挙げられるのは、もちろん「固定給」の存在です。大規模なプロシーンが展開されているタイトルであれば、プロチームに所属して活動する期間に給料が支払われる「固定給」のケースが多く、その契約単位はさまざまで、年単位で更新が行われる場合もあれば、公式戦が実施されるシーズン数か月間の契約の場合もあります。シーズンを終えてオフシーズンに入れば契約満了となり、フリーとして次のオファーを待つという場合もあります。
そんなプロ契約期間中に、大会で優れた成績を収めると「賞金」が手に入ります。現在は「プロゲーマーという仕事に対しての“報酬”とみなすことで法的に問題なく受け取れる」との理解が広まり、国内でも高額な優勝賞金が設定された大会が開かれています。
このうち選手の“取り分”については、チームとの契約によって大きく事情が異なるため一概には言えませんが、選手のモチベーションにも関連する部分であり、努力に見合った額が受け取れるよう設定されているのではないかと推測されます。
そして、近年はプロチームでもグッズの販売を行うケースが増えており、人気選手であればユニフォームや選手個人のグッズ売り上げによる「ライセンス収入」も見込めます。ごく一部ではありますが、選手がデバイス開発などにアドバイスして「監修料」を得られることもあります。
また、チームにとって大きな収入源である「スポンサー料」ですが、なかには選手個人でスポンサードを受けるケースもあります。また、金銭ではなくデバイスなどゲームに必要な物品を提供してもらう形のスポンサー契約も多くなっています。
こうした一般的なプロスポーツに近い仕組みに加え、eスポーツ界ならではの収入源と言えるのが動画や配信を通じた「広告・サブスクライブ収益」です。配信を専門とするストリーマーと比較すると規模感は異なりますが、世界的なトップ選手ともなると数万人の視聴者を集めることもあります。引退後にストリーマーへ転向する足掛かりにもなることを考えると、規模に関わらず重要な収入源と言えるでしょう。

そして、配信やSNSを通じて商品やサービスをプロモーションする「案件」を請け負うこともあり、これも「広告収入」のひとつの形です。チームでのイベント出演やアマチュア大会のゲストなどでは「出演料」も得られ、こうした要素をふまえても、プロゲーマーは“スポーツ選手とインフルエンサーのハイブリッドな職業”と言える構造になってきています。
プロゲーマーの定義にもさまざまあり、ここまではeスポーツ競技へ専念して生計を立てている“専業プロ”の場合を見てきましたが、現在も本業となる仕事をこなしながら大会へ出場する“兼業プロ”も少なからず存在します。
兼業でプロチームと契約している選手は、格闘ゲームやデジタルカードゲーム、オートチェス系など、本業とのバランスを取りながら練習ができる個人競技に多くなっています。特に現在のような競技環境が構築される以前から活動していたベテランのプレイヤーが、eスポーツが盛んになった後もスタイルを変えずに大会へ参加を続けているケースが多く見られます。
兼業選手の活動方法はさまざまで、固定給を受けとりながら配信活動なども行うプレイヤーもいれば、給料は受け取らずに滞在費や渡航費、デバイス提供などのサポートだけを受けて大会に参加するプレイヤーも存在します。企業によっては副業規定が定められていることもあり、兼業プレイヤーのマネタイズは本業に軸を置いている場合が多くなっているようです。
そして、現役のプロゲーマーだけでなく、元プロ選手に多い収入源のひとつが「コーチング」です。近年は高校生向け大会の増加など学生eスポーツシーンが活発になっており、部活動のコーチなど指導者需要が高まっているため、チームでのプロ活動と並行してコーチングを行うなど、新しい“働き方”も生まれています。
このように、数年前とは比べ物にならないほどプロゲーマーのマネタイズ事情は変化し、整備されつつあります。ただ、今回紹介したような契約・制度の下で活動できている選手は国内でもトップチームの場合のみで、中には海外大会参加のためにクラウドファンディングを行うなど、工夫しながら活動を続けているチームや選手もまだまだ存在します。
現在の競技シーンで活躍する選手はほとんど全員がどこかのチームに所属しており、チームのマネタイズが選手のマネタイズに直結するような状態にもあります。チームにとっての大きな収入源であるスポンサー料を考えても、そして選手個人での配信活動などを考えても、eスポーツ選手には発信力・影響力が求められるという構図は今後も変わらず続いていきそうです。