「高画質 = 最適」ではない?対戦ゲームにおける映像設定のポイント

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技術の発展によってゲームのグラフィックは日々進化しており、中には実写映画と区別がつかないほどリアルな映像が楽しめる作品も登場しています。

 

そんなゲームのグラフィック設定はプレイする環境に応じてさまざまに変更できる仕組みが一般的です。人によってスペックが様々なPCやモバイルはもちろん、均一な性能のコンシューマー機でも好みに合わせた設定でゲームが楽しめるようになりつつあります。

 

eスポーツとして楽しまれている対戦ゲームでもグラフィックの設定変更は可能ですが、こうしたジャンルでは必ずしもリアルさが重視されるとは限りません。今回は進化するゲームのグラフィックと、勝利を追求するための設定について見ていきましょう。

 

あえて低画質でプレイするメリットも

 

ゲームのプレイ体験を大きく変化させるグラフィック設定のひとつが「FPS」です。高FPSであるほど映像は滑らかになり激しい動きも見やすくなりますが、高い設定での出力にはそれだけ処理能力が必要となり、スペックが出し得る限界値に設定するとパフォーマンスが不安定になってしまうことも珍しくありません。

 

最高値がどれだけ高くても、FPSが安定せず乱高下する映像はかえって見づらく感じるため、常に安定した映像が出力されるように余裕を持たせた数値を上限とする設定が対戦ゲームに限らず最適とされています。

 

このように「安定した出力を求めて高画質な設定を使用しない」例は多く、ゲーム内に描画される建物や風景などのオブジェクトのクオリティを下げたり、オブジェクト同士の境目を滑らかにする「アンチエイリアス」と呼ばれる機能をオフにしたりと、ユーザーは快適な動作を追求してさまざまな設定項目を調整しています。

 

では、ハイスペックな環境さえ整っていれば最高の画質でのプレイが好まれるかといえば、実はそうとも言い切れません。なぜなら、低画質な設定にすることで相手よりも有利な映像になるケースもあるからです。

 

 

シューティングゲームでは的確な射撃のために相手の位置をしっかりと視認することが重要です。例えば、金網越しにいる相手を狙う場合、高画質設定では金網のグラフィックも高画質になり、その奥にいる相手が見づらかったりします。あえて低画質設定にすると、周りのオブジェクトと馴染みそれほど気にならなかったり、樹木の葉の密度が低くなり視界が広がって見えたりと、オブジェクトの見え方が変化してプレイしやすくなることがあるのです。

 

また、シューティングゲームの特徴的な設定としてはアスペクト比の変更も挙げられます。ゲームに限らず現在の画面サイズは縦横の長さが「16:9」という比率が一般的で、ゲームの映像もそれを映し出すモニターも「16:9」に準拠して作られています。しかし、中にはあえて「4:3」比率の映像を出力させる設定にしているプレイヤーも存在します。

 

昔のテレビでも使われていた「4:3」の映像は「16:9」に比べてやや正方形に近く、それをモニターにフルスクリーンで映し出そうとすると必然的に横に引っ張って伸ばしたような見え方になります。あくまで映像が伸びて見え方が変わっているだけなので敵の当たり判定が横に広くなるなどのメリットはなく、先ほどの例とは違って明確な長所はありません。それどころか画面の見える範囲が通常とは変わってしまう難しさもありますが、一部のプレイヤーは過去にプレイしていた「4:3」比率のゲーム画面の方が見やすいなどの理由でこの「引き伸ばし」と呼ばれる設定を使用しています。

 

△近年はワイド型のモニター向けに21:9の比率に対応している映像も

 

プロ選手でも引き伸ばし画面を使用している例もあり、画面の見やすさは慣れや個人の感覚に大きく左右される問題であることを裏付ける現象と言えるのではないでしょうか。

 

他にも、一人称視点のゲームではリアリティを追求してキャラクターの歩行時にカメラが揺れたり、急な視点移動や激しく動く対象はぼやけたように流れる「モーションブラー」と呼ばれる表現が取り入れらますが、リアルすぎる視点は画面酔いに繋がるため避けられがちです。

 

このようにゲームプレイの魅力を高めるために盛り込まれた設定が、あまり活用されないケースはいくつもあり、スキルを使って対戦するゲームでは相手の動きが見えづらいとエフェクトがオフにされる例などは作り手の苦労を思うと少し寂しいような気もしますが、リアルさや高精細さよりも操作のしやすさが優先される対戦ゲームならではの現象と言えるでしょう。

 

特に設定の自由度が高いPCでのゲームプレイにおいては初期設定が必ずしも自分の環境に最適な状態になっているとは限らないため、モニターなどの機器を含めて自分が「見やすい」「操作しやすい」と感じる設定を模索してみたり、設定を下げた方がメリットになる項目がないか調べてみたりというのも上達への近道になるかもしれません。

 

掲載日:202年10月30日

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