Webアプリケーション開発のフレームワークとして人気の「Ruby on Rails」。短いコードで直感的な開発が可能で、充実したフレームワークにより生産性の高い開発環境を実現します。
ここでは、Ruby on Railsの基本概念から、設計思想、メリット、活用事例まで詳しく解説します。
「Ruby on Rails」は、オブジェクト指向言語「Ruby」を基盤に作られた、Webフレームワーク「Rails」のことを指します。まずはそれぞれどのようなものかを解説します。
Rubyは、Webアプリケーション開発で人気のオブジェクト指向言語です。
1995年に日本人の「まつもとゆきひろ」氏によって開発され、日本で開発されたプログラミング言語として初めて国際規格に認証されました。
短いコードで直感的にプログラムを書けるため、初心者でも習得しやすい特徴があります。また、プログラミングの「楽しさ」をポリシーとしていることも、他の多くの言語と異なる特徴と言えるでしょう。
Railsは、Rubyを基盤に作られた、Webアプリケーション開発のためのフレームワークです。2004年にデンマーク人プログラマー、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏によって開発されました。
開発者がより少ないコードで手軽に開発できるよう、デフォルトの設定や規則があらかじめ用意されています。これにより開発者は、複雑な設定を気にすることなくスピーディーに作業を進められます。
フレームワークとは、Webアプリケーション開発に必要となる機能や、基本となる骨組みをパッケージ化したものです。
フレームワークを使用することで、必要最低限のプログラムを書くだけで開発できるようになり、開発期間の短縮が可能になります。また、コードが統一されることで可読性・保守性が向上するメリットもあります。
Ruby on Railsの設計思想は、効率的な開発を行うために重要なものです。ここでは、特に重要な2つの設計思想について詳しく解説します。
Ruby on Railsは、「Model-View-Controller(MVC)」と呼ばれるプログラミング構造を採用しています。Model、View、Controllerはそれぞれ次のような内容です。
・Model:アプリケーションのデータとビジネスロジックを管理する役割を担う
・View:実際にユーザーにデータを表示する役割を担う
・Controller:ユーザーの入力に基づきモデルとビューを制御する役割を担う
これにより、データ管理、ユーザーインターフェース、アプリケーションロジックが明確に分離され、開発効率やメンテナンス性が向上します。
DRYは「Don’t Repeat Yourself(同じことを繰り返さない)」の略です。Ruby on Railsでは、この設計思想に沿って以下のことが推奨されています。
・同じコードを繰り返さない
・同じ情報を何度も書かず一カ所にまとめる
これらを守ることで、コードが簡潔になって可読性が向上するほか、一カ所の変更で全体に反映されるようになるため保守性も向上します。
ただし、DRYはあくまでも原則です。過度にDRYを適用すると却ってコードが複雑になる場合もあるため、バランスが大切となります。
CoC(Convention Over Configuration)は規約優先という意味で、設定より規約を重視することを示しています。
Ruby on Railsには、ファイル名やテーブルの定義をはじめとしたさまざまな規約があります。それに従って命名することで、細かく設定を紐付ける作業を省略できます。
また、規約に従うことでプログラムに規律が生まれ、記述する必要のある設定ファイルが最小限で済むことから、初心者でも開発が進めやすくなります。また、エンジニア間でのコミュニケーションがスムーズになり、開発も円滑に進むでしょう。
Ruby on Railsには数多くのメリットがあります。ここでは、特に重要な4つのメリットについて解説します。
Ruby on Railsのコードはシンプルで記述しやすいことが特徴です。そのため可読性が高く、他のエンジニアが書いたコードも読みやすくなっています。
この特性により、チームでの共同開発に向いていますし、後からプロジェクトに参加したエンジニアがコードを把握するのもスムーズです。また、エラーを発見しやすく修正も容易なため、結果的に開発効率が向上します。
Ruby on Railsには、開発したいものに合わせたフレームワークが豊富に用意されています。適切なフレームワークを利用することで、ゼロから開発する必要がなくなり、コーディングの労力を小さくできます。
各フレームワークにはルールがあり、それに従ってコーディングしていくので、コードの一貫性を維持しやすくなることも特徴です。これにより品質が維持されやすくなり、仕様の変更などがあった場合にも素早く対応できます。
Rubyは直感的に理解しやすい言語です。そのため、プログラミングを初めて学ぶ人にとって、学習のハードルが低くなっています。Ruby on Railsもこの美点を引き継いでおり学習しやすい特徴があります。
また、Rubyが日本で開発されたプログラミング言語ということもあって、日本語の情報を見つけやすいことも特徴です。特に、英語が苦手な日本人エンジニアにとって大きなメリットとなるでしょう。
Ruby 及び Ruby on Railsは長年にわたって使用されている言語のため、世界中に多くの開発者コミュニティが存在します。また、コミュニティが主催する勉強会なども行われています。
初心者から上級者まで、自分に合わせたレベルの情報が充実しているので、1人で勉強していて疑問点や不安があっても解決しやすい環境といえます。これから新たにRuby on Railsを学ぶ人にとって、サポートが充実していることは心強いはずです。
Ruby on Railsは、その使いやすさと柔軟性から、さまざまなプロジェクトに適しています。以下に、特に向いているプロジェクトの例を挙げて説明します。
Ruby on Railsは、Webアプリケーションのために開発された言語です。そのため、Webアプリケーション開発で最も力を発揮するでしょう。
なお、向いているのは小規模から中規模のWebアプリケーションの開発です。DRYやCoCといった原則を用いる特性から大規模なWebアプリケーション開発にはあまり向いているとは言えません。
Ruby on Railsで、決済機能のついたECサイトプラットフォーム構築が可能です。ユーザー登録、商品管理、決済機能など、ECサイトに必要な機能を短期間で実装できます。
しかし、Rubyで決済機能を実装するのはややハードルが高いため、適したフレームワークやAPIを利用することが推奨されます。これにより開発が容易になり、開発期間を大幅に短縮できるでしょう。
勤怠管理システムや、入退室管理システム、スケジュール共有システムといった、業務で利用するWebベースの業務システム開発にも向いています。
Ruby on Railsは、少ないコードで直感的に開発できるため、必要な社内業務システムをスピーディーに開発でき、要件変更にも素早く対応できます。
Webサイトを構築・管理・運営するために必要な、コンテンツ管理システム(CMS)の開発にも向いています。CMSは、専門的な知識がなくても記事や画像などを投稿するのに必要なため、多くのウェブサイトで必須となっています。
Ruby on RailsでCMSを1から開発することはもちろん、既にRuby on Railsで開発されたCMSも数多くあるので、それらを利用して開発にかかる時間を短縮する方法もあります。
Ruby on Railsは、世界中の有名なWebアプリケーションで使用され、その効率性と柔軟性が証明されています。ここでは代表的な事例を紹介します。
Airbnbは、旅行者と宿泊施設のオーナーをつなぐプラットフォームとして世界中で利用されています。
Airbnbは、2008年にRuby on Railsによって開発されました。Airbnbは短期間で複雑な予約システムを構築し、多くのユーザーの獲得に成功しています。
GitHubは、ソフトウェア開発者向けのソースコード管理プラットフォームです。
Ruby on Railsで開発され、リポジトリの作成、バージョン管理、チームでのコラボレーションといった機能を提供しています。現代の多くのエンジニアにとって、なくてはならない存在になっています。
Shopify(ショッピファイ)は、手軽に利用できるECサイトプラットフォームとして、世界中の多くの店舗や企業で利用されています。
Ruby on Railsを活用することで、Shopifyはユーザーが直感的にストアを作成・管理できるインターフェースを提供しました。これにより、経験のない人でも簡単にECサイトが作れるようになっています。
Hulu(フールー)は、月額制の動画ストリーミングサービスのパイオニアとして知られています。
Ruby on Railsを使用して最初から構築されたサービスの代表例の一つです。
ここでは、Ruby on Railsに関するよくある質問に答えます。
Ruby on Railsは、Webアプリケーション開発用のフレームワークなので、それ以外の開発は苦手です。代表的なものとして、スマートフォンアプリの開発や、AI(人工知能)、ML(機械学習)関連の開発には向いていません。
また、処理速度が速くないため、大規模なWebアプリケーション開発にも向いていないとされています。
近年最も注目されているAIやML開発に向かないこと、時代に合わせた変化があまり見られないこと、処理速度が速くないため大規模開発に向かないことなどにより、Ruby on Railsの将来性について懐疑的な意見がインターネット上でも定期的に見られます。
しかし、既にRuby on Railsで開発されたシステムは多数あり、その機能追加や管理・維持のためにエンジニアは引き続き必要とされています。実際、エンジニアの求人も数多くあります。
また、シンプルで可読性が高いことは現在も変わらない美点であり、既に成熟したプログラミング言語であり安定していることも評価されています。
これらの理由から、Ruby on Railsは目新しさこそないものの、一定の需要は今後もあると考えられます。
Ruby on Railsを学ぶ場合、まず「Ruby」の知識が必要です。Rubyの習得は、書籍やオンライン学習サービスなど、独学するほかに、スクールに通う方法があります。
Rubyを習得している場合、もしくは習得した後は、「Ruby on Railsチュートリアル」を利用して学習するのがおすすめです。有名なオンライン学習サービスで、実際にWebアプリケーションを開発しながら学習を進められます。
チュートリアルの量は膨大で、解説も足りない部分がありますが、書籍を併用したり、コミュニティを利用したりして、わからないことを覚えながら進めていくとよいでしょう。
Ruby on Railsの「楽しさ」を大切にしたシンプルな考え方は、今も多くの開発者の支持を集めています。充実した日本語の情報とコミュニティがあるので、安心して学習を始められることも魅力といえるでしょう。
新しい言語やフレームワークにチャレンジしたいエンジニアは、ぜひ一度触れてみてはいかがでしょうか。
投稿日:2025年5月13日