エンジニアとして成功するためには、多様なスキルセットが不可欠。プログラミングスキルだけでなく、コミュニケーションやプレゼンテーションなどの多岐にわたるスキルが求められます。
コミュニケーション能力や問題解決力、ビジネスに関する知識まで、さまざまなスキルを身につけることで、エンジニアとしての総合的な能力を向上させ、キャリアの可能性を大きく広げられるでしょう。
このコラムでは、エンジニアに求められる8つの重要な「プログラミング以外」のスキルを紹介。実際にスキルアップを図るためのヒントもお伝えします。エンジニアとしてワンランク上の自分を目指すために、視野を広げ、新しいスキルにも目を向けてみませんか?
ITエンジニアは、チーム単位でプロジェクトを行うことが多く、コミュニケーションが大切になります。また、ミーティングでわかりやすく伝える力として、広範な意味でのプレゼンテーション能力も求められます。
一方で、プログラミングを進める際は、一人で確実に業務を前に進める力を求められます。わからないことがあれば情報収集が必要になりますが、最新の情報は海外のコミュニティで探すことも多く、基本的な英語力が求められます。
こうした開発以外のスキルを磨くことは、効率よく仕事を進めるのに役立つとともに、将来的にマネジメントなどを行う際や、新しい挑戦のために転職を行う際にも役立つはずです。
エンジニアとしてさらに活躍するためには、プログラミングスキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力、チームワークなどのソフトスキルも重要です。ここでは、代表的な8つのスキルについて解説します。
ITエンジニアはチームで仕事をすることが多い職種です。そのため、業務を円滑に進めるためには、コミュニケーション能力は必須になります。
高いコミュニケーション能力があれば、チームメンバー間で円滑な情報交換が可能になり、チーム全体の理解が深まります。プロジェクト共通の目標に向けて、より協力しやすくなるはずです。また、誤解を最小限に抑えることにもつながるため、トラブルも減らせます。
コミュニケーションでまず重要なのは、「聞く力」と「伝える力」です。例えば、「相手の話をしっかり聞く」「相手に対してポジティブに接する」といった姿勢を持つとともに、「相手の言っていることを読み解く」「自分の意見を言う」姿勢も大切になります。
スキルを伸ばすためには、相手が伝えたいことを汲み取り主体的に内容を把握する「アクティブリスニング」という技法を習得する方法や、ボディランゲージやアイコンタクトなどを交えた「非言語コミュニケーション」を意識する方法があります。
プレゼンテーション能力とは、情報やアイデアを効果的に伝えるためのスキルです。ITエンジニアには、プロジェクトメンバーに成果を共有する機会や、クライアントとやりとりする機会があり、そうしたシーンで必要になります。
自分の考えや、プロジェクトが目指すところ、成果、技術などを伝えるためには、専門用語を並べるのではなく、複雑で専門的な情報を理解しやすい形で伝える配慮も必要になります。
ITエンジニアが行うプレゼンは、専門用語が多くわかりづらいと言われることがあります。そうならないためにも、プレゼンテーションスキルを身に付けることが大切です。
情報やアイデアを効果的に伝えるためには、「内容が簡潔でわかりやすい」や「伝えたいことが明確」といったことが求められます。
そのためには、物事を論理的に捉える「ロジカルシンキング(論理的思考力)」が役立ちます。プロジェクトの目指すところは何か、なぜそうなるのか、それが今までとどのように違うのかといった内容を、説得力を持たせて伝えられるようになるはずです。
また、「PREP法」や「DESC法」といったフレームワークを活用することで、聞き手の理解を促しやすくなります。プレゼンテーションスキルを身につける第一歩として、積極的な活用をおすすめします。
ITプロジェクトは複雑で多岐にわたるため、エンジニアにもプロジェクト管理スキルが求められます。特にリーダーポジションを目指す場合には必須のスキルと言えるでしょう。
プロジェクト管理スキルを身につけることで、スケジュール管理、リソース配分、リスク管理などを効果的に行えるようになります。無駄な時間やリソースを削減でき、結果としてエンジニア本人だけでなく、チーム全体の生産性が向上するでしょう。
プロジェクト管理スキルを向上させるには、まず基本的な知識を身につけることが大切です。例えば、「PMBOKガイド(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)」を学ぶことで、プロジェクト管理の基礎を理解できます。
実践的なスキルを身につけるには、小規模なプロジェクトからスタートして経験を積むのが理想的です。その中で、「ガントチャート」や「カンバン法式」などのタスク管理ツールを利用しながら学ぶことで、プロジェクトの効率的な管理スキルが身につくでしょう。
ITエンジニアは技術的な側面だけでなく、ビジネスの観点からも考えることが大切です。そうすることで、技術がビジネスにどのように貢献するかを理解しやすくなり、より価値のある提案ができるようになります。
また、業界のトレンドや企業のビジネスモデル、顧客のニーズを理解することで、クライアントや経営層、他部門とのコミュニケーションも円滑になります。プロジェクトの成功にも寄与することでしょう。
ビジネスに関する知識を広げるには、まず基本的な経営学や経済学の概念に触れることから始めましょう。ビジネス書を読む、オンライン講座を受講する、またはセミナーに参加することで、基礎となる知識が身につくでしょう。
また、自社や競合他社のビジネスモデルの分析や、業界トレンドのフォローも効果的です。ビジネス誌や経済ニュースを定期的にチェックする習慣をつけて、最新の情報を得ましょう。
さらに、社内の他部門(営業、マーケティングなど)と積極的に交流することで、実践的なビジネス知識を得ることもできます。異なる視点から物事を見ることで、より幅広い理解が可能になるでしょう。
ITエンジニアの仕事には、あらゆる期限が設けられています。また、プログラミングは基本的に一人で黙々と行うものですが、そのなかで生産性を上げ、結果を残すためには、時間管理やモチベーション維持などのセルフマネジメント力が求められます。
自律的にタスクを管理し、自らのパフォーマンスを最大化する能力が身につけば、長期的なキャリア形成において必ず良い影響を与えます。
セルフマネジメント力を向上させるには、まず自己分析が大切です。自分の強みと弱み、作業スタイル、ストレスの要因などを理解しましょう。
仕事を管理するスキルを磨くには、ToDoリストやタスク管理ツールを活用し、優先順位づけや進捗管理に慣れることから始めるとよいでしょう。
仕事を25分ごとのセッションに区切る「ポモドーロ・テクニック」や、時間帯ごとに行うことを決めて生産性を最大化する「タイムブロッキング」といったテクニックを試してみるのもおすすめです。
ITエンジニアの仕事では、常に新しい問題や課題に直面します。そのため、問題解決力とクリティカルシンキング(批判的思考法)は重要なスキルといえます。
これらのスキルがあれば、複雑な技術的問題を効率的に解決することや、最適な解決策を見出すことが可能になります。また、情報の信頼性を評価し、論理的な意思決定を行うことにも役立ちます。
問題に対する根本的な理解と、その解決に向けたアプローチを身につけることで、チーム内での信頼も高まるでしょう。
問題解決力を向上させるには、基本的なフレームワークを学ぶことが効率的かつ有効です。例えば、「PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル」や「5W1H分析」などの手法を取り入れることで、体系的に問題に取り組みやすくなります。
クリティカルシンキングを磨くには、情報を多角的に分析する習慣をつけることが大切です。ニュースや技術記事を読む際に、「なぜそうなのか」「他の可能性はないか」といった疑問を持つことから始めましょう。また、日々の業務においても「なぜ」を問う習慣をつけることで、批判的思考力が養われます。
ITエンジニアの世界では、最新の技術情報や、開発者コミュニティの多くで英語が使われます。海外の最新情報に触れ、新しいスキルとして身につけるためには、基礎的な英語力があったほうが有利です。
ブラウザの翻訳機能の性能があがり、英語がわからなくてもかなりの部分は対応できるようになりました。しかし、英語力があれば、海外の書籍が日本語訳される前に情報を得られるようになります。
さらに、英語力があればグローバルなプロジェクトへも参加できるようになりますし、オフショア開発を管理する立場になった場合にも役立ちます。
日常的に英語に触れる機会を増やすことが大切です。英語に自信がなくても、翻訳サービスなどを利用しながら、GitHub等の開発者コミュニティに参加して実践的なスキルを身につけるとよいでしょう。
また、技術系の英語記事を定期的に読む、英語のテック系ポッドキャストを聴く、同じく英語のYouTube動画を視聴するといったことでも、実践的な知識を得ながら、英語に慣れる方法です。
さらに、英会話アプリやオンライン教材などは非常に充実しているので、そういったものを試してみるのもよいでしょう。
プログラミングの多くの分野で数学的な知識や考え方が必要になります。職種にもよりますが、機械学習やアルゴリズム設計、データ分析の分野では欠かせません。
必ずしも数学に精通している必要はありません。しかし、数学的な思考力があれば、アルゴリズムの理解やデータ分析などに役立ち、難解な問題をシンプルに解けるメリットがあります。
数学を基礎から学び直すことは、現実的には難しいでしょう。そのため、ITエンジニアに必要な知識として、「アルゴリズムの理解」と「データ分析の技法」を学ぶことが効果的と考えられます。
具体的には、専門書やオンライン講座を通じて、これらの基本を学ぶことをおすすめします。また、日常的に数学的思考を鍛えるために、数理パズルを解くことや、プログラミングコンテストへ参加することも効果的と考えられます。
キャリアの各ステージにおいて、優先すべきスキルは異なります。ここでは、計画的にスキルを伸ばすヒントをご紹介します。
経験の浅いITエンジニアの場合、優先すべきは「コミュニケーションスキル」と「基礎的な英語力」です。
コミュニケーションスキルを身につけることで、チームの一員として業務が円滑に進み、他のエンジニアからも多くのことを吸収できるでしょう。ITエンジニアの基本の一つとして意識して身につけましょう。
また、基礎的な英語力があると情報収集に役立ちます。キャリア初期からグローバルな視点を持ち、新しい情報をキャッチすることは、大きな強みになるでしょう。
一定の経験を積んだ中堅ITエンジニアの場合、「問題解決力・クリティカルシンキング」や、「プロジェクト管理スキル」から身につけるとよいでしょう。
問題解決力・クリティカルシンキングを身につけることで、技術的な課題に直面したときに、自ら解決策を見つけやすくなります。また、複数のタスクを効率的に進めるためのプロジェクト管理スキルは、このキャリアステージで特に重要になるでしょう。
リーダーやマネージャーポジションに就いている場合、「ビジネスに関する知識」と「プレゼンテーションスキル」は必須となります。
「ビジネスに関する知識」を身につけることで、テクノロジーとビジネスを結びつけられるようになります。また、チームやクライアントに対してプロジェクトの価値を伝える「プレゼンテーションスキル」も大切です。リーダーやマネージャーの業務を円滑に進めるための必須スキルといえます。
このコラムでは、ITエンジニアに求められるプログラミングスキル以外の重要性と、具体的なスキル、その伸ばし方を紹介しました。
こうしたスキルは一朝一夕で身につくものではなく、すぐに習得することは現実的ではありません。そのため、自分の現在の状況や目標に合わせて、継続的に努力することが重要です。優先順位をつけながら、小さな成功体験を積み重ねることで、着実なスキルアップが図れるでしょう。
エンジニアとしてのキャリアを充実させ、新たな可能性を開くために、今日から一つでも新しいスキルの習得に挑戦してみてはいかがでしょうか。技術の進化が速いIT業界において、多様なスキルを持つことは、あなたの大きな強みとなるはずです。