2025年のeスポーツシーンを振り返る

eスポーツも「日本開催」で盛り上がり 一方で有料化の波も

#eスポーツ

2025年も残すところあとわずか。今年は大阪・関西万博が開催され、世界から日本が注目される機会も多い一年でした。

 

そして世界との繋がりと言えば、グローバルに展開されるeスポーツ業界は今年も大いに盛り上がり、もはや「eスポーツ」という言葉の響きに真新しさを感じなくなってきたという方も少なくないのでは。

 

今回は国内の話題を中心に、2025年のeスポーツシーンを振り返ります。

 

 

日本で多数の国際大会が実施

 

2025年は日本でeスポーツの国際大会がいくつも開催された年になりました。

 

まず1月末に札幌の「大和ハウス プレミストドーム」にて、人気バトルロイヤルFPS『Apex Legends』の世界大会「Apex Legends Global Series(ALGS) Championship」が開催。同タイトルの世界大会はアジアでは初開催となりましたが、5日間で延べ3万4千人を動員し、国内でも社会現象と呼べるほどの大ブームを巻き起こしたタイトルの人気が健在であることをアピールしました。

 

日本チームでは大阪に拠点を置く「ENTER FORCE.36」が、韓国人選手3名のチーム編成で予選から奮戦し最終的に15位入賞。そしてイギリスの名門チームである「FNATIC」も日本人選手3名を起用した編成で挑み、APAC(アジア太平洋)リーグから出場。地元の声援を受けて10位入賞と大いに大会を盛り上げました。

 

 

そして3月には東京・両国国技館にて対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』の国際大会「Capcom Cup 11」が開催。こちらも意外にも日本では初開催となった年間最大の大会でしたが、圧倒的なホーム感の中で個人戦・団体戦ともに日本勢が優勝し“ストリートファイター強豪国”としての面目躍如と言える結果を残しました。

この両大会は2026年も同会場での開催(「ALGS Championship」は2027年大会まで)が決定しており、盛り上がりの観点だけでなく、運営面や選手の競技環境でも継続が望ましいと言える内容で開催できていたことが伺えます。

 

また、8月には『VALORANT』のアジア地域リーグ「VCT Pacific」の夏シーズンプレイオフ決勝が東京で開催。同タイトルは2023年に年間最大の大会「Masters」も開催された実績があり、規模は異なれど2年ぶりの国際大会開催に。残念ながら日本勢は進出できませんでしたが、それでも多くのファンによって盛況となったのは『VALORANT』人気がしっかりと定着していることの証でもあり、今後も大会開催地の候補となり続けていくことでしょう。

 

 

元より日本には大会の会場として使用可能なアリーナや体育館などが数多くあり、海外選手が来日して滞在・練習するための環境が整備できれば、eスポーツの大会を開催するための下地は整っています。

 

近年は各タイトルでも国内大会、あるいはストリーマーイベントなどで大型オフラインイベントがいくつも開催されるようになっており、これらのノウハウの蓄積が国際大会を無事に成功させる一助となっているのではないでしょうか。

 

2026年には愛知県でアジア競技大会が行われ、eスポーツも正式種目に採用されています。こうしたさまざまなジャンル・規模の大会を大きなトラブルなく成功させていくことで、大会を取り仕切るIPホルダーにとって「日本での開催は安心で、かつ集客も見込める」と知れ渡っていけば、今後さらなる招致も期待できると考えられます。そうした潮流を生み出すためにも、2025年は大きな転機になる一年になったのかも知れません。

視聴の「有料化」の波が迫る 求められる納得感や対処

 

一方で、大会に関する話題では「有料配信」が大きな話題を呼びました。

 

きっかけとなったのは『ストリートファイター6』の世界大会決勝の視聴が、2026年の「Capcom Cup 12」で有料化すると発表されたことでした。昨年から国内リーグ戦の決勝戦は有料配信をスタートしていましたが、今回はより大規模な世界大会での変更で、視聴料もやや高額なのではないかという意見も含め、国内外のファンや選手から様々な声が挙がりました。

 

 

有料化については「eスポーツ事業を中長期的に持続可能な形で推進し、参加選手/チームをはじめ関係パートナーの皆様や関連事業分野への再投資を通じて、国際的に競争力のある大会へ成長させていく」ためとその背景がハッキリ発表されており、視聴料を取り入れた健全な収益構造を生み出していくことにあります。

 

従前よりeスポーツのエコシステムはスポンサー料やグッズ販売に偏っていることが指摘されており、eスポーツ大会の有料配信化に挑戦するケースは世界的にもいくつか見られるようになってきています。単体での視聴チケット販売だけでなく、「DAZN」や「Disney+」といったサブスクライブサービスとの契約で独占配信となるケースもあり、スポーツで巻き起こるような「放映権ビジネス」へと発展していく可能性も秘めています。

 

eスポーツが長期的に持続・成長していくためには有料配信化も避けられない流れになるとは考えられますが、やはり前年まで無料で見られていたものが有料化することに対して反発の声があがるのもファン心理としては当然です。

 

有料化が「必要であること」について理解を求め、ファンもそれに寄り添っていくことが理想ではありますが、より良い観戦体験の提供や、無料ではないからこそ可能な「プラスアルファ」のコンテンツの創出など、価格に見合っていると感じられるような“大会配信作り”は、今後さらに深掘りしていくべきテーマとなるのかも知れません。

 

数年前の黎明期と比較すると、一年を通して目まぐるしい変化が起こるような状況ではなくなってきたeスポーツ界。それでも新規参入を含めて成長は続いており、2026年もさまざまなトピックが生まれることでしょう。

 

もちろん、市場の成長だけでなく競技の面でも、日本から世界に羽ばたくプレイヤーがもっともっと増えていくことを期待したいと思います。

 

 

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