アニメやアイドル、サッカー選手まで

eスポーツタイトルで多彩なジャンルとのコラボが盛ん

#eスポーツ

日用品や飲食店など、日常のあらゆる場面で漫画やアニメといったIPとのコラボレーション商品や施策をよく目にします。

 

高い話題性による広告効果、そして新しいファン層の取り込みなどが期待できる「コラボ」戦略。実はゲームの世界においてもコラボというのは古くから行われており、2000年頃には共に格闘ゲームを手掛けるCAPCOM社とSNK社が「お互いの会社のキャラクターの権利を借りて作品を作る」というクロスライセンス契約のもと、両社のキャラクターが登場する『CAPCOM VS. SNK』シリーズが生み出されました。

 

他にも落ちものパズルゲームとして高い知名度を誇る『ぷよぷよ』と『テトリス』がコラボした『ぷよぷよテトリス』は2014年にSEGA社から発売。同じ画面に「ぷよぷよ」と「テトリミノ(『テトリス』のブロックの名称)」のが降ってくる特殊ルールもユニークで、2020年には続編も発売されています。

 

ゲームの中でも対戦要素がメインとなるeスポーツタイトルは、近年コラボがトレンドになりつつあります。

 

IPコラボは世界観が重要

 

ゲームにおけるコラボと言えば、アニメなどのIPキャラクターが登場するソーシャルゲームなどをイメージすることが多いかも知れません。多くのファンを抱える人気作品との「IPコラボ」はもちろんeスポーツ界でも行われており、FPSやアクション系の対戦ゲームにおいては、既存キャラクターの外見を変える「スキン」として登場することも多くなっています。

 

eスポーツタイトルは対戦ゲームであるという性質上、相手を銃撃したり攻撃したりする過激な表現が発生します。そのため、あくまで既存キャラクターの“衣装”として登場させることで、コラボ元のキャラクターイメージや世界観を崩さないよう配慮しているのです。

 

一方で、作品ごとの“世界観”を上手く活用してコラボを盛んに行っているタイトルも存在します。『Dead By Daylight』は残忍な儀式の執行人となる「キラー」1人と、その儀式からの脱出を目指す4人の「サバイバー」で対戦するサバイバルホラーアクションゲームです。これまで多数のホラー映画や『バイオハザード』と言った作品とのコラボレーションを展開。原作において殺人鬼として活躍するキャラクターをキラーに、彼らに立ち向かう人物をサバイバーに据えることで、世界観を守ったままキャラクター本人が登場できるコラボを実現しています。

 

△貞子で知られるホラー映画『リング』も『Dead by Daylight』とコラボしている

 

また、同じジャンルのゲームコラボも世界観を共有しやすいケースのひとつで、格闘ゲームでは人気の看板キャラクターが他社の作品で登場することも多くなっています。ただし、このような場合でもそのままの性能で登場させると強すぎたり、かと言って代表的な必殺技がなければ“らしさ”が失われてしまったりと、バランス調整はキャラクターのイメージを崩さないための大きなポイントです。

 

ゲームでのコラボに限らず、作品を所有するIPホルダーにとってキャラクターなどを貸し出す「ライセンスアウト」は大きなビジネスの手段のひとつになっています。新たな層に訴求するため、そして多くのユーザーに楽しんでもらうため、どのような形でeスポーツタイトルへの“落とし込み”が行われているかも、注目してみると興味深いかも知れません。

 

アーティストコラボも人気。格闘ゲームキャラになる人物も

 

さらに近年のゲーム・eスポーツ業界では、キャラクターコンテンツだけでなくアーティストとのコラボレーションも盛んになっています。

 

アーティストとゲームのコラボと言えば、コロナ禍の2020年4月にアメリカのアーティストであるトラヴィス・スコットが、そして同年8月には米津玄師がゲーム内のメタバース空間にてバーチャルライブを行った『FORTNITE』の例が有名です。

 

その後の『FORTNITE』ではアーティストのバーチャルライブが実施されており、2022年に星野源のイベントが開催された際には、「恋ダンス」がエモート※として期間限定で登場したことでも話題を呼びました。

 

※ゲームでキャラクターにダンスなどのアニメーション動作を行わせる機能のこと

 

そんな『FORTNITE』とアーティストのコラボは近年はさらに進化しており、ライブイベントだけでなく、エミネムなどのアーティストがゲーム内の敵キャラクターとして登場するディープなコラボも実現。いずれもビッグネームと言えるアーティストが集結した盛大なイベントとなっており、アメリカで『FORTNITE』が一大カルチャーとして受け入れられていることを感じさせます。

 

 

アクションシューティング『Overwatch2』では、2023年にK-POPアイドルグループ「LE SSERAFIM」とのコラボを実施。ゲーム内にはアイドルをイメージしたスキンが登場し、新曲のMVにはゲームキャラクターが登場した特別な映像が使われるという、双方向でのコラボレーションになりました。同タイトルは特に韓国や日本で人気が高いことも、このコラボ実現の背景にあったのではないでしょうか。

 

さらに大きな話題となったのは、2025年4月に発売されたSNK社の『餓狼伝説 City of the Wolves』。『餓狼伝説』シリーズの久々の新作となった本タイトルには、なんと世界的なサッカー選手であるクリスティアーノ・ロナウド、そして音楽プロデューサーやDJとして活躍するサルバトーレ・ガナッチの両氏がプレイヤーキャラクターとして登場しています。

 

登場の背景については明確には明かされていませんが、格闘ゲームのキャラクターとして戦う表現、そしてゲームのキャラクターとして誰もが使用できる存在になることが世界的な著名人に受け入れられたという事実は、eスポーツやゲームに対してネガティブな意見が多かった頃からは考えられないことでしょう。

 

ユーザーからは「実在の人物が登場することで作品世界のイメージが損なわれる」という意見もあり、どんどんコラボが進む方が誰にとっても望ましいとは言い切れませんが、貴重な成功例・先行事例となったことは間違いありません。

 

ゲームやeスポーツに対するイメージが向上し、すっかり当たり前になりつつある昨今。裾野拡大や新規ユーザーの取り込みを目指し、今後もこれまでにないコラボが実現する可能性は高まっていくのではないでしょうか。

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