最速入力を可能にする「ラピッドトリガー」がトレンド!
見た目も中身も進化するゲーミングキーボード

#eスポーツ

皆さんの手元にもあるキーボード。入力に欠かせないツールであるとともに、PCゲームをプレイする際には操作のための重要なデバイスにもなります。

 

eスポーツ人気の高まりとともにゲームでの使用に特化した「ゲーミングキーボード」も数多く登場し、その機能面も大きく進化を遂げています。

 

カラフルなライティング機能をイメージされる方も多いかもしれませんが、見た目では分かりづらい部分にまでこだわりを持って開発されている最新の「ゲーミングキーボード」事情を見ていきましょう。

 

 

キーボードの基本的な分類

 

一言で「キーボード」と言っても、その仕組みによって大きく種類が分けられます。事務用のPCなどでよく見られるのは、キーボード全体が1枚のシートで繋がっている「メンブレン」タイプで、中にラバーのシートが入っているため打鍵音が小さく、軽い押し心地が特徴です。

 

ノートPCに付属しているキーボードもメンブレンと同様に全体が繋がっており、各キーの下にひし形のスプリングが入った「パンタグラフ」型が主流です。

この2種類のキーボードは、薄く軽量化できるなどのメリットはありますが、ゲームプレイで求められる精密な入力には向かず、ゲーミングキーボードでは採用されません。

 

そこでゲーム向けに取り入れられているのが、キーが1個ずつ独立している「メカニカルキーボード」と呼ばれる仕組みのものです。メカニカルキーボードは、キーごとにスイッチがあり、軸となる部分の素材によっては押した際の反発の強さや音が変わります。素材の色に応じて「赤軸」や「青軸」などと呼ばれており、よく「青軸は音が大きくて気持ちよい」「赤軸は静かで軽い」と比較され、好みに合わせて選べるのも大きな特徴です。

 

そして、キーが独立していることの大きなメリットが「アクチュエーションポイント」の存在です。これは「“キーを押した”と判定されるまでの押し込みの深さ」を表す言葉であり、最後までキーを押し込まずとも入力が認識されるようになっています。

 

「キーストローク」とは、キーが押されたときに沈み込む深さを指し、「キーストローク4㎜」、とは「最後まで押し込むと4㎜の深さがあるキー」となります。

「キーストローク4㎜」を例にすると、アクチュエーションポイントを2㎜に設定していれば、半分まで押し込んだ段階で反応するため、素早い入力が可能です。僅か数㎜の違いでもコンマ数秒を争う競技の世界では軽視できない差であり、0.1mm単位で細かく設定できる製品も登場しています。

 

さらに、各キーが独立したタイプの中でも「静電容量無接点方式」と呼ばれる、その名の通り押下した際に、キースイッチが物理的に接触しないタイプも存在します。接触がないため高い耐久性と軽い心地が特徴で、こちらもゲーム向けに採用されることが多くなっています。

 

「ゲームで使わないキー」を省いてコンパクト化

 

明らかな見た目の変化では、サイズのバリエーションも広がっています。一般的なキーボードには英語や日本語など言語に応じた配列のキーに加え、テンキーや矢印キーなど、さまざまな機能を持ったキーが付属しています。

 

しかし、PCゲームでは基本的に左手でキーボードを、右手でマウスを操作することもあり、片手ではすべてのキーを扱いきれないため、キーを省いてコンパクト化したモデルも存在します。キーボードがコンパクトになると軽量で持ち運びがしやすいだけでなく、マウスを動かす範囲を広く取れるため、コンパクトタイプを使用しているゲーマーも多くなっています。

 

テンキーがない「テンキーレス」に、思い切ってファンクションキーなど数多くのキーを省いたタイプは、フルサイズと比較したキー量から「60%」タイプと呼ばれるモデルも。普段使いには少々不便ですが、ゲームに特化しているからこそのデザインです。

 

珍しいものでは、通常のキーボードのようにキーが斜めにならんでおらず、「W」キーの真下に「S」キーが来るように、綺麗な格子状の「プランクキーボード」も一部のユーザーに親しまれています。ゲーム向けに開発されたものではありませんが、両手で文章をタイピングするのではなく片手で必要なキーを押すためには合理的なデザインと考えてゲームプレイ時に採用しているプレイヤーも存在し、数字キーもない「40%」タイプなど一層コンパクトな設計も特徴です。

 

 

最速入力を追求した「ラピッドトリガー」がトレンド

 

もちろん見た目だけではなく、中身に隠されたさまざまな機能も進化を続けています。

 

何度も細かな入力を行うゲームでは、複数のキーを同時に押下することも多くなりがちです。そのため“同時押し”を正確に行うための機能が搭載されており、「キーロールオーバー」と呼ばれています。「19キーロールオーバー」なら19個のキーを同時に入力可能で、全キーの同時押しに対応した「全キーロールオーバー」対応のキーボードも存在します。

 

同時押しの正確さについては「アンチゴースト」と呼ばれる機能も重要で、複数のキーを同時に押した際に押していないキーが認識されてしまう「ゴースト」現象への対策が施されていることを意味します。

 

そして、現在のゲーミングキーボードで最も注目されている機能が、理論上最速での入力を可能にするとされている「ラピットトリガー」です。これはセンサーによってキーの位置を認識することで「キーを少しでも押し込んだら入力、離した瞬間にリセット」という素早い入力を実現する技術です。

 

専用のソフトウェアでキーごとにアクチュエーションポイントを設定できるケースも多く、キャラクターの移動時などに使用する、素早く押したいキーは少しでも触れたら反応するように入力幅を浅く、必要な時だけ押したいキーは多少触っても反応しないよう深く設定することで、自分の感覚にあった操作感で使用できるようになっています。

 

 

入力の機能やサイズのカスタマイズ性が進化したことで、昨今は格闘ゲームの操作デバイスとして使用するプロ選手も現れるなど、ゲーミングキーボードは今や文字入力のためのデバイスではなく、立派な“コントローラー”と言える存在になりつつあります。

 

プロ選手やプロチームの監修のもと、ハイエンドなモデルの開発も進んでいるゲーミングキーボード。今後も更なる進化が期待できそうです。

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