【ITエンジニア向け】テクニカルライティング入門|重要性や学習方法を紹介

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技術文書の作成は、多くのITエンジニアにとって避けては通れない重要なスキルです。しかし、文章を書くことに苦手意識を感じている方も少なくないでしょう。

 

ここでは、テクニカルライティングの基本から実践的なテクニック、学習方法まで、エンジニアが技術文書作成スキルを向上させるために必要な知識を解説します。

 

テクニカルライティングとは?

エンジニアの仕事において、技術情報を正確に伝えることは重要です。ここでは、テクニカルライティングの基本的な概念と、なぜエンジニアにとって不可欠なスキルなのかを解説します。

 

テクニカルライティングの意味

テクニカルライティングとは、専門的な技術情報などを、読み手に分かりやすく、かつ正確に伝えるための技術です。ソフトウェアの仕様書などもテクニカルライティングの対象となります。

 

技術情報が正確に伝わらないと、誤解や手戻りが生じ、開発効率の低下を招きかねません。そのため、テクニカルライティングの技術はエンジニアにとって不可欠です。

 

文章作成にはセンスや才能が必要と考える人も少なくありません。しかし、テクニカルライティングは「技術」として習得できるものです。文章の基本構成や表現のルールを学び、実践を重ねることで、誰でも一定の水準に到達できます。

 

テクニカルライティングの技術を身に付けることは、ITエンジニアとしての実務能力を高めるだけでなく、プロダクトの品質向上という観点でも価値をもたらします。

 

エンジニアにとってテクニカルライティングが重要な理由

Googleが提供するテクニカルライティング教材は「Every engineer is also a writer.(すべてのエンジニアはライターでもあります。)」という言葉から始まります。

 

この言葉どおり、エンジニアの仕事はコードを書くことだけではなく、プロジェクトの仕様書や設計書、チーム向けのドキュメントやマニュアルなど、文章を作成する機会は想像以上に多いのです。

 

エンジニアが書いた文書が分かりづらいと、プロジェクトメンバー間での認識の共有が難しくなってしまい、コミュニケーションや進捗に支障をきたすリスクが高まります。

 

また、近年はSNSなどでの短文でのやり取りが一般的になったことから、体系的な長文を作成する機会が減っています。その結果、本格的な仕様書や技術記事の執筆に苦手意識を持つエンジニアが増えていく可能性もあります。

 

そんな今だからこそ、テクニカルライティングを体系的に学び、分かりやすい文章を書けることは、エンジニアとしての価値につながるはずです。

 

参考:Technical Writing Courses for Engineers

 

テクニカルライティングを身に付けるメリット

テクニカルライティングのスキルを身に付けることは、エンジニア個人の成長だけでなく、チームやプロジェクト全体にも大きな価値をもたらします。ここでは、具体的なメリットについて実務的な観点から解説していきます。

 

文章が分かりやすくなりドキュメント管理も効率的になる

テクニカルライティングを身に付ける最も大きなメリットは、文章が分かりやすくなり、誤解が防げることです。

 

その結果、プロジェクトが円滑に進められるようになり、メンバー間で仕様や要件の意図を共有しやすくなります。ミスや手戻りも削減できるでしょう。

 

また、ドキュメント管理の効率化にも直結します。整理された文書は検索性が高く、保守・運用において重要な資料となるはずです。新しいメンバーがプロジェクトに参加した際も、スムーズなキャッチアップが可能になるでしょう。

 

エンジニア個人のスキルとしても評価される

正確で分かりやすい文章を書けるエンジニアは、現場で重宝されます。「この人の書く設計書は読みやすくて助かる」という評価を得れば、自然とプロジェクトの中核メンバーとしての信頼が高まるはずです。

 

テクニカルライティングの基本と書き方

効果的なテクニカルライティングには、いくつかの重要な原則と実践的なテクニックがあります。この章では、読み手に伝わりやすい文書を作成するための具体的な方法論を解説していきます。

 

読み手を意識した文章構成

テクニカルライティングで最初に重要となるのは、「誰に向けて書くか」を明確にすることです。初心者向けなのか、自身と同レベルのスキルを持ったエンジニア向けなのか、専門的な知識のないクライアント企業向けなのかによって、使用する用語や説明の方法は大きく変わります。

 

不要な言葉を削り、「一文一義(一つの文で一つの事柄だけを説明すること)」を徹底することも大切です。「それ」「これ」などの代名詞は誤解を招くことがあるので、できるだけ具体的な表現を心がけましょう。

 

また、「する」「行う」といった一般的な動詞ではなく、「実行する」「コンパイルする」といった、はっきりとした意味を持つ動詞を選ぶことで、より伝わりやすい文章になります。

 

仕様書やマニュアルを書くコツ

エンジニアが実際に仕様書やマニュアルを書く際には、以下のようなコツがあります。

 

・全体の構成を簡単に決める

・文書の冒頭で目的・前提知識・想定読者を明確に示す

・文章は適度に段落を区切り、箇条書きや番号付きリストを活用する

・コードサンプルや図表を挿入する際は、補足説明との関連性を明確にする

 

まず全体の構成を簡単に決めます。そして、必要に応じて、文書の目的や前提知識、想定読者を明示しましょう。読み手が「自分に必要な情報か」「どのレベルの内容が書かれているか」を判断しやすくなります。

 

文章は適度に段落で区切り、必要に応じて箇条書きや番号付きリストを活用すると読みやすくなります。特に、説明が長くなりがちな部分はリスト形式にすることで、手順や注意点を見落としにくくなるでしょう。

 

コードサンプルや図表を挿入する際は、説明書きとの関連性を明確にしましょう。「以下のサンプルコードは○○というライブラリを使って画像処理を行う例です」といったように、注目してほしいポイントを示すことで、読者は感覚的に理解できるようになります。

 

そうした工夫を積み重ねることで、「分かりやすい仕様書・マニュアル」が完成します。文章を書くこと自体が得意でなくても、基本的なルールやコツを理解することで、分かりやすい文章は作れるのです。

クライアント向けの詳細な仕様書やプレゼン資料の作成でも、「正しく伝わる文章」を書く能力は重要です。文章力は技術力と同様にキャリアを支える重要なスキルであり、その習得は仕事の可能性を大きく広げてくれます。

 

また、キャリアアップや仕事の幅を広げることにもつながるでしょう。分かりやすい文章を作成する能力は、マネージャーなどの管理職でも必要とされるものであり、顧客向けの提案資料や、社内の研修資料を作成する立場になっても役立ちます。

 

Googleのテクニカルライティング教材を活用しよう

 

 

Googleが提供しているテクニカルライティング教材は、無料でありながら体系的な学習が可能です。ここでは、活用方法について詳しく説明します。

 

Googleのエンジニア向けテクニカルライティング講座とは

Googleが提供する「Technical Writing Courses for Engineers(エンジニア向けテクニカルライティング講座)」は、Googleが無料で公開しているテクニカルライティング教材です。

 

教材は、「Technical Writing One(基礎編)」と「Technical Writing Two(上級編)」の2部構成になっています。「文章を書くのが苦手だけれど、どう学べばいいのか分からない…」と感じているエンジニアにとって、取り組みやすい構成です。

 

学生やエンジニアはもちろん、プロダクトマネージャーなど幅広い職種の人を対象としており、実際に広く活用されています。

 

基礎編・上級編で学べる内容

基礎編となる「Technical Writing One」では、文章の基本的なルールを学びます。

 

曖昧な代名詞を避ける方法や、分かりやすい動詞を使った文章の作り方、冗長な表現を省くテクニックなどを、具体例を交えて解説しています。これらは、すぐに業務で活用できる内容です。

 

上級編となる「Technical Writing Two」では、より高度な視点での文書設計を学べます。

 

ドキュメントの構成の組み立て方や、読み手のレベルを考慮した図表、コードサンプル、チュートリアルの具体例など、仕様書などを一から作成するエンジニアにとって、即戦力となる実践的なノウハウが詰まっています。

 

受講の注意点

Googleテクニカルライティングの教材は英語版のみですが、テクニカルライティングのお手本になるようなシンプルな表現で構成されているため、Chromeブラウザなどの翻訳機能を使えば十分に理解できるでしょう。

 

また、実際に文章を書いたり、サンプルコードを試したりしながら進める箇所があるため、スマートフォンからではなく、PCなどキーボードを利用できる環境での学習が推奨されています。

 

テクニカルライティングを学ぶ他の方法

 

Googleが提供するテクニカルライティング講座以外にも学習する方法があります。ここでは、民間資格の取得や、セミナー・講座の活用などの方法を紹介します。

 

資格の取得を目指す

テクニカルライティングのスキルを客観的に証明したい場合は、「3級 テクニカルライティング試験」のような民間資格の取得を検討してみるとよいでしょう。履歴書にも記載できるため、転職やキャリアアップの際にアピール材料として活用できます。

 

資格の公式サイトをチェックして、どのような内容や出題形式なのかを確認すると、より効果的な学習計画を立てられるでしょう。

 

参考:テクニカルコミュニケーション技術検定試験|JTCA

 

オンラインセミナーを活用する

テクニカルライティングに関するセミナーや講座を開催している団体もあります。

 

3級 テクニカルライティング試験」を主催するJTCAでは、TC技術検定受験対策セミナーをオンラインで実施している他、JTC(日本テクノセンター)でも、やはりオンラインでテクニカルライティング実践講座を開催しています。

 

こうした、講義+演習形式の講座であれば、ただ聞くだけではなく、学んだスキルをその場で実践しながら理解を深められるため、知識が定着しやすいでしょう。

 

参考:わかりやすい技術文章作成のためのテクニカルライティング実践講座 ~演習付~ <オンラインセミナー>|JTC

 

書籍や参考書で学習する

テクニカルライティングに関する書籍はいくつか出版されています。

 

その中でも有名な書籍は、翔泳社の「技術者のためのテクニカルライティング入門講座 第2版(髙橋 慈子 著)」です。初版は2018年に出版されましたが、2024年に内容をアップデートし第2版となりました。

 

ITエンジニアなどの技術者向けに、豊富な文例や演習が掲載されています。新人~中堅の技術者の方はもちろん、ベテランエンジニアの参考書的な役割としても役立つでしょう。

 

参考:技術者のためのテクニカルライティング入門講座 第2版

 

まとめ

 

エンジニアにとって、正確で分かりやすい文書作成能力は、プロジェクトの円滑な進行やキャリアの幅を広げることにつながります。

 

ここで紹介した学習方法を参考にして、ぜひ、テクニカルライティングを身に付けてみてください。基本的なルールを理解し、実践を重ねれば、誰でも効果的な技術文書を作成できるようになるでしょう。

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