「キャラ対抗」&「配信者とタッグ」で新たな魅力を発掘し裾野の拡大も!
eスポーツの世界では多種多様な大会、そして大会形式のイベントが開催されています。
世界最強のチームやプレイヤーを決する公式大会から、小規模なコミュニティ大会。時には大会を通じてスポンサー企業の商品をPRしたり新人選手のオーディションを兼ねたりと、目的もターゲットも非常にバラエティ豊かな企画によってeスポーツ大会は大きく広がりを見せています。
そんな中、6月28日から29日にかけて、東京体育館にて人気配信者「SHAKA」さんが主催する『ストリートファイター6』の大型オフライン大会「Red Bull LEGENDUS STREET FIGHTER 6 頂」が開催されました。
©Red Bull
元プロゲーマーであり、現在はTwitchチャンネルのフォロワーが150万人を超えるなど日本有数の人気ストリーマーのひとりであるSHAKAさんは、2024年から主催イベント「LEGENDUS」シリーズをスタートしています。
「LEGENDUS」ではこれまでに『ストリートファイター6』をはじめ、複数のタイトルでストリーマー・インフルエンサーによるイベントを行ってきましたが、今回の「LEGENDUS 頂」は初の一般参加型オフライン大会に。
イベントの運営については企業のサポートやスポンサードを受けているものの、ストリーマーが個人で主催する一般プレイヤーの参加型、それも2日間におよぶ大規模オフライン大会という世界的にも見ても異例のイベントの模様をレポートでお届けします。
「Red Bull LEGENDUS STREET FIGHTER 6 頂」は、タイトルの通り人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』を用いたトーナメント形式の大会ですが、今回は“キャラクター対抗”を意識した特殊なルールが大きな特徴となりました。
格闘ゲームの大会では試合ごとに使用キャラクターを選択する形式が一般的で、複数キャラを状況に応じて使い分けるプレイヤーも存在します。しかし今大会では出場登録の時点で使用キャラクターを申告するルールとなっており、すべてのプレイヤーは1キャラクターのみで戦います。
そして、大会初日-Day1は一般参加者1024名によるダブルエリミネーション形式のトーナメントを開催。最後まで勝ち残ったプレイヤーが初日の優勝となりますが、この大会は翌日の“タッグトーナメント”への予選も兼ねており、開催決定時点で実装されていたキャラクター25人中、「そのキャラクターの使い手の中で最上位のプレイヤー」の成績を比較した上位16体の使い手がDay2へと進出します。
Day2では25キャラクターの使い手として選出されたストリーマー・インフルエンサーが一般参加者と同キャラのタッグを組み、2人チームでのトーナメントを実施。一般プレイヤー対決とストリーマー対決でそれぞれ2本先取の対戦を行い、それでも決着が付かなければ一般プレイヤーによる“1本先取”の延長戦へと持ち込まれます。
それぞれのキャラクターの使い手が全キャラの“頂”を目指して激しい戦いを繰り広げる、2日間が一続きのイベントスケジュールになっています。
参加希望者多数による抽選を乗り越え出場権を獲得した1024名による「LEGENDUS 頂」Day1は大きな盛り上がりを見せ、東京体育館のフロア全面に設置された対戦台にて同時進行でプレイヤーが腕前を競い合いました。
ルール上、トップ16以上まで勝ち進みながらも“キャラ被り”の上位プレイヤーの存在によって残念ながら翌日に進めない参加者も発生し、Day2への進出が叶わなかった9キャラクターはストリーマーもトーナメントに参加できないという、ユニークさとシビアさを兼ね備えた今大会。
一般参加者にとっては同じキャラクターはライバルとも取れる大会形式ですが、敗退後には自分と“同キャラ使い”の選手を応援したり、会場の観覧席が“推しキャラ”ごとに分けられたりと、対抗戦らしくキャラクターごとのプレイヤー間の絆を感じられる光景も。
今大会には公式プロリーグに出場するプロ選手はトーナメントには参加できない規定になっていましたが、プロ選手が自らの使用キャラについて語るトークイベントなども場内で実施され、個性豊かなキャラクターたちに強くスポットを当てた設計で開催されました。
▲Day1の会場の様子。ストリーマー待機用の小高いブースが設けられ、来場者に向けてのファンサービスも実施された。
そんなDay1で優勝したのはキャラクター「マノン」を操る「あくたがわ」さん。あくたがわさんは、ゲーム内のランクマッチで1位を記録したこともある名前の知れたトッププレイヤーであり、プロではないものの以前から注目されていた実力を発揮しての優勝となりました。
迎えたDay2は会場内の対戦台がすべて観客席へと切り替わり、中央のステージにてトーナメントの対戦が行われました。人気ストリーマーとDay1を勝ち抜いた猛者によるタッグチームの対戦は、入場の演出にも力が入っており、真剣勝負ながら観客を楽しませる要素も盛り込まれた華やかな場に。
そして戦いの末、決勝戦に駒を進めたのは「マノン」チームと「ダルシム」チーム。マノンチームはSHAKAさんとあくたがわさんのタッグであり、対するダルシムチームはストリーマーの「ありけん」さんと一般参加の「harumy」さんがタッグを組みます。
主催者&Day1優勝者のマノンチームか、それとも全キャラクター中最もエントリー数が少なかったダルシムチームか。どちらが勝ってもドラマティックな戦いとなった決勝戦は、一般プレイヤー対決であくたがわさんが勝利してマノンチームが先制します。
続くストリーマー対決ではありけんさんがリベンジを果たして同点に持ち込みますが、決定戦では再びあくたがわさんが勝利を収め、マノンチームがDay2無敗で全キャラの“頂”に立ちました。
▲優勝ペナントを手に記念撮影するあくたがわさん(写真左)とSHAKAさん(同右)。両名は副賞として世界大会「EVO」への渡航費サポートの権利も獲得した。
壇上での優勝インタビューでSHAKAさんは「格闘ゲーマーの間でお互いに『他人の使っているキャラクターの方が強い』と評価しあう文化が面白かった」と、キャラクターごとの戦いにスポットを当てたイベント構造の着想の発端を明かしました。
実際にDay2の戦いでは同じキャラクターのマッチアップでも一般プレイヤー対決とストリーマー対決とで使い手が変わることで展開が大きく変化するシーンもあり、時にタッグパートナーの動きを参考にするプレイヤーも見られるなど、キャラクター対抗とタッグ戦という仕組みならではの魅力が大いに味わえるイベントとなりました。
加えて、本大会では真剣勝負ながらも“ストリーマーのSHAKAさん主催”という看板からどこかカジュアルな空気感も生まれており、実際にDay1で初めて大会に参加したという参加者の方に話を聞いてみると「誰でも参加していい雰囲気だったので、出てみようかなと思えました」と、間口を広げるきっかけになっているようでした。
神奈川県から参加したというプレイヤーさんは『ストリートファイター6』から本格的に格闘ゲームに触れ、今作から実装されたコマンド入力を省略できる「モダン」操作での出場と、まさに最新作をきっかけに格闘ゲームの世界に入ってきたとのこと。
残念ながら大会では2連敗で敗退となってしまったそうですが、「また大会があったら出てみたいと思いました。ランクで伸び悩んでいたのでキャラクターを変えようか迷っていたのですが、イベントブースでプロ選手にアドバイスをもらって、このキャラクターのまま頑張っていこうと思いました」と、大きな刺激をもらっていたようです。
試合後には初対面のプレイヤー同士で情報交換したり、フリー対戦が可能なエリアで練習を行ったりと、ゲームを介して交友が広がるシーンも多く見られた本大会。
優勝だけでなく「上位16キャラクターまで」が大きな目標となる特殊なルールや、これまで開催されてきた「LEGENDUS」のエンターテイメント性、そして「好きなキャラクターやストリーマーを応援したい」「ストリーマーと一緒に大会に出てみたい」という気持ちから、他の大会とはまた違った層に格闘ゲーム、そして“大会に出場すること”の魅力をアピールするイベントとなったのではないでしょうか。
▲大会配信外で行われた「Day2に進出する最後の1キャラ決定戦」の様子。タッグ予定のストリーマーも駆け付け、大きな熱気を生んだ。
イベント終了後、囲み取材でSHAKAさんは「無事に終わったことが本当に良かった。あくたがわさんの力もありましたが、まさか本当に自分が優勝できるとは思わなかったので嬉しい」と、安堵と喜びのコメント。
次回の「LEGENDUS」の予告も行われ、再び『ストリートファイター6』 にて、今度はプロ選手とストリーマーが「師弟」となってタッグを組み激突する人気企画「師弟杯」を2026年冬を目途に開催予定と告知されました。
2025年3月には両国国技館で世界大会が開催され、翌2026年大会の日本開催も決定しているように、世界から注目を集めている日本の『ストリートファイター』シーン。選び抜かれたトッププレイヤーによるハイレベルな大会だけでなく、今回の「LEGENDUS 頂」のようなイベントによる盛り上がりも加わり、競技としてのエンターテイメントとしても大きな成長の時を迎えようとしているのではないでしょうか。
© Red Bull LEGENDUS STREET FIGHTER 6 頂