進歩目覚ましいAIがeスポーツでも活用広がる

AIが練習相手やコーチとして活躍!

#eスポーツ

近年発展が目覚ましく、何かと話題となる「AI」の存在。仕事や日常で目にする機会も増え、身近な例で言えば、スマートフォンのAIサポート機能などを活用したことがある方も多いのではないでしょうか。

 

AI関連技術はデジタル分野であるゲーム、そしてeスポーツの世界でもさまざまな形で活用されています。

 

学習機能を生かしたAIによって対戦環境が変化

 

ゲームにおけるAI技術の使用例として一番に挙げられるのは「ゲーム開発」への活用です。専用のAIに膨大な回数のテストプレイを任せ、収集したデータからバグの早期発見に取り組む例など、人力では負担が大きい作業を任せて効率化を目指す活用法が広く取り入れられています。

 

 

そうした開発におけるクリエイティブへの補助としてAI活用が進む一方で、ゲームをプレイするユーザーやeスポーツプレイヤーの視点から技術の発展を強く感じられるのは、対戦用のAIや「NPC(non player character)」の存在です。

 

対戦ゲームにおいてはオンライン対戦が普及する以前からCPUが操作するキャラクターと勝負できる仕組みが一般的となっていましたが、初心者向けのAIはまったく攻撃をしてこなかったり、かといって高レベルに設定するとプレイヤーの操作にすべて対応してしまったり、時にはAIが対応できないパターンが発見されて簡単に攻略出来てしまったりと、やや極端で「人間味がない」と感じた経験がある方も少なくないでしょう。

 

 

それが近年は「賢い」「人間らしい」動きをできるAIが生まれており、チーム対戦の一員としても問題なく機能するレベルになりつつあります。

 

さらに学習機能を備えた対戦AIも登場しており、格闘ゲーム『ストリートファイター6』では、条件に合致するプレイヤーのデータを分析してのAI生成が可能に。「自分が練習したい条件」に合わせたAIを生成して練習相手になってもらうことや、自身のプレイヤーデータを分析したAIとの対戦を通じて自身の“クセ”を知ることなど、誰もがゲーム内の標準機能で体験できるようになっています。

 

AIが人間らしい動きをすることで既存プレイヤーの練習効率が上がることはもちろん、新規プレイヤーにとっても「AIとの対戦経験が対人戦へと活かせる」ことは心理的にも技術的にも対戦にチャレンジするためのハードルが下がる効果が期待できます。AI技術の進歩がeスポーツ全体の間口を広げつつあると言えるでしょう。

 

AIコーチングや勝敗予想などゲーム外への波及も

 

eスポーツにおいてはゲーム外でもAIが取り入れられており、プロチームでは試合のデータ収集・分析をAIに任せ、その内容を練習や戦術を組み立てるケースも増えています。eスポーツ大会の配信では対戦プレイヤーのデータを元にした「AIによる勝敗予想」が行われることもあり、単純な数字だけではなくプレイヤーの特徴や相性と言った要素まで取り入れた分析も可能になっているようです。

 

また、2025年1月にはゲーミングデバイスメーカーの「Razer」が、ユーザーに対してAIによるコーチングを提供する「Project AVA」と呼ばれる機能を発表。機能を搭載したデバイスを通じてプレイヤーのスキルを分析し、その内容に応じて、ゲーム内での戦略や練習方法、適したデバイスの設定を提案するという画期的なものになっています。

 

この機能は「プロのeスポーツ選手・コーチの知識を活用してアマチュア選手の競技力向上を支援する」という目的のもと開発されており、ベータテストを経て2025年後半の導入を予定しているとのことです。

 

多くの対戦ゲームは平等性が損なわれないようゲーム外ツールの使用を制限しているため、本機能の戦略提案やアドバイス機能をリアルタイムで活用できるかはまだ不透明な状況ですが、非常に興味深い取り組みとして今後の展開に注目が集まります。

 

 

習い事や部活動で誰もが基礎的なトレーニングを積みやすいフィジカルスポーツに比べ、eスポーツのアマチュアプレイヤーはどうしても配信や動画を活用して「自力で上手くなる」ことが求められる環境にあります。これらの取り組みはAI活用法としてユニークであるだけでなく、誰でも上級プレイヤーの知見やトレーニング法を学ぶ機会が得られる、大きな意義・効果を持つものになる可能性も秘めているのではないでしょうか。

 

暮らしを便利に、業務を効率的にするために用いられることが多いAI技術はeスポーツでも広まりつつあり、今後さらに面白いアイデアが登場していく可能性も大いに期待できます。

 

振り返ると「ゲームを上達する」ためには口コミや攻略本といったアナログな情報を元にするしかなかった時代を経て、昨今は配信や動画サイトといったデジタルメディアを通じての情報共有が当たり前になっています。これから先、もしかすると「AIで上手くなる」ことが当たり前の時代がやってくるのかも知れません。

 

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